【パルスボッツ株式会社】ロボット同士を繋げる、コミュニケーションロボットで一番使われるサービスを
今年7月に設立されたパルスボッツ株式会社は、「ロボット同士を繋げる」をキーワードに、今冬世界初の「ヒト×ロボットSNS」のサービスをリリースする予定だ。会社の設立メンバーは、現ハイジ・インターフェイス株式会社 CXOの美馬直輝さん、同社CTOの蓮研児さん、そして株式会社LOHI代表取締役の釼持広樹さんの3名。ハイジ・インターフェイスとLOHIはそれぞれ、Pepperの一般発売開始前からロボアプリの開発に携わっている。
ロボットと関わっていく中で「ロボットと秘密を共有したい」という考えが芽生えたという美馬さん、「ロボットと記憶を共有していきたい」と考えるようになった釼持さん。二人の出会いから新たなロボットサービスの構想がスタートした。
今回はこのロボット業界以外からも注目を集めるパルスボッツ株式会社に、会社立ち上げの経緯や今後の展開を伺ってきました。
ロボット同士を繋げたい
ーー パルスボッツ設立の経緯を教えて頂けますか?
美馬:元々私がロボットに興味を持ち始めて、現在もCXOを務めているハイジ・インターフェイス株式会社の中でロボットの事業部を立ち上げたのですが、立ち上げ当初からロボット同士を繋げたいということを考えていました。その構想を資料にまとめたものを釼持くんに見せたことが会社設立のきっかけでしたね。釼持くんとは元々Pepperのイベントなどを通じて何度かやり取りをしたことがあったので、一度構想を話してみようと。すると釼持くんにもロボットのSNSをやりたいという思いがあることがわかったので、「それだったら一緒にやろう」と会社を立ち上げることになりました。
ーー「ロボット同士を繋げたい」と考えはじめたきっかけは何だったのでしょうか?
美馬:自分がコミュニケーションロボットを持つようになったとして、そのロボットと “どのようなコミュニケーションを取りたいか” ということを考えたときに、「秘密を共有したい」と思ったんですよね。
パソコンにも色々と個人情報は詰まっているじゃないですか。でもそこに秘密を共有しているという感覚はありません。ロボットも今後、所有者の個人情報を把握していくようになると思いますが、そこに僕は自分の情報をなんでも与えていくことで、その分自分のことを理解してくれるような存在になってもらいたいと思ったんです。結果その延長線上で、秘密を共有するというところまでいって欲しいな、と。
秘密を共有したい、故にロボット同士を繋げていく必要がある
美馬:ただ、誰かに秘密を共有するモチベーションを考えたときに、“秘密を打ち明けた相手が誰かと繋がっていないと、秘密を共有する感覚にはならないのではないか” と考えるようにもなりました。
例えばある友人に「これは内緒なんだけどね」と秘密を共有したとしても、その友人が私以外に誰ともコミュニケーションを取っていなかったとしたら、秘密を共有することに意味がないのかもしれません。もしかしたらその秘密を誰かに喋ってしまうかもしれないし、私が伝えたことと誰かから聞いた他のことを組み合わせて、自分に何かフィードバックをくれるかもしれないという感覚があるからこそ秘密を共有するようになると思うんですよね。
こんなことを考えていくうちに「ロボットと秘密を共有したい。故に、ロボット同士を繋げていく必要がある」という考えに至ったんです。
その後見かけたアンケートで「自分の家にロボットが来て、ロボットと喋ることになったとしたら、どのようなことを喋りたいですか?」という質問があったのですが、回答の割と上位に「秘密を打ち明けたい」ということが入っていたんですよね。そこの潜在的なモチベーションはあるんだということを知ることができましたし、ここがロボットが人の役に立つ存在になるための重要なポイントなのかもしれないと思うようになりました。
ロボットとの記憶の共有
ーー釼持さんはどういった点に共感されたんですか?
釼持:私もまさに「秘密の共有」に近い考えを持っていました。私自身もLOHIという会社でPepperのアプリを作る中で、どういうものが必要なのかを考えて一年間過ごしてきたわけなのですが、コミュニケーションロボットと一緒に家の中で暮らすということであれば「記憶の共有」が一番大事だと考えるようになりました。
過ごした時間の分だけ、思い出や癖をロボットが理解してくれて、覚えてくれている。この「記憶の共有」がロボットに対する愛情や愛しさみたいなものに繋がるんじゃないかな、と。
昔からの友達は、長い間一緒に過ごしているから気が合うという要素もありますが、もう取り戻せない小さい頃に一緒に遊んだ記憶を共有しているからこそ、大人になっても腐れ縁のような関係になっていくのではないかと思っています。そんな中で「秘密の共有」の構想を聞いたときに、根っこの部分が似たような考え方だなとすぐに共感しました。
ヒトとロボットが参加するSNS
ーーどのようなサービス展開を考えていますか?
釼持:ロボットを介することによる新しいコミュニケーションを作りたいです。ヒト to R to ヒトのような。人の紹介や仲介で人とのつながりやコミュニケーションが広がっていくように、ロボットが人と人を繋いだり、ロボットを挟んだ直接でないからこそのコミュニケーションを促進するようなサービスも目指していきたい。友達の近況ってけっこう別の友達から聞いたりするじゃないですか。そのような感じで、ロボットを介したコミュニケーションを作っていきたいと考えています。
美馬:具体的には「ヒトとロボットが参加するSNS」を作っていこうと考えています。
サービス提供の流れとしては、まず初めに、WEB上でロボットの所有者がSNSにオーナー登録をしてご自身が所有しているロボットの情報を登録し、ロボアプリからロボットをひも付けて認証させます。すると、Facebookのフレンドを探すと同じような機能で他のオーナーが登録中のロボットを探すことができ、ロボット同士を「友達」にしてあげることができるようになります。そして、友達同士になったロボットたちが、サービス上でコミュニケーションを取るようになっていきます。
所有者はロボット同士のコミュニケーションをスマホなどから確認ができるので、子供同士の会話を覗くかのように、ロボット同士の会話を見ることができるようになるというものです。
いくつか開発のフェーズがある中で、「秘密の共有」はもう一段階先の話として考えているので、最初はロボットを介して人のことを知るというところを具現化していこうという計画ですね。所有者がロボットとコミュニケーションをしたことがロボット同士の会話に影響しあったり、それがまた別のロボットと人とのコミュニケーションに影響しあったり、そういったことを仕組みとして提供していきたいと考えています。
ーーリリースはいつ頃を予定していますか?
美馬:リリースは今冬を予定していますが、リリース時にどこまで実体験として提供していけるかはまだわかりません。その前にテスト版をご提供することで、利用者の皆様からフィードバックを頂きたいと考えています。パルスボッツのWEBページから事前登録をしていただいた方々向けにテスト版をご提供させて頂きますので、気になった方はご登録頂けたら嬉しいです。
対応ロボットはリリース時はPepperだけですが、他のロボットも繋げていきたいと考えています。海外のロボット、「Jibo」や「Buddy」なども繋げていきたいですね。Pepper同士が繋がるだけでなく、様々なロボットがパルスボッツのサービスを介して繋がっていくようになります。
ーー法人向けサービスの提供の予定はありますか?
美馬:SNSは基本的に個人向けのサービスですが、ノウハウや技術を切り出して、法人向けに「Bizbots」というサービスを展開していきます。
釼持:法人向けのサービスでは、「記憶の共有」という部分の、お客様との個人情報のやり取りがセキュリティ的にとても重要で、難しい部分だな、と。ただ、お客様との関係性の構築という意味でいうと、非常に必要とされるものになると思っています。ロボットがお客様を覚えてくれていて、またそのロボットに会いに来たくなるような、そのお店に来たくなるようなサービスを提供していきたいです。
ーーマネタイズについてはどのように考えていますか?
美馬:まずは「シェアを取っていく」という点を第一優先にしようと考えているため、シェアを取るという上でマネタイズが有効に働くのであればマネタイズに取り組みますし、それがマイナスに働くのであれば優先順位を下げていくかもしれません。まずはサービスをリリースしてみて、お客様に評価されるようになって、その先にマネタイズを考えられるのかなというところもあります。とはいえ、サービスを提供していくための体力的な部分でマネタイズは当然重要なので、ノウハウを生かした受託開発などをおこなうなど、サービスとは切り離した形でのマネタイズを考えています。
ーー最後に、パルスボッツをどのようなサービスにしていきたいですか?
釼持:コミュニケーションロボットで一番使われるサービスにしたいですね。
美馬:そうですね。なので海外への展開も割と早い段階で検討していこうと考えています。
ーーありがとうございました!
▽ヒト×ロボットSNS「Palsbots」
http://palsbots.com
今回のインタビューの模様は音声でもお楽しみ頂けます。
▽ロボットキャスト第5回「パルスボッツインタビュー」
http://robot.hyge.co.jp/robotcast005
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望月 亮輔1988年生まれ、静岡県出身。元ロボスタ編集長。2014年12月、ロボスタの前身であるロボット情報WEBマガジン「ロボットドットインフォ」を立ち上げ、翌2015年4月ロボットドットインフォ株式会社として法人化。その後、ロボットスタートに事業を売却し、同社内にて新たなロボットメディアの立ち上げに加わる。