【CODE CONFERENCE TOKYO 2015】一家に一台普及するロボットとは?
11月10日(火)、渋谷ヒカリエにて「CODE CONFERENCE TOKYO 2015」が開催され、「ロボット関連企業が語る、ロボットとAIが変える未来」というテーマでトークセッションが行われました。
トークセッションには、「デジタルは人間を奪うのか」の著者でもあるグランドデザイン株式会社の小川社長と、様々なロボットビジネスを展開するロボットスタート株式会社の中橋社長が登壇し、集まったWEBマーケティング等をおこなうビジネスパーソンに向けて、ロボット業界の現状や未来を語りました。10年以上親交があるというお二人によるトークセッションは、40分間で話せるテーマではなかったと最後に振り返るほど凝縮された内容。今回はそのセッションの一部をレポートします。
トークセッション前半では、ロボット業界の現状を中橋社長自らが解説。同社も参加している政府主導の「ロボット革命イニシアティブ協議会」について触れました。
中橋
簡単に言うと、ロボット革命イニシアティブ協議会は、PCやインターネットなどの領域で日本が世界をリードできなかった反省も踏まえて、ロボットという領域では世界に負けてはいけないよね、という趣旨で設立されました。インターネットでも様々な団体などがありますが、この協議会の特徴は何と言っても政府が主導しているということです。政府がロボット業界をプッシュしているというのは一つ心強いですよね。
小川
ちょうど10年くらい前、まだまだフューチャーフォンの時代でこれからスマートフォンが来そうだというときに、モバイルソリューションの団体では「スマートフォンはモバイルじゃない」と言っていたのが記憶に残っています。「スマホはPCだからモバイル業界のレギュレーションには入らない」と。つまり何が言いたいかというと、政府が主導したからといって正しく育っていくわけではないということです。参加している企業側がきちんとイニシアチブを持ってもらいたいなと思いますね。
一家に一台普及するロボットとは
中橋
この一年間ほどでロボットが増えてきているという現状がありますが、大事なのは増えているということではなくて、最近のロボットのほとんどがネットに繋がっていて常時繋がるようになっているということです。それが今大きな流れになっています。先日ロボットドットインフォさんと共同で、業界のカオスマップや2020年の予測普及率のデータを出しましたが、私たちは2020年には5%(約265万世帯)の世帯普及を見込んでいて、大手の媒体などにも取り上げられるなど、信頼性のあるデータとして扱って頂いています。
小川
「ロボットは普及するのか」ということ自体、僕は議論する必要すらないと考えています。ロボットは普及するので、その上でどうしたら普及速度が早まるのか、普及エリアはどう広まるのかを議論する必要がありますよね。
現状Pepperを購入しているのは、アーリーアダプターの中でもアーリーな方々だという認識です。そんな中で一家に一台普及すると考えると、リテラシーの低い人たちにも買う必要があると思ってもらわないといけません。一家に一台普及するのはどのようなロボットだと考えていますか?
中橋
価格は10万円以内の低価格帯のロボットであることが必要だと思います。100万円以上のロボットが家庭に普及していくというのは考えづらいです。家電量販店や携帯ショップで気軽に買って持ち帰られるような、月額料金がスマホと変わらないくらいで手に入れられるような価格になることが非常に重要ではないかと思います。
また、すべての人が使えるという意味ではSIMが使えることが重要なんじゃないか、と。ロボットはご高齢の方も購入されますが、Wi-Fiの接続方法がわからないという方もたくさんいます。なのでSIMカードを挿せば使えるということは大事です。
小川
機能としてはどのような機能がキラーになると思いますか?
中橋
極論を言えば、ロボットには、カメラとマイクとスピーカーがあってネットに繋がれば良いわけです。なので、人工知能の進化が最も重要で、話していて面白いと思わせることが大事ですよね。
ロボット×マーケティングのポテンシャル
中橋
最近ではPepperが展示会などのイベントで集客をしたりしているんです。
小川
受付にもPepperがいたりしますよね。実際にロボットによる効果はあるんでしょうか?
中橋
名刺がたくさん集まるという効果はよく聞いたりします。今のところ綺麗なお姉さんに立ってもらうよりかは効果があるみたいです。
小川
それもロボットが当たり前の世の中になったら効果がなくなりますよね。あと数年のうちは目新しい存在として意味がありそうです。
中橋
今日のイベントがマーケティング系のイベントということで、「ロボット×マーケティング」のお話をすると、ロボットが家庭に普及したら広告メディアになるのではないかということで、弊社でロボット広告のサービスを作りました。
テレビがモバイルに置き換わっていったように、今度はモバイルがロボットに置き換わっていくのではないかということです。一家に一台ロボットが普及したときに、それがコミュニケーションの媒体になるので、適切な形のアドを提供していくことができると考えています。
小川
以前からサービスのお話を聞いていましたが、人工知能という文脈の中で、高度なマーケティングができるということですよね。
中橋
そうですね。ロボットの前を通った人たちの性別や感情などを取得することができます。元々の機能としてカメラから情報を取得できるので、これまでオンラインで追っていたデータをオフラインで取得することができるようになります。
小川
店頭には人がいっぱい来ていますが、買わずに帰っていってしまう人たちのデータを取得できるようになるということですね。そのあたり、ロボットが革命的に変わる可能性はあるなと感じました。パーミッションについてはどうなんでしょうか?
中橋
ロボットは個人情報を取得できるわけではないということと、その際にはロボットが元々取得しているものを使うので、特に問題はありません。
次世代デジタルビジネスはロボット&AIが牽引するのか
中橋
今後のビジネスはロボットやAIが牽引していくと思いますか?
小川
それもしていくかしていかないかを議論する必要はなくて、リプレイスは確実にされていきます。少なくとも2045年くらいには今の仕事の半分くらいはリプレイスされていて、何かに変わってしまう可能性は高いです。
そういう話をしていると学生さんから「では、どんな仕事に就けば良いですか?」という質問が来るんですが、そういうときにはロボットやAI産業に入っていくのが良いんじゃないかと提案しています。今のタイミングではまだ大手企業のR&D部門くらいしかないってなってしまうのですが、そうではなくて営業職であってもロボットやAIといった業界に入っていくことが良いんじゃないかと思っています。それか、もういっそのこと起業しちゃうとか。
中橋
ロボット、AIベンチャーがたくさんできるのは良いですね。
小川
お金がかかるので大企業は必要ですが、いろんなロボットやAIのスタートアップが出てくると盛り上がりますよね。最後に、参加された方々にこれだけは持ち帰ったほうが良いということはありますか?
中橋
まず弊社のサイトでロボットに関するニュースを提供しているのでチェックしてもらいたいです。(笑) そして、小川さんの本の中で今回のセッションの内容がより深く書かれていますので、是非読んでみてください。
今回トークセッションに集まったのはロボットに普段接する機会の少ない方々でしたが、ロボットに興味をもつ導入として非常に面白い内容のトークセッションでした。
ロボットスタートさんでは、トークセッションで触れた「ロボットスタート広告」以外にも、ロボットを使った顧客分析をおこなう「ロボットスタートアナリティクス」や、ロボットのコードライブラリを共有する「ロボットライブラリ」などロボットアプリ開発者のための支援ツールが幅広く提供されています。気になる方はホームページをチェックしてみてください。
▽ ロボットスタート株式会社
http://robotstart.co.jp/index.html
ABOUT THE AUTHOR /
望月 亮輔1988年生まれ、静岡県出身。元ロボスタ編集長。2014年12月、ロボスタの前身であるロボット情報WEBマガジン「ロボットドットインフォ」を立ち上げ、翌2015年4月ロボットドットインフォ株式会社として法人化。その後、ロボットスタートに事業を売却し、同社内にて新たなロボットメディアの立ち上げに加わる。