ロボットアプリのオフショア開発成功事例を公開【フィリピン・セブ島】
株式会社ジーアングルによるPepperの事例共有セミナー「ロボットアプリ開発 海外制作者の実力とオフショア成功の秘訣」が、11月26日(木)東京・恵比寿にて開催されました。株式会社ジーアングルはフィリピンでのロボットアプリのオフショア開発を日本で初めておこなっている会社です。
日本以外でロボットアプリを開発するメリット・デメリット、初期費用やスケジュールなどが余すことなく公開された今回のセミナー。オフショア開発の事例共有セミナーは数多くあれど、ロボットアプリのオフショア開発の事例共有はなかなかない機会です。それでは内容をご紹介していきます。
ジーアングルはPepperアプリの受託開発を今年からおこなっており、そのほとんどの開発をフィリピン・セブ島にておこなっています。今回のセミナーでは、「なぜセブ島を選んだのか」「どのようなスキームで開発体制を構築したのか」「現地の開発スタッフの技術力は?」という3つの視点で、同社執行役員の森さんからお話いただきました。
英語力があり、比較的治安の良い「セブ島」
こちらの画像は非製造業の都市別平均賃金を表したグラフです。言うまでもなく東南アジアの国々は日本に比べて人件費が安く済みます。フィリピンはベトナムやインドネシアと同程度の平均賃金。日本の5分の1程度です。そしてオフショア開発で注目される東南アジア諸国の中でも、最も日本からの移動交通費が安く済むのも特徴の一つ。現地にスタッフを派遣する際にも、4時間半〜5時間半で行くことができ、交通費と時間の両方を節約することができます。
森さんによれば「エンジニアがスキルを高めていく上で英語が理解できるかどうかはかなり重要」とのこと。インターネットで使用されている言語の中でもっとも使われている言語が英語であり、Pepperの開発言語である「Python」のモジュールの使い方を日本語で検索すると約13万件しか検索結果が表示されないのに対して、英語で検索をすると約2,500万件もの検索結果が表示されます。開発者がわからないことがあった際に英語で検索ができるか否かが問題解決のスピードに影響してくるということで、英語が公用語として幅広く活用されているフィリピンをオフショア開発先として選定したようです。
森さんは、フィリピンという国の中でもセブ島を選んだ理由として「治安の良さ」をポイントに挙げました。NUMBEOが提供している各都市の安全指数のデータによれば、セブ島の安全指数は50.12ということで、ホーチミン(安全指数:42.09)やマニラ(安全指数:32.13)といった都市に比べても治安が良く、ニューヨーク(安全指数:49.04)と同程度以上の治安であることがわかります。
以上の「英語力」「治安」という2点により、フィリピン・セブ島に開発部隊を置くことを決定しました。
開発体制を構築するまで
続けて、開発体制をセブ島で作り上げるまでにおこなったことについての説明です。会社の設立準備をはじめてから実際に営業を始めるまでにどのようなことを行ったかという点を詳細にまとめてくださっています。
昨年の12月に事務所を決定し現地での会社登記を並行しておこない始め、会社登記にかかった期間は約3ヶ月。その後採用を開始し、6月から営業を開始しています。営業開始までにかかった期間は約半年。人材を採用してから、長い方で2ヶ月間はPepperなしで開発をおこなっていたそうです。また、会社登記・不動産の選定・社会保険の届け出・求人広告出稿などはすべてコンサルタントにお願いをしたとのこと。
これらを含め、営業を開始するまでにかかったコストも詳細に公開してくださいました。初期コストは約400万円程度、ランニングコストは毎月70万円〜80万円程。エンジニア6名分の給与で36万円ということで、日本だと1名採用できるかどうかという人件費です。
フィリピンのエンジニアのスキルは?
採用したエンジニア6名は、応募者149名の中から選りすぐった6名。10以上のプログラミング言語を操り動画編集からイラストまで書けるという22歳の優秀なエンジニアや、フィリピンで最高峰の国立大学を卒業し面接時のテストでも満点近い得点を叩き出した21歳のエンジニアなど、優秀なエンジニアを日本では考えられない程の給与で採用することができたそうです。
フィリピンのエンジニアの特徴として「面白いことをやりたい」という人が多いらしく、ロボットのアプリケーションという領域に興味を持った方が多数集まったそう。「最初の数ヶ月は研修期間に充てようと想定していましたが、自発的に勉強をしてくれて、開発力もあったためすぐに実際の開発をおこなってもらえた」と森さん。「Pepperを導入してから数日間で質の高いアプリを作ってくれた」とエピソードを明かしました。
このような開発会社向けのセミナーをおこなった背景には、もっと多くのロボットアプリの会社がフィリピンのセブ島に来て欲しいという思いがあるそうで、「ロボットアプリ界隈を盛り上げる時期だと思っているし、フィリピンでももっと盛り上げていきたい」と語りました。
気になる「Pepperは海外に持っていけるのか」という質問に対しては「海外で故障をするとサポートが受けられなくなるが、持っていくこと自体は可能」と答え、「いくつかの書類が必要なため手続きは難航したが、法律上も問題なく輸送することができる。ただ、無事に到着する可能性は100%ではないと、輸送業者にも言われた」と、輸送がかなり大変だったことを明かしました。その後のサポートは受けることができないので、現地に送った2台のPepperはかなり大事に扱っているようで、負荷がかかる動きを作る際には国内のPepperでやっているとのことです。
最後に森さんは「もう一度最初からオフショア先を探すとしてもセブ島を選ぶと思います。海外でのロボットアプリ開発にチャレンジしたいという方はセブ島がおすすめです」と話し、イベントを締めくくりました。
今後海外でロボットアプリのオフショア開発をおこなう際には、是非ジーアングルさんの事例を参考にしてみてはいかがでしょうか。