Pepperの第2回目のアプリコンテストとなる「Pepper App Challenge 2015 winter」と、第1回目のPepperのビジネス活用コンテストである「Pepper Innovation Challenge 2015」の決勝大会が11月28日(土)、東京・ベルサール渋谷ガーデンにて開催されました。
「Pepper App Challenge 2015 winter」「Pepper Innovation Challenge 2015」には応募期間の10月31日までに合わせて263のアプリが応募され、動画と資料による審査を勝ち進んだ各10本、計20本が決勝大会へと駒を進めました。決勝大会はさらにデモ審査・プレゼン審査という2段階に分かれており、デモ審査を突破した各5本のアプリがプレゼン審査へと進みます。それぞれどのようなアプリが最優秀賞に輝いたのでしょうか。それでは各賞の受賞アプリを見ていきましょう。
目次
Pepper App Challenge 2015 winter
ー 最優秀賞 & ベスト介護福祉賞
ー ベストエンターテインメント賞
ー ベストライフスタイル賞
ー ベストインタラクション賞
Pepper Innovation Challenge 2015
ー 最優秀賞
ー ベスト顧客体験賞
ー ベストヘルスケアビジネス賞
ー ベストテクノロジー賞
ー ベスト接客ビジネス賞
Pepper App Challenge 2015 winter
一般向けのアプリコンテストである「Pepper App Challenge 2015 winter」の審査基準は「Pepperらしさ」「エンドユーザー満足」「継続性」「インタラクティブ性」の4つ。審査員は、テリー伊藤さん・C Channel株式会社代表取締役の森川亮さん・立教大学ミスコンテスト2014ファイナル進出の塩田結以さん・ソフトバンクロボティクス株式会社取締役の蓮実一隆さんという豪華な顔ぶれです。それでは各賞を受賞したアプリをご紹介していきます。
最優秀賞&ベスト介護福祉賞「HUG」
一般向けのアプリコンテストである「Pepper App Challenge 2015 winter」の最優秀賞に輝いたのは、「HUG-バーチャルリアリティコミュニケーション-」。
「HUG」はヘッドマウントディスプレイと連動し、Pepperを遠隔操作することができるテレイグジスタンスアプリです。遠隔操作者はヘッドマウントディスプレイを通じてPepperが見ている光景を見ることができ、またPepperがキネクトで取得した遠隔操作者の体の動きを再現してくれます。遠くにいる人があたかもPepperに乗り移って、Pepperのいる場所の雰囲気を体験することができるというアプリです。
HUGプロジェクトのリーダーを務めたのは高木紀和さん。その高木さんの祖母の「大切な孫の結婚式にどうしても参加したい」という想いがHUGを生み出しました。実際に高木さんの結婚式で使用されたHUGは、様々なメディアに取り上げられるなど大きな反響を呼び、そこで高木さんは祖母と同じような想いを持つ人が世の中にたくさんいることを知ります。
「2020年には身体障害を持つ人が400万人以上になると言われており、そのうち300万人以上が高齢者です。日本は世界に先駆けて高齢者問題を解決しないといけない。僕たちはHUGという新しいコミュニケーションを通じて、世界を変えていきたい」と訴えた高木さんのプレゼンに、テリー伊藤さんも「お互いに離れていても感情が伝わるというアイディアが素晴らしい。私は支持します」と絶賛。最優秀賞を読み上げたソフトバンクロボティクス取締役の蓮見一隆さんは「実際には通信環境の問題やキネクトの問題など、乗り越えないといけない問題があります。ただそれらを是非乗り越えて頂きたいです。未来にいろんな形で使えるものだと思います」と最優秀賞に選んだ理由を説明しました。高木さんは「とても優秀なチームで開発をすることができ、チームの皆に感謝しています。世界を変えていくためには皆様に応援して頂けるものを作ることが必要です」と語りました。
HUGプロジェクトでは、高木さんが代表取締役を務めるダックリングズ株式会社が企画等をおこない、慶応メディアデザインが開発を、CREATIVE ORCAがPepperの動き等のクリエイティブ領域を担当している。
ベストエンターテインメント賞「かたりべ」
スマホから簡単に紙芝居を作ることができるロボアプリ「かたりべ」がベストエンターテインメント賞に選ばれました。かたりべはアップフロンティア株式会社内の最先端の技術やデバイスを研究するチーム「超技研」によって生み出されたロボアプリ。
家庭で長く楽しめる実用的なアプリを目指し、小さい子供をもつ親が子供の紙芝居を作ることをメインの利用シーンと想定し作られました。アプリ内に初めから導入されている画像・振付にテキストを組み合わせることで紙芝居を作ることができ、Pepperに語らせることができます。
ベストエンターテインメント賞を選出したテリー伊藤さんは「アプリに頼るのではなくてPepperの所有者も努力しなくてはいけない点、家族で一緒に絵本を作ることも物語を作ることもできる点、そして感性を養うことができるという点が良かった。今後の可能性が非常にあると思うので期待しています。是非今度会社にも遊びに行かせてください」とかたりべの選出理由を語りました。
ベストライフスタイル賞「ペッパーソナルトレーナー」
ペッパーソナルトレーナーは一人では継続できない日々のトレーニングをサポートしてくれるPepperアプリ。Pepperが所有者の帰宅時に1日の運動量を取得し、運動量が目標よりも少なければ運動を提案します。必要運動量が多い場合には室外の運動を提案し、少ない場合には室内の運動を提案。運動をなまけているときには運動をするまで提案を続けるため、怠けがちの人でも継続して運動に励むことができます。
運動量の取得は外部デバイスである心拍数計測リストバンド「Fitbit」からおこなう仕様。
ベストライフスタイル賞を選出した森川亮さんは「私自身ヘルスケア事業を営む会社の顧問をしていて、ヘルスケアのビジネスに興味がありますが、ペッパーソナルトレーナーはビジネスとしてもスケールする可能性を感じました」と選出理由を語りました。
ペッパーソナルトレーナーを作ったチーム「BOB」は、アトリエ秋葉原のハッカソンで出会って作ったチーム。「ユーザーがどんな表現をしたらもっと使ってくれるかなと考えていたので受賞はとても嬉しい。アトリエ秋葉原のスタッフの皆様や会社の方にも応援してもらえたので受賞することができました。本当にありがとうございました」と感想を述べました。
ベストインタラクション賞「Pepperがホームステイにやってきた」
Pepperアプリの受託開発などを手掛ける株式会社ジーアングルが開発した「Pepperがホームステイにやってきた【仮想英語環境構築アプリ】」がベストインタラクション賞を受賞しました。このアプリはPepperが英語を喋ってくれるアプリ。
英語学習を断念してしまう理由として最も多くの人が挙げる「英語を使わなければいけない状況にないから」という理由に着目し、Pepperがユーザーの都合もお構いなしに話しかけてくるものを開発。心の準備ができていない状況で日々話しかけられることで英語力を向上させることを目的としています。
ベストインタラクション賞を選出した塩田結以さんは「ペッパーくんならわからない英語を何度聞き返しても同じテンションで教えてくれるんだろうなと思い、それがロボットならではのアプリだと感じました」と選出理由を語りました。
プレゼンに登壇したジーアングル執行役員の森さんは受賞について「先ほどデモブースで” 早く使いたい “という開発者として何より嬉しいお言葉を頂きました。今会場にはいないですが、海外の開発スタッフにもありがとうと伝えたいです」と語りました。
プレゼン審査へと進んだアプリの半数以上が外部デバイスと連携するものでした。IoTのハブとしてのPepperの活用法が今後ますます注目されていくかもしれません。受賞された皆様、本当におめでとうございました。
Pepper Innovation Challenge 2015
続いてPepperのビジネスシーンでの活用事例を競う「Pepper Innovation Challenge 2015」です。こちらの審査基準は「課題解決」「顧客満足」「テクノロジー」「革新性」の4つ。審査員はテレビ番組のコメンテーターとしても活躍する経営コンサルタントのショーンKさん、IBMでコグニティブ・コンピューティング×ロボットの研究をおこなう清水周一さん、講演・執筆活動など活躍の場を広げている産婦人科医の富坂美織さん、そしてソフトバンクロボティクス事業推進本部長の吉田健一さんの4名です。各賞に選ばれたアプリはどのようなものでしょうか。
最優秀賞「いきいき脳体操」
Pepper Innovation Challengeの最優秀賞に見事輝いたのは、Team Smart Brainが開発した「いきいき脳体操」でした。「川島隆太教授のいきいき脳体操」をテレビ放映する仙台放送と、Pepperアプリ開発などを手掛けるフューブライト・コミュニケーションズが共同開発したアプリで、Pepperと一緒に遊んだり様々なクイズを解いたりする中で認知症の予防を助ける脳トレアプリとして開発されました。
「川島隆太教授のいきいき脳体操」はすでにその番組を見るだけで脳が活性化することが実証されており、今回Pepperアプリとしてさらにインタラクティブなものへと作り上げました。最優秀賞を発表したソフトバンクロボティクスの吉田さんは「非常に激戦で10社から5社を選ぶのも難しい状況でした。その中でTeam Smart Brainの皆さんは、課題解決・認知症の予防ができるかをとことんまで突き詰め、トライアルをやりながらどんどん良いものに仕上げていってくれました。引き続きイノベーションをおこしていきそうだなと思い選ばせて頂きました」と選出理由を語りました。
「いきいき脳体操」の開発当初はPepperのタブレットに問題を表示する仕様でしたが、実証実験をおこなう中で多数の人が同時に使いたいという要望があり、大画面のテレビに映して大人数で遊べるアプリに変更したなど、同チームの実証実験を繰り返しながらアップデートをおこなう姿勢や実績が特に評価されたようです。
Team Smart Brainのメンバーのフューブライト・コミュニケーションズ株式会社は前回のPepper App Challengeで最優秀賞に輝いたチーム・ディメンティアの一員ということで、2大会連続で最優秀賞を受賞。「非常に嬉しいです。認知症で困っている方に還元できる形でビジネスをしていくことが必要だと思います」と受賞コメントを語りました。
ベスト顧客体験賞「ペパ電 for Biz」
そして、ベスト顧客体験賞を獲得したのもフューブライト・コミュニケーションズ株式会社が開発した「ペパ電 for Biz」。こちらのアプリは受付のPepperと社内の内線電話を繋げたもので、受付から内線電話への呼び出しをPepperを通じてスムーズにおこなうことができます。
このアプリの中で特に評価が高かったのは搭載されている「おせっかい機能」。おせっかい機能は受付時に人が言いにくいことを伝えてくれるという機能で、たとえば「今月の吉村の受注目標は10件だそうですよ。話を聞いてあげてくださいね」など、本人が言えないことをダイレクトに伝えてくれます。
審査員の富坂さんは「タブレットではだめなのかというところを判断基準にしていたが、おせっかい機能はPepperの良さが出ていて素晴らしいと思いました」と感想を述べるなど、本音や言い難いことをペッパーが言ってくれるという点が評価されたようです。
ベストヘルスケアビジネス賞「介護施設向けJOYSOUNDペッパーアプリ」
ベストヘルスケアビジネス賞に選ばれた「介護施設向けJOYSOUNDペッパーアプリ」は、その名の通り介護施設向けに開発されたアプリで、JOYSOUNDが提供している高齢者向け音楽療養コンテンツ「健康王国」が組み込まれています。
健康王国には歌う・遊ぶ・観る・体を動かすなど500以上の豊富なコンテンツがあります。介護予防が推進されているにも関わらず介護人材とコンテンツが不足している現状を解決するために今回のアプリが開発されました。すでに介護施設での導入実験もされており、座ったまま楽しそうに体を動かす高齢者の姿がプレゼン画面に大きく映し出されました。
ベストヘルスケアビジネス賞を選出した富坂さんは「介護施設で高齢者の方々が車椅子に座ったままの状態で体操をされていたのが印象的でした。可愛いロボットが一緒に体操する姿はこれまで見たことがなかったので革新的だと感じました」と選出理由を語りました。
ベストテクノロジー賞「Vipper」
ベストテクノロジー賞に選出されたのはチームエビリーが開発したVipperでした。Vipperはこれまでのデジタルサイネージの「誰に対しても同じ案内をする」「店員のスキルに依存する」「お客様が本音を伝えづらい」といった課題を解決するために開発されたPepperアプリで、同社が運営する動画配信サービス「millvi」が組み込まれています。
Pepperがもつ性別や感情を読み取る機能を活用し、動画を見ているお客様に一番合う内容の広告動画を配信することができるシステムです。
選出したIBMの清水さんは「お客様毎に最適な次のシーンを出すというところが関心しました。新しいテクノロジーを使って、お客様の満足度を忘れることなく、頑張って頂きたいと思いました」と選考理由を語りました。
ベスト接客ビジネス賞「待ちの不満を解消する受付管理アプリAirウェイト」
ベスト接客ビジネス賞を受賞したのは、店舗の受付の待ち時間を解消するために開発された受付管理アプリ「Airウェイト」です。Airウェイトはスマホやタブレット端末で操作するために設計されたアプリですが、今回それをPepperに応用。
呼び出し機能などの本来の機能に加えて、Pepperが待ち時間を別のアプリを起動して楽しませくれるという機能もついています。また、今回最も評価されたポイントは、店舗ごとの待ち時間を管理しより良いオペレーションのエッセンスを他の店舗に移すことができるという点。
バックヤード業務も管理できることについて、選出をおこなったショーンKさんは「個人的にはそこが一番好きです。ペッパーを起点にしたデータの可能性に期待をしたいです」とコメントを残しました。
Pepper Innovation Challenge 2015では、フューラブライト・コミュニケーションズが2作品での受賞。また2大会連続の最優秀賞受賞ということで、素晴らしい結果を残されています。ビジネスでのPepper活用を広めていきながら、ロボットが活躍する領域を広げていって頂きたいです。
大いに盛り上がった今回のPepper App Challenge & Innovation Challenge。また新たなPepper活用の可能性を様々な角度から見せて頂きました。プレゼン審査へと進むことができなかったアプリも含め、ご紹介できなかった素晴らしいロボアプリがたくさんありましたので、また改めてご紹介していきたいと思います。次回第3回目のApp Challengeが今から楽しみです。
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望月 亮輔1988年生まれ、静岡県出身。元ロボスタ編集長。2014年12月、ロボスタの前身であるロボット情報WEBマガジン「ロボットドットインフォ」を立ち上げ、翌2015年4月ロボットドットインフォ株式会社として法人化。その後、ロボットスタートに事業を売却し、同社内にて新たなロボットメディアの立ち上げに加わる。