「PEPPERのビジネス利活用最新動向とその展望」に行ってきました。その2

10月30日(金)、明治大学リバティータワーで開催された「Pepperのビジネス利活用最新動向とその展望」に行ってきました。

 第3回研究会「Pepperのビジネス利活用最新動向とその展望」 | BBAブロードバンド推進協議会
 http://bba.or.jp/ja/?p=1575

「その1」からの続きです。


■「Pepperを活用した失語症の患者様向け訓練アプリ」株式会社RoboCure 代表取締役 森本暁彦 氏

ロボキュア社の自己紹介です。「Rcbo+Cure」を組み合わせた造語で、医療用ロボットアプリの開発で日本の未来を明るく「人に寄り添うロボット、人よりも優しいロボットを」。

ロボキュア社では、失語症の改善訓練にPepperを活用しています。

失語症についてです。脳疾患・傷害の後遺症で言語コミュニケーションが不自由になる症状です。外見からは分かりにくいですが、話せない・単語を理解できない・違う言葉を発してしまうなど、様々な症状が知られています。

これまでの取り組みです。2014年11月に創業、2回の病院で試験導入行い、学会にも出展しています。

アプリ概要です。失語症の治療のためにの訓練の一つ「呼称訓練」をPepperde実現しました。

Pepperのタブレットに写真を表示させ、何であるかを発声するという訓練です。他にも、やる気促進機能・絵カード選択機能・日常会話機能も実装しています。

Pepperであることの意味です。

まずは「ビジュアルの良さ、かわいさ」です。Pepperは見た目にキュートなので訓練をやろうというモチベーションにつながります。

次に「人型で話す・動くことの意味」です。患者さんにとっては一人じゃないということは非常に大事です。

最後に「いつまでも訓練できるロボットならではの優しさ」です。人間が訓練の相手をするのに比べ、Pepperならば同じやり取りを何回繰り返すこともできますし、患者の方も相手に気兼ねせず何回も繰り返すことができます。

苦労した点です。

まず「失語症の問題」について。

言語訓練特有の配慮があります。健常者では想定できない課題が色々とあり、現在もなお何回もバージョンアップを重ねているそうです。

次に「医療機関の問題」について。

そもそもPepperは医療器具なの?玩具なの?と言ったものや、個人情報はどうなるのか?そもそもPepperを病院に置いて安全なのか?という問題があります。

ロボキュア社では根気よく病院とやり取りを行い、これらの問題を一つ一つクリアーしていきました。

ロボキュア社取り組みの全体像です。

千葉大学とは、研究ノウハウの共有と共同研究推進を行っています。君津中央病院とは、テスト導入と成果の共有を行っています。

今後の取り組みは、実証実験を継続して続け、さらなる改善と機能を追加していきます。

とにかく、やり続けます!

以上です。


■「感情ロボットPepperの音声感情認識技術の仕組みに迫る」東京大学大学院医学系研究科音声病態分析学講座 特任講師/博士(工学) 光吉俊二 氏

株式会社AGIとPST株式会社の自己紹介からです。

株式会社AGIは「声から感情が見える技術」を構築しています。PST株式会社は「声から病気が見える技術」と「声で病気を治す技術」を構築しています。これらを活用して、感情のメカニズムからのPepperの自我(心・創発)機能を担当してます。

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導入実績です。

大手企業での会話サービスでの導入、コミュニケーション支援端末への導入実績があります。

光吉さんから会場に「感情研究を定量工学研究にするためには?」と質問です。その答えは「感情の工業規格化が要求されます」。

感情・心理規格化のガイドラインです。以下を行って工業規格化していきます。

 感情はいくつあるのか?(感情辞書)
 どういう内容属性?(感情項目)
 生理とどう関係あるの?「感情って何グラム?」(感情マトリックス)
 どういう構造しているの?(感情メカニズム)

感情表現の調査です。

辞書や心理学書などから感情単語を4,500語ピックアップ→4,500語を英訳し、223語にグルーピング→223語を4つの色のグループに分別しました。「緑色の感情」「赤色の感情」「黄色の感情」「青色の感情」です。

そこから、感情モデルの推定を行いました。

そして、感情の色彩化(単純化)も行いました。感情モデルの中心部を色で表現することで、言語依存が無くなり感覚で把握できます。なので、国際規格化されていきました。

健常者は常に「緑」の位置を保とうとします。しかし「うつ病診断を受けた被験者」では長時間「青」に偏り、やがて感情の消失を伴う傾向がありました。

感情の規格化です。

英語には「空気を読む」や「せつない」に対応する単語はありません。日本語では心境を表現する単語は4,500語ありましたが、英語では223語程度しかありませんので、感情地図を英訳することは極めて困難でした。そこで、各色の感情を数式で表現しました。

2つ目のターニングポイントです。

「感情の工業規格に準じて動くものをつくるには?」に対し、「感情を色で可視化、情動の強さを量で出力する手段(構造体)を講じる」というものです。

情動の期限と、情動と神経メカニズムです。

そして、人体原理の工学発想です。建前は、随意的(意図的)に言語を生成するから嘘がつけます。一方、本音は、不随意(自然)に情動が出ます。ここから「声は心のプリンタ」と言えます。

堅牢な声帯の基本周波数検知です。

人の感情発話の評価2,800人です。

男性年齢を平均化した100名の評価社を使い、音声を無意識に評価できる専用ツールでランダムに組み合わされた音声セットを聞き、発話者の感情を判定しました。この作業には11年間かかったそうです。

2800名の発話を100名の主観評価つきで判定していきました。次に固定化された200以上のパラメータで分析をし、全員共通の主観分離規則性を見つけ出していきます。そして、人の主観を判定ロジックルールに置き換えていきます。

ST/PSTの構造と出力です。

情動と呼吸は密接な関係があるとされるため、発話単位(ブレスの間)で感情を分析します。

こういったことを行い、Pepper自体の感情のインストールを行っていきました。

詳細な資料は光吉さんのサイトにアップされているので、興味ある方は是非ご覧ください。

「音声脳神経分析技術の応用」 心を定量測定する技術
http://www.agi-web.co.jp/docs/Univ-Tokyo.pdf

今回の講演会は以上です。

どのお話も勉強になるものばかりで、興味深かったです。講師の皆様、お疲れ様でした!

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北構 武憲

本業はコミュニケーションロボットやVUI(Voice User Interface)デバイスに関するコンサルティング。主にハッカソン・アイデアソンやロボットが導入された現場への取材を行います。コミュニケーションロボットやVUIデバイスなどがどのように社会に浸透していくかに注目しています。

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