「Pepper App Challange/ Innovation Challange 決勝進出作品発表展示会 その2」に行ってきました(後編)

1月8日(金)、アトリエ秋葉原で開催された「「Pepper App Challange/ Innovation Challange 決勝進出作品発表展示会」に行ってきました。

イベントページでの紹介はこちらです。

11/28 に開催されたPepper ロボアプリのコンテスト Pepper App Challenge 2015 winter /Pepper innovation Challangeでは、多くの作品にご応募いただき、計20作品の決勝進出作品が発表されました。

このイベントではそれらの優れた作品の開発事例をもっと聞きたいという参加者のご要望にお応えするため、コンテストの決勝進出作品を制作されたデベロッパーの皆様を講師として作品説明を行うものです。


(こちらは後編の記事となります。前編はこちらです。)



■いきいき脳体操/Team Smart Brain





「いきいき脳体操」の解説していただけるのは、Team Smart Brain兼フューブライト・コミュニケーションズ株式会社 近藤幸一さんです。



「いきいき脳体操」は、2004年から仙台放送で放送されているテレビ番組。脳トレブームの立役者である川島隆太教授監修の教養番組です。



川島隆太教授は脳科学の第一人者で、人間が何かをしている時に脳のどの部分が働くかを調べる脳機能イメージングを主軸に。脳活動の研究成果を新産業の創出につなげようとしています。



テレビ番組、いきいき脳体操を見ている時の脳の様子です。実際に番組を見ていると脳が活性化されることが実証されています。



なので、世界で「はじめて」の脳を活性化させるテレビ番組と言えます。



この番組から、「ネットでいきいき脳体操」が誕生しました。これは、介護施設向けにいつでもいきいき脳体操ができるタブレットPC向けのアプリです。





介護施設における4つの課題があります。

 ・介護支援者による捜査のサポートが不可欠
 ・毎日ゲームをするだけでは飽きてしまい、継続できない
 ・タブレットの捜査が必要なため、大勢で楽しむことができない
 ・利用者に応じた難易度での提供ができていない



Pepperでの「いきいき脳体操」を実際に介護施設で行った時の映像です。





Pepperによる課題解決、その1です。

介護支援者による捜査のサポートが不可欠という課題に対し、Pepperが代わりにサポートをします。

Pepperがゲームのルールを説明し、次にすべき操作も説明してくれます。もちろん、声による操作にも対応しています。



Pepperによる課題解決、その2です。

毎日ゲームをするだけでは飽きてしまい、継続できないという課題に対し、Pepperが楽しく演出をします。

Pepperがいることで、お孫さんと一緒という感覚になります。そして、回答時のリアクションや名前を呼んで応援することで、またやりたくなる演出を行います。

Pepperが名前を呼ぶ部分は、顔認識をして呼んでいるわけではなく、事前に参加者の名前を聞いて、設定をしてランダムで呼ぶようにしています。さらには、いつも前のほうに座る人の名前を介護士さんに聞いておいて設定を行うといった工夫もしています。



Pepperによる課題解決、その3です。

タブレットの操作が必要なため、大勢で楽しむことができない課題に対し、Pepperが司会者となって対応します。Pepperが参加者の名前を順番に呼んでいくと、みんな喜んでくれました。名前を呼ぶという機能はもっと追求してよいと思っています。

そして、テレビ画面と連動して、みんなで考えさせる進行をし、BGMやSEで楽しい演出をします。例えば、時間がきたらゴングのSEを鳴らして「また、次の機会にお願いしますね」とすると盛り上がりました。



Pepperによる課題解決、その4です。

利用者に応じた難易度での提供ができていないという課題に対し、Pepperが利用者を判断して対応します。

顔認証による個人特定をし、個人カルテと連動します。さらにゲームの利用履歴とも連動します。



現在開発中の、利用者に応じた対応です。

総務省が主導する「介護情報連動基盤」から、認知度などの情報を取得し連携することで、継続的な利用を促し、利用者の機能維持に有効であるかの実証実験を行います。

これにより、継続利用のモチベーションアップと機能維持の実証データの取得をします。



介護施設へのPepper導入の効果です。

利用者の方が積極的にレクに参加し、笑顔が増えました。そして、経験が少ないスタッフへのレポのサポート役となり、スタッフの業務軽減となりました。

施設の付加価値が向上し、月額数万円なら今すぐ購入したいという声も出ています。

認知症は日本だけの問題ではないので、さらに発展して世界で使われるようにしていきたいです。



以上が、Pepper Innovation Challenge 2015決勝戦で行ったプレゼンテーションです。

ここからが、今回のイベント限定のプレゼンテーションです。

まず、近藤さんの自己紹介からです。

これまでIT業界で15年仕事をしてきましたが、プログラマーと経験は小中時代のBASICとZ80アセンブラです。なので、今回のPepperは約30年ぶりのプログラム経験となります。

そのPepperのプログラミング経験で気づいたことをお伝えします。



見積範囲(プロジェクトゴール)です。

仙台放送様から提供いただいた2つのアプリをベースに、実証実験を行うために必要なシナリオ分のプロトタイプを開発します。
 ↓

想定したシナリオに沿って、仙台市内の介護施設で利用してもらい、想定通りの利用が可能か実証実験を行います(数日程度)
 ↓

実証事件のフィードバックを踏まえ、シナリオを修正・追加など行い、アプリケーションをブラッシュアップします。
 ↓

複数の施設でフィールド評価をしていただき、最終的なチューニングを行います
 ↓

施設用サンプルアプリとして無料提供できる形にして、商用モデルへの布石(アプリの種類を増やす、記録する等)とします。



実証実験用プロトタイプの想定シナリオです。

Pepperと要介護者、支援者との会話シナリオを複数想定し、実証実験により検証していきます。

「1対1モデル」では、Pepperとの対話中心のシナリオとしました。「1対nモデル」では、楽しみ中心のシナリオとしました。



作成シナリオの想定プロットです。今回は、このようにフローチャートをつくりました。



以上の想定を元に介護施設での実証実験を行ってみたところ、実際はどうだったのでしょうか?



当時使用していたデベロッパー版Pepperがうまく動いてくれなく、再起動ばかりだったり。聞くと話すが同時にできなかったり。人の名前や顔を覚えてくれなかったりと、想定外だったことが色々と出てきました。



1年やってPepperから学んだことです。

 ・集中して長時間没頭する方がよいです(結果、夜中の作業となりました)
 ・言葉の中身よりも音(SE/BGM)が重要です
 ・Pepperの前にいる人を楽しませようという茶目っ気は大事です
 ・1つ目玉のシーンを決めて、作るとメリハリがつきます
 ・なんども繰り返して、なんども修正する勇気が大事です
 ・他人にレビューされることも大事です。

ここから言えるのは「Pepperのプログラミングは、開発ではなく舞台稽古である!」です。



プレゼンテーションは以上です。

以下、質疑応答です。

Q)モーションで工夫したところはありますか?
A)ギャグで言う所の「決めポーズ」を作る工夫をしています。感覚的には数分に1回は決めポーズを入れるようにしています。

Q)お年寄りを相手にする時に意識されたことは?
A)脳トレで正解をさせることが目的ではなく、Pepperでどう楽しんでくれたかが大事だったりします。これは最初に実証実験をした時、Pepperと適切な会話を行うことではなく、話を聞いてくれている「存在」であることが大事と気づきました。ここからそれを演出することを心がけるようになりました。

Q)実際に施設で使ってみた時に注意した点は?
A)レクリエーションを行う際には、全てをPepperに行わせるのではなく、介護スタッフが声がけを行う機会が頻繁になった、といったようなことが大事だったりします。そして、スタッフを含めた台本(運用)を作ることが必要とも思いました。スタッフはPepperがやるから完全に任せるのではなくて、共同スタッフと言うことを意識してもらうことが重要です。

Q)ロボットのUI設計について教えて下さい。
A)タブレットに「温度を下げましょう」と表示させてPepperに発話させても、おじいちゃんは「あつくねーよ」反発するかもしれません。でも、Pepperが「僕、暑くなってきちゃった」って話すとおじいちゃんは動いてたりします。ロボットのUI設計を考える時は、こういうイメージで行ってます。

質疑応答は以上です。




この後、実際にアプリ展示して、みんなで体験を行いました。







レポートは以上です。

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北構 武憲

本業はコミュニケーションロボットやVUI(Voice User Interface)デバイスに関するコンサルティング。主にハッカソン・アイデアソンやロボットが導入された現場への取材を行います。コミュニケーションロボットやVUIデバイスなどがどのように社会に浸透していくかに注目しています。

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