小田急線新宿駅で英語・中国語対応をするPepper。外国人に「箱根」を案内

小田急電鉄株式会社は、本日2月8日(月)から、小田急線新宿駅西口地上コンコースにある箱根旅行専門店「はこね旅市場」前において、ソフトバンクロボティクスの人型ロボット「Pepper」の試験導入を開始した。

Pepperの今回の試験導入での役割は「観光案内コンシェルジュ」。英語や中国語で、切符の購入窓口を案内したり、「箱根」を案内するなど、精一杯観光客をおもてなしする。

中国圏の旧暦の正月である「春節」に合わせて導入が開始されたPepperは、新宿と箱根を結ぶ「ロマンスカー」のテーマカラーであり、かつ中国人が好むと言われている「赤」のハッピを身にまとっている。

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Pepperの胸のディスプレイに、中国語と英語でそれぞれ「箱根の観光情報」「Pepperと写真を撮る」という項目が表示され、タッチすることでPepperが喋り出す

中でも今回注目すべき点は、日本初の試みとして、Pepperと通訳のコールセンターをつなぐ取り組みをおこなっていることだろう。


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タブレットの左上のロゴを触ると、通訳オペレーターにつなぐことができる。

外国人観光客に小田急線の係員が対応する際、Pepperを通訳オペレーターにつなぐことで、通訳を介して会話をすることができる。開発はPepperのアプリ開発コンテストPAC・PICで2回連続で最優秀賞に輝いたフューブライト・コミュニケーションズだ。このシステムは、同社が開発をおこなった「ロボ電」を応用し開発されたもの。ロボ電は、通常受付などに用いられるロボットアプリで、Pepperが受付を行いながら社内の担当者に電話をし呼び出してくれる。今回は電話の接続先に通訳オペレーターを置くことで通訳としてPepperを活用している。

その通訳をおこなっているのは、24時間365日6ヶ国語対応の通訳センターを運営する株式会社ブリックスだ。ブリックスは今回の導入に向け、この通訳センターでのオペレーター業務だけでなく、案内用の中国語のチューニングチェックも担当した。フューブライト・コミュニケーションズの技術と、ブリックスが持つ通訳・翻訳力により、中国語を話すPepperを高い完成度で実現している。中国語の細かいイントネーションの違いなどにも対応しているということで、中国人の観光客も違和感なく言葉をキャッチしている様子が見受けられた。

そんな中、フューブライト・コミュニケーションズ取締役の吉村氏によれば、今回一番苦労した点は「モバイルWi-Fiしか使えなかったこと」だそうで、「人が増えると電波の入りも悪くなり、オペレーターへの接続も難しくなってきてしまいます」と、日本一の乗降客数を誇る新宿駅の構内特有の難題について語った。今回はそれを「受け渡しする音声データを圧縮する」ことで対応しているという。


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Pepperは本日から2月29日(月)まで、9時〜17時の間店頭に立つことを予定している。

その後のPepper活用については、「まったくの未定です。今回の実証の中で、現場のスタッフが対応が難しい中国語などの多言語のお客様対応にPepperが役立てられたらと考えています。また、来日された観光客の皆様に、”日本でロボットと一緒に写真を撮った”という土産話を持ち帰ってもらえたら嬉しいですね」と小田急電鉄。

2020年の東京五輪に向けて、観光客向けのロボットサービスは今後も広がりを見せていきそうだ。

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望月 亮輔

1988年生まれ、静岡県出身。元ロボスタ編集長。2014年12月、ロボスタの前身であるロボット情報WEBマガジン「ロボットドットインフォ」を立ち上げ、翌2015年4月ロボットドットインフォ株式会社として法人化。その後、ロボットスタートに事業を売却し、同社内にて新たなロボットメディアの立ち上げに加わる。

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