「人間の話し相手になる人工知能を提供していきたい」株式会社エルブズ

2016年2月26日に設立された、株式会社エルブズにお伺いしてきました。

 株式会社エルブズ
 https://elvez.jp/


会社ページを見ると「エルブズは AI 技術 を応用して幸せな社会を創るお手伝いをします」とあり、更に3つの説明があります。

AIテクノロジー
 私たちは独自の工夫を行い、既存の人工知能エンジンの性能を向上させています

アプリケーション
 人工知能の応用範囲は、とても広く、様々なソフトウェア、サービスに組み込むことが可能です。

人との適切な組み合わせ
 人と人工知能、その2つを重ね合わせ、最適なソリューションを提供します。



今回は、代表取締役社長 田中秀樹氏、取締役副社長 油谷実紀氏、執行役員 CTO 松井暢之氏、曽我一弘氏の4名にお話を伺いました。

左より、代表取締役社長 田中秀樹氏、曽我一弘氏、執行役員 CTO 松井暢之氏、取締役副社長 油谷実紀氏、取締役CFO 津守諭氏。

(左より、代表取締役社長 田中秀樹氏、曽我一弘氏、執行役員 CTO 松井暢之氏、取締役副社長 油谷実紀氏、取締役CFO 津守諭氏。)




■会社の成り立ちについて



田中:会社を設立した最初のきっかけは、去年6月にTIS株式会社の松井さんとお会いしたことです。プログラム書いていてJavaScriptのバグをネットで調べていたところ、Tech Sketchというサイトにたどり着いて、そこから松井さんと知り合いになりました。

もともと私は大企業向け新規事業のコンサルティングを行っていて、その当時TISではIoT(Internet of Things)の事業を検討しており、はじめはTISのIoT事業のコンサルティングをやることになりました。そこからビッグデータや人工知能の話が出てきてどんどん遷移していき、年末に会社を設立するしかないという結論に達し、株式会社エルブズを設立することになりました。

油谷:TISの事業部で人工知能の新サービスを立ち上げることも検討していました。しかし、企業の規模が大きくなると組織の階層が深くなり、意思決定が遅くなってしまいがちです。ついカスタマイズやチューニングを深くやる方向になり、しかもそれをやることで売上があがるのですが、それが弊害となっていました。つまり、それを切り離さないと新サービスは作れないのではないかと考えたのです。

今回は田中さんのスタートアップでの経験や人脈を生かしつつ、TISとしての技術力と、大企業としての強みを組み合わせることで、従来難しかった新サービスの立ち上げを、人工知能領域のベンチャーという形で実現できました。

松井:オフィスでプログラムを書いていると、様々なインタラプトが入ってきてします。それならいっそのこと、違う場所で仕事をした方が効率を上げることができます。



■取り組むビジネス領域について



– エルブズはどういう領域の仕事を行うのですか。

田中:南山城村という京都府唯一の村があります。我々がつくろうとしているAIを使ったコミュニケーションサービスを一緒に使ってもらい、一緒に試行評価していこうと考えています。当面狙っているのは、高齢者の方に優しいコミュニケーションのあり方の提案です。現在、他の自治体さんとも話をしています。



– どういうジャンルをターゲットにしていくんですか。

油谷:ターゲットの中心は「中核市」です。日本には政令市(政令指定都市)が現在20都市、その次の規模が中核市で45都市あります。民生委員は通常、都道府県の権限なのですが、政令市・中核市ではその都市に委任されています。それより小さい村だと権限は県となります。このような背景から、まずは中核市からアプローチしています。自治体は日本に1,700ほどあるので、最終的には全部自治体をカバーすることを目標にしています。

– 今の時点でもインターネットを触っていない方を対象にして、AIの力を使いインターネットのコミュニケーションに親しんでもらおうというものですか。

油谷:はい、そうです。高齢者と言っても要介護者ではなく、元気な方を対象としています。具体的には、55歳以上でスマホは使い始めている「大人の女性」です。彼女たちは今スマホやタブレットでYouTubeのコンテンツを見たり、アプリを使ったりしていることがわかっています。今後は、スマホやタブレットをコミュニケーション手段に使って欲しいですし、その結果、お友達とのコミュニティが出来て、これまで以上にセカンドライフが充実していくと考えています。

– 今のお話の中でどういうシーンで人工知能を使っていくのですか。

松井:コミュニティの中に人工知能のエージェントを入れていく予定です。最初はシンプルな雑談の対話エンジンを想定しています。人間からの何らかのインプットに対して、何らかのアウトプットを返すというものです。それを進化さて、盛り上がる人に話題を振るとか、盛り上がってない人や喋ってない人に自然に話を振ってあげることを実現していきたいです。

ファシリテーターのように上手にコミュニケーションを活性化していきたいと考えていて、実際に実証実験をしながら、研究していきます。分野としては、自然言語という枠内になっていくと思います。

油谷:高齢者の中には発話(しゃべりはじめる)や終話(しゃべり終える)のが難しくなる方がいて、そのような方達の補助になればとも考えています。



■人工知能を使う意味



– ロボットの役割の一つとして「話し相手」というのが今後重要になってくると思っていまして。そうなると、人工知能をつかって雑談相手にさせるっていう用途はあると思います。

油谷:私たちはソフトウェアをつくる会社なので、ロボットやスマホ、タブレットなどインターフェースは何であれ、人間の話し相手になるソフトウェアを提供していきたいと考えています。また、人ができることを拡張することが、人工知能の役目だと思っています。例えば、相手と話をするのに人間だと24時間ぶっ通しで相手をすることはできないじゃないですか。でも、それができるのが人工知能なのです。

– 確かにせっかくなら人工知能には人間にできない分野を担ってほしいですね。



■最後に



田中:このプロジェクトは風向きが良くて、想定外のことが起きても、結果としてプラスになることが多いので、こういう時は流れに任せようと思っています。南山城村とは会社設立した2月26日に契約。会社の立ち上がりでこれほど幸せなことはありません。

油谷:人工知能ではIBMのワトソンが話題になっていますが、村などで使うとなるとハードルがすごく高いのが現状です。我々は大企業が拾えない層をカバーし、幅広い人が使える人工知能サービスを提供していきます。

– 今後が楽しみです。今日はお話ありがとうございました。

 株式会社エルブズ
 https://elvez.jp/

ABOUT THE AUTHOR / 

北構 武憲

本業はコミュニケーションロボットやVUI(Voice User Interface)デバイスに関するコンサルティング。主にハッカソン・アイデアソンやロボットが導入された現場への取材を行います。コミュニケーションロボットやVUIデバイスなどがどのように社会に浸透していくかに注目しています。

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