2016年5月24日〜25日の2日間、日本マイクロソフトによる開発者向けイベント「de:code 2016」が開催されました。基調講演では来日したMicrosoftのCEO サティア・ナデラ氏も登壇し注目を集めました。内容としては先般、米国「Build 2016」で発表した内容を日本の開発者に向けて改めて紹介するものでした。
「Build 2016」は、米Microsoftが3月30日〜4月1日にかけて米国で開催した「Microsoft Build Developer Conference 2016」のこと。Windows 10がUNIXのBashシェルに対応、ネイティブなUbuntu LinuxのバイナリをWindows上で動作させるなどの発表が行われ話題になりました。その他、MR(Mixed Reality)ヘッドセット「HoloLens」、音声アシスタント「Cortana」の強化、Conversations as a Platform、生体認証「Windows Hello」、Visual StudioのXamarinの開発サポート、UWP(Universal Windows Platform)アプリに変換するコンバータの提供などが挙げられています。
ここ最近のMicrosoftは、Azure上でIoTやコグニティブ(AI関連)に関連するAPIやライブラリを強化していて、PepperとAzureの連携を発表したり、ResNetがImageNetの世界的な画像認識技術コンテスト「ILSVRC 2015」で5部門すべて1位を獲得したり、自然言語での会話技術向上を公表したりと、最先端分野にも積極的な取り組みと姿勢を見せ、速いスピードで進化している印象があります。エバンジェリストや市場から聞こえてくる「Microsoftが変わった」「Microsoftが戻ってきた」という声もうなづけます。
「de:code 2016」の基調講演の中でも、開発者に向けたラブコールを何度もおこない、日本市場向けたデモとしては「秀丸エディタ」をUWP版にコンバートしたほか、コンセプトがまったく異なるけれども会話で重要なキーとなる2つ技術「Cortana」と会話ボット「りんな」がアピールされました。Microsoftは今後は自然会話が重要なインタフェースになると位置づけています。
「Cortana」(コルタナ)はWindows 10にも搭載されている音声認識アシスタント(iPhoneのSiriと同様)で、「今日の天気は?」と聞くとユーザがいる場所を特定してその日の天気や気温などを返しますが、「りんな」はエンタテインメントを重視し、より人間らしい回答を返すため「今日の天気は?」と聞くと「晴れたらいいね」「こっちも同じだよ」とアシスタントとは異なる回答を返してきます。Microsoftでは正確な情報を返すアシスタントと、人間らしく話し相手になる女子高生のどちらも自然会話には必要な技術だと考えています。
デモでは「りんな」の画像認識技術と組み合わせた受け応えが披露されました。ステーキの画像を送信するとアシスタントのように「ステーキですね」とは返さず「お腹減るじゃん」と返し、清水寺の画像を送信すると「それにしても清水寺、激混みなもんねー」と返します。いずれも画像がステーキであり清水寺であることを認識した上で、それを言い当てるのではなく、その先を考えて返す機能となっています。
ちなみに「Cortana」はiOSで使えるアプリも提供されています。
基調講演に登壇したロボットたち
オフィス365のデモではWindows Azureをはじめとしたテクニカルエバンジェリストの戸倉彩氏が登壇。DMM.make ROBOTSのコミュニケーションロボット「Palmi」と会話を交わす場面がありました。
戸倉(敬称略)「Palmiくん、こんにちは」
パル(Palmi)「こんにちわ」
戸倉「戸倉です、よろしくね」
パル「戸倉さん、あれ? 僕の記憶では戸倉さんはクラウディアという名前だったんだけどおかしいなぁ・・」(場内が沸く:Azure公式の萌えキャラ “クラウディア窓辺” のギャグ)
戸倉「新しいメール、届いている」
パル「はい、1件の新着メールがあります」
戸倉「読み上げて!」
パル「はい・・”クラウディアさん、ビジュアルスタジオ・・・(メール内容を日本語で読み上げ)”」
戸倉「ありがとう」
Microsoft Graphとロボットが連携することで、音声で好きなときに様々な情報を収集できることが紹介されました。
また、PepperはAzureと連携し、大画面のSurface Hubに商品リストや解説を連動して表示する「未来の商品棚」の英語版がデモンストレーション。
Pepper店員がお客様の要望を聞いて、オススメの商品をリコメンドし、商品の特徴も解説するお馴染みのデモですが、基調講演が海外でもライブ中継されているためか、Pepperは英語版が使われていたので、いつもの可愛さではなく、ちょっと賢い感じの店員となっていました。
会場では展示ブースコーナーとセミナー(ブレイクアウトセッション)も用意されていましたので、その様子はパート2でお知らせします。
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神崎 洋治神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。