人間とロボットの振り付けの可能性を探る「プロトコル・オブ・ヒューマニティ」オープンラボに行ってきました

7月9日(土)、人間を形づくるプロトゴルを探る「プロトコル・オブ・ヒューマニティ」オープンラボに行ってきました。

公式ページを見に行くと、以下のように説明が。

大橋可也&ダンサーズは多くの人々が持つダンスのイメージとは異なり、テキストからフォルムや感覚を選び取り身体にインストールする独自の方法で振付をおこないます。

オープンラボでは、長谷敏司の旧作品を題材にした振付を制作し、参加者とともに自然言語処理などの技術の応用、ロボットと人間への振付の可能性を探ります。

参加者は「プロトコル・オブ・ヒューマニティ」のプロジェクトメンバーとして2016年秋に予定している第1回公演に参加することができます。

ロボットアプリケーション開発者、人工知能研究者、ダンサー、俳優、学生など、あらゆるバックグラウンドを持つ方の参加をお待ちしています。

参加は1回のみから何回でも。体を動かせる方は動きやすい服装で。PC、ロボットをお持ちの方はぜひご持参ください。

主催の大橋さん曰く「ダンスワークショップ×ハッカソンみたいな感じにしたいのですが、どうなるかは参加者次第」ということで、どうなるのか楽しみです。


会場は森下駅/清澄白河駅が最寄り駅となる「森下スタジオ」。

本日の参加者は10名。4時間かけて人間を形づくるプロトゴルを探っていきます。

会場では、NAOとロボホンが待機してました。今日のどこかで登場するのかな?

進行を務める大橋さんです。

大橋可也&ダンサーズの主催をされています。そして、昨年開催された、Pepperアプリコンテスト「Pepper Innovation Challenge 2015」でも決勝戦に残ったすご腕のロボアプリデベロッパーです。

身体の使い方もロボアプリ開発も両方熟達されているので、今回のプロジェクトを主催されるのにぴったりです。

スタートの前に、大橋さんによる手法の説明です。

小説のようなコンテクスト(文脈)ある文章からテキストを取り出し、それを解体します。それにフォルム・感覚・モチベーションによる解釈を加えた後、振り付けという形で人間にインストールします。

今日のダンスワークショップは、この手法で進行していきます。

前半戦では、SF作家の長谷敏司さんによる『BEATLESS』の文章を使い、ダンスワークショップを行います。

準備体操と自己紹介の後、文章冒頭の「まどろみ」という単語を取り出して、各々がイメージする「まどろみ」の動きをしてみます。

みなそれぞれの動きをしています。

次に二人一組になり、自分がまどろみからイメージした動きを言葉にして説明をしながら、相手に説明を行います。「まどろみ」の動作を分解してみると、一つ一つの動作の積み重ねであることが分かります。

次に、相手から説明されたまどろみの動作を説明通りに自分で動いてみます。相手のまどろみをやってみると、以外と身体が上手に動かず、ぎこちなかったりします。

今度は、Googleで「まどろみ」を画像検索してみましょう。すると二人がまどろんでいるイラストがでてきました。

このイラスト通りの格好をそれぞれやってみます。ぴったりな格好をするために自分の身体を動かすのが、難しいことに気付かされます。

ここから、今までのまどろみを一連の動きにまとめたものをしてみます。まずお互いパートナーのまどろみの動きからスタート。次に二人でGoogle検索で出たイラスト通りのまどろみの格好をします。

トライしてみると、まどろみとまどろみの間の動きをどうするかを考える必要があることに気づきます。また、このまどろみには自分でイメージしたまどろみは一切ありません。でも、まどろみの動きをしているのです。

今回行ったのは「テキストから状態を取り出す」→「取り出した内容を拡張する」→「それを身体に入れる(インストールする)」です。

この後、『BEATLESS』の他フレーズでもいくつか同じことを行いました。

後半は3グループに分けて、以下のテーマについて話し合いします。

 1. 解体とピックアップ
 2. 身体への実装
 3. ロボット


前半行ったダンスワークショップでの体験を元に各テーマで感じたことを話し合い、最後にみんなの前で発表します。これはテーマへの正解にたどり着く必要はなく、まとまっていなくても各自が感じたことを話し合います。

<1. 解体とピックアップ>

 グループでは文章の情報量の話をしました。小説の一行とってみても、多くの情報量です。今日みんなでダンスワークショップをやってみた通り、小説の言葉を元に振り付けしても各自のイメージで動きは異なってくる。イメージを他の人と共有するときには、実際に振り付けの動きしてみるだろう。そうする事により皆がイメージしやすく、説得力が出る。

 では、このようなことをロボットでも実現できるのだろうか。ここで思ったのが「ロボットは文脈が読めない」のではという点。人間は動作と動作の間をつなげる事が出来るけど、ロボットはつなげる事が出来ない。例えば「拍手をした後に座禅をしてください」という指示があったときに大事なのは、拍手と座禅の間の「つなぎ」の部分ではないだろうか。ロボットを人間らしく振る舞わせるためには、この「つなぎ」をプログラミングさせないとならないと思う。

 そして、形容詞で表現される「加減」も重要だと思う。「そっと」や「もっと強く」という感覚は人間的なものだと思う。

 ここから「人間の動きには切れ目がないと」考えられる。例えば、机の上にあるペンを手にとるときには一連の動きの切れ目がない。これを言葉で「ペンを取る」と言った瞬間、動きに切れ目が発生する。

 話はちょっと変わって、よく「間をとる」や「呼吸を合わせる」というが、この動作をロボットはできるのだろうかということも考えた。

(大橋さんコメント)
 「間(あいだ)」を作るということに意味があって、間をどうさばくかがダンサーの技術力の1つでもある。動作を細かく分解すればロボットでも間を再現できるかもしれないけど、そうやって作られた間をどう捉えるか?

 今回のオープンラボでも「間」を考えるのが大切な事です。

<2. 身体への実装>

 振り付けを行う事は、各人の経験に基づいているのではないか?と想定しました。

 振り付けを覚えるとき、ダンサーはどうするかを考えてみると、振付師により与えられたイメージを意識したり、空間を意識してを覚えるようにしています。指示をそのままマネをしてもダンスではないと思います。

 言葉で振り付けの指示をしようとすると、いろいろな方法があります。例えば、身体の部位をどう動かすかで指示をする、感覚を言葉で伝える、外部の状況を言葉で伝える、擬音を使って伝える、気持ちを言葉にして伝えるなどです。言葉以外の方法だと、実際に振り付けをやって見せる、画像や動画を見せるなどの視覚的に理解させるやりかたもあります。

 これら言葉や視覚などの方法を複数組み合わせて共通言語を形作って、認識を合わせていくのではないでしょうか。

(大橋さんコメント)
 「指示をそのままマネしてもダンスではない」と言ってたけど、それはフォルムをマネしただけですね。それでは動きの間をなくなってしまい、滑らかなダンスにならない事が多いからと思います。

 「マネをする」というのは視覚的なので、どうしてどの行為をするの言葉があったほうが意図が消化できます。体験をどう作り上げて、どう共有するかが大事です。

<3. ロボット>

 ロボットの動かし方とバレエの動き方が似ているという話になりました。バレエで大事なことは余韻なので、ロボットでも余韻ある動きができるといいと話し合いました。

 ロボットは余韻ある感覚的な動きが出来ないと思っているので、よく考えるとそれはダンスの下手な人と一緒かもしれません。

(大橋さんコメント)
 人に心地よく思ってもらう振る舞いはロボットでも実装可能だけど、必ずしもそれだけが目的ではないと思います。

 コンテクストから振る舞いだけを取り出してみんなで体験してみるのが今日のオープンラボがやっていること。このためには共通的な体験が必要です。

今日の内容は以上です。

ロボアプリを作ったことのある方であれば、ロボットの振り付けを作るのに苦戦されたことがある方が多くいらっしゃると思います。どうして苦戦するかというと、日常生活でどういう動きをするとどう相手に伝わるかを意識することがないからというのが一因でしょう。

今日前半戦のダンスワークショップでは、「まどろみ」という単語からどういう動きをしているか、そして自分以外の人がどういうまどろみの動きをしているかを意識して学ぶことができました。

後半戦はそこから感じたことを皆で話し合い、さらに理解を深めました。

4時間参加することで「身体を動かすこと」に対する意識が高まりました。この体験はロボアプリの振り付けをする際に生きてくると思います。

この「プロトコル・オブ・ヒューマニティ」は、7月の毎週土日に開催されます。途中一回だけの参加もOKなので、ロボアプリで振り付けをつけるのに苦労されている方は、参加してみてはいかがでしょうか。

詳細はこちら。

[日程]
2016/7/10(日)7/16(土)17(日)7/23(土)24(日)7/30(土)31(日)
(全8回)時間はいずれも13:00から17:00
要申し込み

[会場]
森下スタジオ
東京都江東区森下3−5−6
地下鉄都営新宿線、都営大江戸線森下駅A6出口徒歩5分
東京メトロ半蔵門線、都営大江戸線清澄白河駅A2出口徒歩10分
※日程によってスタジオが異なります。ご注意ください。
7/10:Sスタジオ
7/16, 17, 23, 24:Bスタジオ
7/30, 31:Cスタジオ

[参加費]
2000円(初回のみ、2回目以降は無料)

[参加申し込み]
申し込みフォーム

[公式サイト]
http://dancehardcore.com/topics_protocolofhumanity_openlab.html

ABOUT THE AUTHOR / 

北構 武憲

本業はコミュニケーションロボットやVUI(Voice User Interface)デバイスに関するコンサルティング。主にハッカソン・アイデアソンやロボットが導入された現場への取材を行います。コミュニケーションロボットやVUIデバイスなどがどのように社会に浸透していくかに注目しています。

PR

連載・コラム