【SoftBank World 2016 徹底レポート(17)】Pepper業種別成功事例3 〜小売・サービス業〜

Softbank World 2016 二日目の15:40から行われた「Pepper業種別成功事例3 〜小売・サービス業〜」のレポートです。

プログラム概要は以下のとおり。

2015年10月のローンチ以降、進化を続けるPepper for Biz。Pepperによる接客の最新成功事例を、導入企業のプロジェクト担当者とともに振り返りながら、ロボットの導入によって実現される新しい顧客体験とそのトレンドを読み解く。また、今後の接客業務向けロボアプリについての展望をいち早くご紹介する。

こちらのプログラムは、前半が株式会社プロトコーポレーション、後半が株式会社インテージの二部構成となります。



株式会社プロトコーポレーション : DataLineロボ査定

登壇されるのは、株式会社プロトコーポレーション 取締役 白木享氏です。

株式会社プロトコーポレーション 取締役 白木享氏

「カーと言えばグー!」のキャッチフレーズでおなじみのプロトコーポレーションは1977年創業。クルマ情報誌『Goo』の出版や、クルマポータルサイト Goo-netの運営をしております。

他にもディーラーソリューションとしてクルマ査定システムも手掛けており、本日はPepperを活用した査定システム「DataLineロボ査定」を紹介いただきます。

DataLineロボ査定は、今乗っている自動車から新車に乗り換える時の金額をPepperに算出してもらうというもの。8月から販売を予定しております。



プロトコーポレーション R&Dチームの取り組み

2010年に様々なITによるイノベーションに取り組むためのR&Dチームを社内に設置しました。

ロボット、AI、デバイスなど様々な領域に対し、バイモーダルでの開発を行っております。近い将来、人材不足の懸念が想定されています。その際、ロボットがどう活用されて行くのかが1つのキーワードになると思っており、そこを狙っています。

2015年にはPepperデベロッパープログラムに参加し、現在進行形でPepperが「何ができるのか?」「どこまでできるのか?」「何が得意なのか?」「将来はどうなるのか?」などを想像しながら、現在も研究開発を行っております。

Pepperは十分な集客効果があります。そこで集客だけではなく、自動車販売店様の収益につながるPepperでのソリューションを作っていきたいと考えております。これは非常に難しい壁ですが、今もチャレンジし続けています。



自動車販売の壁

自動車は高額なので、購入までに様々な壁があります。どうやって販売するかをいつも注力しており、様々な壁に対してソリューションを展開しています。

スライドは商品を買うまでの流れです。

「接触・提案」と「見込」の間に警戒・注意の壁というものがあります。お客様が、何か売られる話?お金がかかる話?と感じる壁です。

なんとかこれを突破したいと考えており、そこに投入するのが警戒されずに接触できるPepperと考えております。壁を突破するソリューションを皮切りに、今後は自動車販売全体に関するソリューションを展開していきたいと考えております。

本日は事例ということで、私たちのお客様である株式会社セブンスター成合常務に来ていただいております。

右:株式会社セブンスター 常務執行役員 成合慶浩氏



MINI宝塚店 株式会社セブンスター 紹介

株式会社セブンスターは神戸を中心に4店舗で新車のMINIを販売しております。7年連続で全国MINI最優秀・優秀ディーラー賞を受賞されており、2013年度はBMWグループ顧客満足世界No.1を受賞されました。



ここからはインタビュー形式で事例を紹介します。



Pepper導入のきっかけ

白木

No.1を目指すためのプロモーション活動での取り組みを教えていただけますか。

成合

私たちのお客様はワクワクするようなことを求めてますので、一番最初に取り組んだり、新しい情報を発信することを心がけています。写真をご覧ください。MINIには実物大のおもちゃがありまして、これもいち早く手掛けました。

白木

YoutubeなどのITもうまく使いこなしていますが、Pepperの導入のきっかけを教えてください。

成合

一般モデルがすぐに完売したことを知ってましたので、Bizモデルが出るのを待っておりました。プロトさんからのご提案をいただき、即決で導入を決めさせていただきました。

白木

Pepperは発売当初から注目されていましたが、MINIと合うかについてはどう考えられました?

成合

チャレンジするのが一番なので、どうなるかは分かりませんが導入してみました。



Pepper導入の効果

白木

実際にPepperを導入された効果はいかがでしたか?

成合

導入されたのが昨年の年末前でした。独自性を出すためにPepperにいろんなアレンジをし、ショールームでは大好評でした。しかし、ショールームに来ていただく方は限られた人数しかいらっしゃいません。

そこで大きなイベントであるクリスマスパーティーに持ち込みましたら、Pepperの前に人だかりができまして、その光景を見てこれは期待できるなと感じました。



自動車購入までのスピードが早い時代

白木

集客には十分効果があると感じられたようで何よりです。今は自動車購入までのスピードが早い時代というお話を聞かせて下さい。

成合

自動車購入を検討するにあたり、以前はショールームに足を運んだり、自動車雑誌を買ったりが多かったのですが、今はウェブで情報を収集するというのが一番多いです。

今は大型化したショールームが増えて展示自動車もたくさんあるので、試乗してじっくり検討していただきたいのですが、お客様の方はウェブでいろいろな情報を探しています。ウェブには実際に購入した方からの口コミや、海外サイトでの発売前の情報などもあります。

このような状況なので、ショールームにいらっしゃる時には、購入の自動車をある程度絞り込んだ状態でいらっしゃいます。このようにショールームにいらっしゃる回数は減っています。そういう意味で、ショールームにいらっしゃってから即決というのも増えています。査定・試乗・見積もりをしっかりして信頼関係を築くことが重要となっています。



Pepperの有効な活用法

白木

査定・試乗・見積もりの頭文字をとって「さ・し・み」とおっしゃることが多いですが、査定の部分で「ロボ査定」を一緒に取り組みさせていただきました。Pepperをどのように使うかを教えていただけますか。

成合

Pepperは電源入れれば勝手に何かをしてくれるというものではないので、写真に出ている女性がPepperの担当をしております。ショールームでは受付をしております。普段はお客様にお茶を出したり、おもてなしをしたり、用件をお伺いしたりという、一般的なショールームの女性が行う業務なのですが、非常に能力高く、お客様に何かをしてあげたいという思いが強いんですね。そこで、自分の思いをPepperを使って伝えており、それを私たちは「Pepperを飼う」と社内で言っております。

白木

私も現場を拝見したんですが、この女性がPepperを使ってアシストをすることで、お客様との上手なコミュニケーションがとれていると感じました。ソフトバンクロボティクスから提供されているインタラクション分析があります。これで感情などが可視化されるので、今後はこれを活用しデータ分析をし、ユーザ様がどう感じられているかを見ながら、サービスを展開していくことが重要と考えます。

今後、販売店の視点から期待することを教えてください。

成合

ユーザ様がロボ査定を触ってもらった時、営業担当がセールスをしなくても、お客様が自然に触っていただいて査定をしていただけます。自分で査定することで興味が出て、次のステップに進むということを期待しています。今後、Pepperのいろんなアプリが出てきたり人工知能との連携がされることで、色々と期待をしております。本当はPepperが自動車が売ってくれるといいんですが(笑)



Pepperを流通業の現場で活かす7つのまとめ

白木

最後に、Pepperを流通業の現場で活かす7つのまとめをお伝えします。

 1. 仮説を現場のスタッフの方と打ち合わせする
 2. ロボットと人間の距離感をうまく使う
 3. Pepper完結型よりも、上手く使うナビゲーターが必要
 4. 会話に期待したいが、今はディスプレイ「も」うまく使う
 5. Pepperに話を積極的にさせる
 6. PepperのUXでユーザーの心のハードルを下げる
 7. データを分析する

本日はご清聴、ありがとうございました。



株式会社インテージ : 購買ビッグデータxPepperが販促の未来を創る

登壇されるのは、株式会社インテージ マイクロ・マスマーケティング推進室 室長 牧野充芳氏です。

株式会社インテージ マイクロ・マスマーケティング推進室 室長 牧野充芳氏



株式会社インテージ 紹介

株式会社インテージは1960年設立されたマーケティングリサーチの会社です。国内第1位、世界第9位の売上高です。

皆様にあまり馴染みのない会社かもしれませんが、サントリーの烏龍茶のパッケージをじっくり見ますと、売上No.1の部分の下に「インテージSRI調べ」とあります。

弊社が作成し、提供しているマーケットデータを様々企業様がこのように利用しております。とはいえ、我々はランキングを作るだけが仕事ではなく、これ以外も様々な業務を行っています。

広い業種のマーケティングリサーチデータ、販売データ、購買データ、ビジネスデータなどをお預かりし、収集して解析し、マーケティングサポートを行うのが本業でございます。企業様のマーケティングをサポートすることで、その先にいる生活者様の生活を豊かにするというのが弊社のモットーであります。

先日、購買ビッグデータ解析による、1to1のレコメンドをPepperが行う「genometrics CONNECT for Pepper」をリリースしました。



スーパーマーケットにおける3つの真実

こちらの説明の前に、まずスーパーマーケットにおける3つの真実をお伝えします。

1つ目は、スーパーにおける非計画購買の比率です。80.2%と、約8割の買い物が、何を買うかを決めていないということです。

2つ目は、入店からレジ会計終了までの平均時間は15.7分。この間、商品は平均12.1個購入されています。つまり、1分強くらいで1個の商品を買っている計算になります。となると、滞留時間を1分でも増やせたら、購入商品数を増やすことができます。先ほど非計画購買が8割あると伝えました。スーパーの店内を楽しくして、滞留時間を増やすことが売上に貢献します。

3つ目は、主婦にとってのスーパーでの買い物は、3度の食事のための調達活動化しているということです。主婦の方にインタビューをするとスーパーで食事のための買い物するのが楽しくないので、安いものを買い物してすぐにスーパーから帰って来ちゃうと、皆様口を揃えて言うそうです。なので、主婦にとって買い物というのが苦痛とも言えます。

この3点をまとめると、このようになります。

 1. お買い物における非計画の多さ
 2. 滞在時間と買上げ点数の関係
 3. 調達活動化する普段のお買い物

これら3つを克服できると、小売業さんにとってプラスの効果が生まれるかもしれません。その鍵は店頭にあると言えます。



店頭コミュニケーションに求められているもの

お客様がスーパーにいらしたときに、商品との出会いを演出し、つまらない買い物をいかに楽しくするか。非計画購買ではお客様は商品パッケージやディプレイを見て何を買うかを決定します。そのときに何を訴えられるかが重要になっています。

お店を好きになり興味を持ってもらい、お店に行くと何か新しい体験をさせてくれる。しかもそれをやるためにはお客様の潜在ニーズをちゃんと拾って、商品との出会いを演出するということが店頭コミュニケーションには求められています。

そのための1つのソリューションとして、お客様の人となりを理解するための購買ビッグデータの利活用、適切なタイミングで背中を押すためのロボティクスと掛け合わせて開発されたのが「genometrics CONNECT for Pepper」です。



genometrics CONNECT について

スーパーでお買い物のときにポイントカードを使うと、そこからわかるのは、女性・30代・中野店でビールを年3,000円購買といったお客様の一面しか見えてないとも言えます。これだけが分かってもお客様の潜在的なニースを理解することは難しいでしょう。

インテージが過去から積み上げたマーケティングデータと構築したアルゴリズムによって、レシート情報から潜在ニーズである、どういう価値観を持って生活しているかまでが数字で推定することができます。社内ではこの価値観のことを「顧客DNA」と呼んでいます。

一方で、現在スーパーに並んでいる商品は30万点ほどあります。この1品1品に、どういう価値観の人がその商品を買うかもスコアリング化しています。同じような波形のお客様と商品とは相性がいいということができます。

このようにお客様の相性を把握し、合った商品を推薦ができます。例えば、本格派の商品を好む方には「こだわり」という単語がささります。このような推薦行為をPepperと一緒にできると考えています。

お客様一人ひとりの価値観・意識と相性の良い商品を、お客様ごとに異なる「響くワード」で訴求することで、価格競争から「価値主導の需要」を創出することができると考えています。



genometrics CONNECT for Pepper の紹介

利用方法です。

まず入り口/店内でPepperがお出迎えし、会員カードをかざします。

すると、会員カードに紐づく購買データの解析、商品の相性を判定します。

そして、お客様の価値観・意識に合った商品のレコメンドをPepperがしてくれます。

これにより、お客様自身も気づかなかったマッチする商品を発見することができ、スーパーでのお買い物が楽しくなります。

この流れを見ると非常にシンプルですが、裏では先ほど説明したような価値観の合うお客様と商品のマッチングをしています。



まとめ:ロボットが店員の代わりをするためには

このソリューションは第一弾と考えています。Pepperとのコミュニケーションや会話から、お客様の感情を読み取り、節約志向の今でも「今日は贅沢したいな」という気持ちをどうやって察知するのか、という研究も始める予定です。

これが察知できたときに、ロボットが店員さんの代わりができ、お店へのロイヤリティを上げられる時代が来ると考えています。

本日はご静聴ありがとうございました。

レポートは以上です。



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ABOUT THE AUTHOR / 

北構 武憲

本業はコミュニケーションロボットやVUI(Voice User Interface)デバイスに関するコンサルティング。主にハッカソン・アイデアソンやロボットが導入された現場への取材を行います。コミュニケーションロボットやVUIデバイスなどがどのように社会に浸透していくかに注目しています。

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