Pepper X 介護敷設・病院の具体例
SoftBank World 2日目「Pepper業種別成功事例4 ~介護施設・病院~」のレポートです。
このセッションのテーマは以下のとおり。
2015年10月のローンチ以降、進化を続けるPepper for Biz。Pepperの病院や介護施設での最新活用事例を、実際の効果や成功要因分析を交えながら、導入施設のプロジェクト担当者とともにご紹介する。また、今後のヘルスケア向けロボアプリの展望をいち早くご紹介する。
当初からPepperは介護施設に対して実証実験や導入を積極的に行ってきました。その最新の具体例を見ていきたいと思います。
カラオケをベースにレクリエーション
株式会社エクシングは、通信カラオケでお馴染みの「JOYOSOUND」を展開している会社で、Pepper発売直後は直営店でイベントなどでPepperに歌ったり踊らせたりしていました。
その際にお年寄りにウケが良いことに着目し、Pepperがお年寄りに向けたカラオケ/健康コンテンツをリードしてはどうかとの開発を進めたとのことです。
その結果、昨年開催された「Pepper Innovation Challenge 2015」でベストヘルスケアビジネス賞を受賞しました。
受賞した作品をブラッシュアップして、神奈川のモデル事業や各種実証実験などを行っているという実績があります。
現状、介護施設においては人材不足/コンテンツ不足があり、Pepperがスタッフ一人分の活躍をすることを目指ししていくとのことです。
9月から「レクリエーションをするアプリ」「個々と対話するアプリ」「歌って踊るアプリ」「カラオケ」を順次展開していこうと考えているそうです。
提供する「健康王国レク for Pepper」は既にある高齢者向け音楽療養コンテンツ「健康王国」に合わせてPepperがレクリエーションを進行してくれます。カラオケの機材が無くても、iPhoneとPepperがあれば対応可能となっていて、体操レベルに合った40分間のレクリエーションプログラムが8種類入っています。
「健康王国トーク for Pepper」は顔認識をして、利用者とのコミュニケーションを可能とする対話のアプリケーションとなっています。
これによって、レクリエーションをしていない時間でも利用者の方に対してPepperを活用することが出来る様になるとのことです。
全国に450箇所のデイケア敷設を運営している株式会社ツクイの森氏からの実際の感触をお話しいただきました。
→人員不足、職員のレクリエーションのマンネリ化が課題となっている。レクリエーションは考えるのも大変とのことです。
・Pepperを導入してみての感想は?
→初めて見て触れるので利用者も興味津々でした。職員もレクリエーションを行っている間、時間を取る事ができました。癒やしの効果もありました。
・敷設の利用者さんの反応は?
→鉄腕をアトムを見ていた方は、「生きているうちにアトムに会えてうれしい」とおっしゃってました。女性からは見た目と受け答えが「孫に見せたい」ともお話されていました。
・ロボット導入のへの課題は?
→導入するための金額と費用対効果だと思います。
・今後のPepperに期待したいこと
→介護職員のひとりとして、配置を叶えて欲しいです。
医療介護業務支援ソフトの老舗の見守りアプリ
エヌデーソフトウェアは約20年前から介護施設向けのパッケージソフトを作成していて、介護医療の業務支援ソフトでは約25%のシェアをもつ企業です。
開発の目的を2つに絞りしました。1つはPepper夜間帯の活用。日中は様々なアプリケーションなどを活用するシーンが出てきていますが、夜間帯もPepper活躍シーンを作れないかという課題がありました。
もう一つは、介護職員の負担軽減です。超高齢化社会で人材不足と言われている中でロボットによる課題解決を行うというものです。
この2つの課題を解決するのが、今回の「徘徊みまもりアプリ」です。
深夜徘徊は事故や寝不足に繋がります。
職員の代わりにPepperが監視をし、徘徊している利用者の方に声がけをして会話をすることで、その場に留めるというものに。バックグラウンドではPepperが撮影した画像を職員に通知をするのです。
職員が定期的に夜間巡回していたものをPepperが代わることで、負担が軽減すると同時にPepperが夜間活躍するシーンが出来るようになりました。
理想としては、介護施設のデバイス/センサーの情報を介護記録に取り込み、多角的に分析をして、Pepperやデバイスに戻して再活用をするのが重要と考えているそうです。
SOMPOケアネクスト株式会社が運営している施設で、5階建ての各フロアにPepperを2週間配置し、「徘徊みまもりアプリ」の検証を行いました。
1つ目の問題点は、誤検知が多い、スタッフを検知してしまうという点。これは人間の検知をする年齢を50歳以上に設定することで格段に少なくなったとのことです。
2つ目の問題点は、ゆっくり歩いている利用者を検知できない、写真撮影のタイミングが遅く写っていない場合があるという点でした。
これは、Pepperの設置場所をエレベーター前の1点に集中すること、Pepperの首振りを無くすこと、検知したら即座撮影を行うよう修正することで改善されました。
いつの間にか骨折の啓蒙
将来、国民の1280万人が骨密度が低下して骨折のリスクが増大しやくすなる「骨粗鬆症」に罹患するだろうと想定されています。「骨粗鬆症」によって骨が弱くなり、気付かないうちに背骨が潰れて骨折するという「いつの間にか骨折」ということも起こってきます。
ひどくなってから医療機関にかかるケースが多く、また一度骨折をしてしまうと連鎖的に骨折をしてまうこともあり、最悪寝たきりになってしまうこともあるとのことです。現在、日本イーライリリー社では、65歳以上の女性に向けて早いタイミングで受診をしてもらうように誘導するプロモーションを実施しています。
新しいプラットフォームを通じて早期発見を促す機会を模索している中で、Pepperを活用して受診検査を促すことと、「いつの間にか骨折」チェックシートをタブレットで回答してもらうことで、医師への相談促すということをテーマに作成しました。
上記のアプリをインストールしたPepperを、7月に都内の2つのクリニックに10日間設置をしました。
待合室と入口に設置したところ、訪れた1〜2割の患者さんが利用しました。また、治療経験のない患者の9割の方がが興味を持ち、検査を受けたいという人も8割に上りました。お医者さんに自ら相談する患者さんも2.5倍になりました。
満足度は8割近く。お年寄りでも気軽にPepperのアプリケーションが使うというのが分かったそうです。
結果として、より多くの患者に気づきを与える事が出来ることが分かり、早期の発見/治療に繋がることが見えてきました。また、今後大病院でもパイロットを行っていくという予定とのことです。
ロボットは計算できるスタッフに
今回は、介護と病気の啓発という2つのジャンルでの事例をご紹介しました。
全てに共通することは「ロボットが人の代わりに働く」ということではないでしょうか。職員の仕事の一部をロボットがやることで時間が空き、人が出来ない仕事に取り掛かれるようになります。
また、人が話すよりもロボットだと抵抗を持たずに聞いてもらえたり、ロボットならそれも無く一定のテンションで続けることが出来ます。
これからは、着実に計算出来るスタッフの一人としてロボットが今まで以上に活用出来るようになるのではないでしょうか。