トヨタ自動車は11日、米国に設立した人工知能技術の研究・開発を行う「Toyota Research Institute」(以下、TRI)が、人工知能関連の研究でミシガン大学と連携することを発表した。TRIは今後4年間で2200万ドル(約22億円)を投じ、クルマの安全性向上、生活支援ロボット、自動運転をはじめとする領域での連携研究などの取り組みを行っていく、とのこと。
今回の連携にあたり、TRIのCEO、ギル・プラット(Gill Pratt)氏は「トヨタは長きに亘り、ミシガン大学と大変良好な協力関係を構築してきた。今回、モビリティが抱える複雑な課題を人工知能で解消すべく、連携を拡大するに至ったことをうれしく思う。より安全・安心で効率的な移動手段をお客様にご提供すべく、同大学の研究者や学生の皆さんと共に新たな知能化技術の開発に取り組んでいきたい。また、モビリティ技術を活用し、高齢者や特別な助けが必要な方々を室内でサポートする技術にも注力していく」と述べている。
同大学のユースティス教授は「我々の研究室ではこれまで、ロボットが周辺環境を認識・理解する能力の限界に挑んできた。今回TRIを通じ、そうした取り組みを現実の製品に応用する貴重な機会を得ることができるだろう」と語った。オルソン教授も「TRIは、自動運転が抱える課題に取り組むべく、他車の動きからその意図を読み取るなど複雑な挙動を解析する我々の研究を活用していくことになるだろう」とコメントしている。
なお、同大学は今回の連携にあたり、学内の教授や学生を対象に、モビリティ、安全性向上、生活支援ロボット等における課題解決に向けた提案を募集。アレック・ガリモア教授は「ミシガン大学は何十年にも亘り、自動車研究開発施設の幅広い発展を支援すべく、アイデアや人材を提供してきた。トヨタとこれまで以上に密に連携し、グローバル規模で新たな時代の技術革新を起こしていきたい」と語っている。
TRIは当面、5年間で約10億ドルの予算のもと、主に下記の4つの目標を掲げ、人工知能研究に取り組んでいる。
ロボットの研究・開発もその重要なミッションのひとつだ。
- 「事故を起こさないクルマ」をつくるという究極の目標に向け、クルマの安全性を向上させる
- これまで以上に幅広い層の方々に運転の機会をご提供できるよう、クルマをより利用しやすいものにすべく、尽力していく
- モビリティ技術を活用した屋内用ロボットの開発に取り組む
- 人工知能や機械学習の知見を利用し、特に材料科学分野において、科学的・原理的な研究を加速させることを目指す
トヨタはスタンフォード大学およびマサチューセッツ工科大学と、それぞれ2500万ドルの予算を投じ人工知能の連携研究センターを設立、TRIも両大学の近くにそれぞれ拠点を設け、共に研究を進めている。ミシガン大学のあるアナーバー地区は第3の拠点と位置づけている。
ホンダも7月にソフトバンクとAI研究で連携を発表したばかり。9月には東京を拠点にしたAI研究所を設立する予定も発表しており、自動車メーカーによる人工知能に対する取り組みが急加速している。人工知能は自動運転車の開発にも大きく関連すると見られている。