大垣ロボットハッカソン by Mashup Awards 2016 に行ってきました

9月3日、4日の2日間、大垣ソフトピアジャパン ドリーム・コアメッセで「大垣ロボットハッカソン by Mashup Awards 2016」が開催されました。

こちらは、2016年9〜11月にて開催を予定しているMashup Awards 2016ハッカソンの一次予選です。

進行役のMashup Awards伴野智樹氏

イベント紹介はこちら。

本ハッカソンは未来のコミュニケーションのあり方を開発する、近未来を創作するハッカソンです。想像力と最新の技術を活用して、近未来のコミュニケーションを開発しましょう!

 ・各種ロボットを活用したロボットアプリ
 ・センサーやマイコンなどのIoT機器を活用した自作ロボット
 ・人工知能APIを活用したロボット風のプロダクト


今回参加のロボットは、Bocco、Sota、Nao、Pepper、BB-8(スフィロ)、PLEN2です。センシングデバイスのMESHもつかうことができます。



Sotaについてはヴイストン歳森モシ人氏、Naoについてはスマートロボティクス河田卓志氏からそれぞれロボットについての説明が行われました。

ヴイストン株式会社 歳森モシ人氏

株式会社スマートロボティクス 河田卓志氏

参加APIは、サイボウズのKintone、アプレッソのDataSpider Servistaです。こちらもそれぞれ説明がありました。

サイボウズ株式会社 竹内能彦氏



株式会社アプレッソ 脇野寛洋氏

審査基準は以下3点。

・アイデア:独自性、新規性、優れた着眼点
・完成度:作品の完成度、エンターテイメント性
・デザイン:芸術性、優れた表現技法

審査員は以下の3名です。

・マツモトサトシ氏/株式会社Misoca
・大沢 香織氏/株式会社トーキョーストーム
・北構 武憲/ロボットスタート株式会社



左より、ロボットスタート株式会社 北構武憲(筆者)、株式会社トーキョーストーム 大沢香織氏、株式会社Misoca マツモトサトシ氏




成果発表

今回の成果発表は9作品です。

Mendoi




メタボと診断されてしまった石井さん。運動をしなくてはなりませんがついつい忘れてしまいます。

そんな石井さんにおすすめなのが「Mendoi」。

DataSpiderのタイムスケジューラに予定を登録すると、時間がきたらNAOが運動するように声をかけてくれます。そしてすごいのが運動が面倒くさい時に「やりたくない」と答えると、人間の代わりにNAOがエクササイズをしちゃいます。



人の代わりにNAOがエクササイズをしている様子

運動が終わったらDataSpirer経由で自動でツイートします。kintoneを使って自動で体重推移のグラフも。

つぶやきがありますが、この運動をしたのは全てNAOです(笑)



kintoneによる体重推移グラフ

システムの全体図です。

発表は以上です。

続いて審査員からの質問です。


Q:エクササイズの動作は自作ですか?

A:動きのパターンはすでにNAOの中に組み込まれてものを使いました。ただ、パターンをどう組み合わせるかなどは自分たちで作りました。

Q:結局、石井さんのメタボは結果どうなりましたか?

A:残念ながら解消されませんでした(苦笑)



にぎやか会議



会議の途中に無言が続いて困ったことがありませんか。そんな時、この「にぎやか会議」を使ってみましょう。会議中に無言が続いた時、PepperとSotaが会議のテーマに沿ったおしゃべりをし始めます。

無言な会議も、ロボットの会話で素敵会議に変身です。

このアイデアを実装してみての理想と現実です。

ロボットに会議のテーマを音声で設定してもらうというのは実装できず、決め打ちでテーマを設定しました。会議が静かになるとロボットが勝手におしゃべりするのは、成功しました。そのおしゃべりした内容が会議で使えるかどうかは、会議次第だったりしますが(笑)。

そして、ロボット同士のおしゃべりがかみ合わないという別の問題も発覚しました。

今回のシステムの説明です。設定したキーワードをもとに、Noby APIを利用して会話文を生成し、それをロボットに発話させました。

発表は以上です。

続いて審査員からの質問です。


Q:なぜ2体の雑談になったんですか?

A:ロボットの音声認識が弱く聞き取りがなかなかできなかったので、喋らせる方向性にしました。雑談の中でアイデアが浮かぶこともあるというのもあります。

Q:3体の開発環境の違うロボットで大変だったところを教えてください

A:PepperとSotaはそれぞれ別の開発環境なので、それぞれのcodeを書きました。そして、お互いの会話をうまく成立させるのが一番苦労しました。

Q:会話がうまくいったことはありましたか?

A:開発中に「おっ」という瞬間が何回かあったのですが、その様子の動画を録画できなかったのでお見せできないのが残念です。



たびット by 宮田ジム



近未来、自律するロボットがいろいろ登場することでしょう。これに「かわいい子には旅をさせろ」を掛け合わせて、旅をするロボットを今回のテーマとしました。ロボットがヒッチハイクをし、人の力を借りて日本一周を狙います。実際には人がロボットを手渡しでリレーして、人とロボットとの共存を実現します。

基本行動として、ロボットは次の目的地に行きたいと人におねだりします。目的地に着いたら撮影スポットで記念撮影をして、それをツイートします。定期的に現在の情報もツイートします。移動途中には、ドライバーと観光スポットや天気・渋滞情報などを会話します。旅行中は出会った人の年齢・性別・表情を記憶していきます。

全体システムです。Raspberrt Piを使い、GPS、Webcam、MicroPhoneSpeaker、HumanVision、4G回線などを使い機能を実現していきます。

これらを組み立てた現状の自作ロボットです。

今後はこのロボットを組み立てて、大垣一周を実験するそうです。

発表は以上です。



トイレの神様



人間の代わりにロボットが個室のひと時を見守ってくれるシステムです。



トイレの中にロボットを配置することで、家族の見守りや悩み事の相談にのってくれるというものです。

・ トイレ内での悩み相談 (心の健康)
・ トイレの回数/時刻を記録・統計可能に (身体の健康)
・ 人間が入れない場所への見守り (子供への励まし)
・ トイレでの緊急時の対応 (年配者の事故、紙がない!)

この自作便座にはセンサーが入っていて、人間がトイレに座っているかどうかを確認することができます。





ハッカソンの二日間で作り上げた、センサー付き自作便座

システムの全体図です。



発表は以上です。

続いて審査員からの質問です。


Q:トイレは非常にプライベートな空間だと思うのですが、プライバシー設計はどうなっていますか?

A:トイレで交わす会話は他人には見えないようにする予定です。



しりとりエンタメロボブラザーズ(仮)



Sota、Nao、Pepperの3体のロボット同士が「しりとり」で競い合うというものです。BB-8はそれぞれのロボットの前に移動し、しりとりの順番を教えてくれる役目です。

BB-8が来た順にしりとりをするNAOとPepper。写真の外にはSotaもいます

発表は以上です。

続いて審査員からの質問です。


Q:ロボット同士のしりとりは、終わるんですか?

A:基本的には終わらないのですが、延々と続くのもありかと思ってます(笑)



BarSota



Sotaがバーテンダーを務め、雑談したりあなたにあった音楽をチョイスします。コンセプトは「バーテンダーロボによる上質なおもてなし」。紳士淑女に癒しを提供する、頼れる未来のダンディロボ君です。





見た目もダンディなSota君

ダンディな言葉であなたを癒したり、時事ネタにも詳しいのでどんな会話にも対応できます。落ち込んだ時には最適な音楽をチョイスして、もちろんレディーファーストなダンディロボ君です。

全体構成です。

・ DataSpiderで様々なAPIを連携することでSotaの頭脳に
・ 性別、年齢、(今回は実装できなかった)笑顔認証と、Sotaの認証機能とKintoneに用意するユーザDBを最大限活用し、”あなただけ”の接客
・ DataSpiderのダンディ辞書と、DocomoAPIによる上質でダンディな会話



デモはちょっとぎこちないところはあったものの、成功でした。

発表は以上です。

続いて審査員からの質問です。


Q:大変だったところや工夫したところを教えてください。

A:笑顔認識だけ使えなかったけれど、ほかは実装できています。ネットワークが不安定になるとサービスができなくなる点に苦労しました。

Q:「ダンディ辞書」は具体的にどこがダンディなんですか?

A:ドコモのAPIの言葉が丁寧すぎたので語尾を「だぜ」とかにする工夫をして、dataspaiderで実装しました。接客時にダンディな声色を変えたりもしました。



ぼぼっとナビ by 市川電産



リオオリンピックの閉会式を取り上げたCNNウェブ記事で「さようならリオ、こんにちはロボット」という一文がありました。きっと2020年東京オリンピックの頃には至るところでロボットが活躍している時代になっていることでしょう。

でも、日本のその地域ならではの伝統も大切にしたいですよね。そこで古くて新しい、伝統とロボットを掛け合わせた「RoboTraditional!」を提案します。


さるぼぼに扮したBB-8とSotaが現地のコンシェルジュや現場案内人役を務めます。

システムの全体図です。

Twitterから「温泉」や「栗きんとん」のような岐阜に関するキーワードを抽出し、kintoneにデータを蓄積します。node.jsで観光ルートの重み付けと案内時間の制御を行い、スフィロが地図上を実際に移動して、Sotaが音声で観光案内を行います。それぞれのロボットのいいところを活用したシステムです。

さるぼぼに扮したBB-8ちゃんは、地図の上をルート案内に沿って動きます。

実際の地図の上を動いてルート案内を行うBB-8

Sota君もカワイイ衣装を着せてもらいました。似合ってるね!

発表は以上です。

続いて審査員からの質問です。


Q:苦労したところを教えてください。

A:地図の上を動くBB-8を制御するのに苦労しました。向いている方向が違うと違うところに動いていってしまうので。



OKAN by Carnation



必要もないのに忘れ物していないかいつも聞いてくる、少しおせっかいで憎めないオカン。こちらをPepperで再現してみました。

システムの全体図です。

グーグルカレンダーに予定と必要な持ち物を登録すると、当日にオカンに扮したPepperが確認をしてくれます。



パーマ頭にヒョウ柄の洋服が、予想以上にオカンな風貌。Pepperが話す言葉ももちろんオカン語です。

オカンPepper

発表は以上です。

続いて審査員からの質問です。


Q:発展できたらいいなという構想を教えてください。

A:天気予報情報を取得して「今日は雨だから折りたたみ傘持ってきなさい」とかをやりたいです。

Q:カツラとヒョウ柄洋服、オカン語でオカンを表現しましたけど、他のオカンらしくする候補はありましたか?

A:手にオタマを持たせたかったけど、Pepperがにぎれなかったので断念しました。



あいぼっと



自分のスマートフォンにアタッチメントをつけることでスマホがロボットになる、その名も「あいぼっと」です。

例えば、気になるあの人の好きや嫌いをあいぼっとが答えてくれます。これはTwitterのタイムラインを解析して何が好きか嫌いかを理解しています。

運転中のあいづちもしてくれます。

システムの全体図です。

今回は、会場であるソフトピアジャパン内にあるものづくり空間「Fab-core(ファブコア)」の3Dプリンターやレーザー加工機でスマホにぴったりなサイズのアタッチメントを作成しました。

ハッカソンの2日間で作り上げたアタッチメント

発表は以上です。

審査の間は2日間の疲れを癒す懇親会です。



みんなで乾杯!



魚や味噌カツといった地域色のある食事でした



いい笑顔です



おいしい料理に笑みがこぼれます

以上で今回の作品の発表は以上となります。




審査結果発表



kintone賞「OKAN by Carnation」







DataSpider賞「BarSota」







DataSpider つっきー特別賞「OKAN by Carnation」







審査員特別賞「トイレの神様」







審査員特別賞「あいぼっと」





最優秀賞「BarSota」








各審査員からの総評です。

大沢香織氏(株式会社トーキョーストーム)

たびットさんは完成していたらすごくいい企画でした。トイレの神様は、便座システムが特に素晴らしいと思いました。どちらかというとIoTイベントに適していると思うので、IoTのハッカソンに出してみてはいかがでしょうか。

マツモトサトシ氏(株式会社Misoca)

みなさま2日間で作品を形にしていきましたが、今後実際にいろいろやるときは自分達だけでなく相談してみんなの力を使ってやっていくといいと思います。今日を次に繋げていっていきましょう。

北構 武憲(ロボットスタート株式会社)

複数台ロボットをつかおうというチームが多く、その心構えが素敵だと思いました。大垣は初めて来たのですがとても熱気のある場所で、来て良かったです。

レポートは以上です。みなさま2日間お疲れ様でした!

ロボスタ北構の感想

審査員でおじゃまさせていただきましたが熱量の高いハッカソンで、発表を見ていて楽しかったです。個人的に「BarSOTA」はこのまま作り込んでいけば、実際のBarで使ってもいいクオリティと思いました。ロボットがヒッチハイクをするアイデアの「たびット」も個人的に好みでした。

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北構 武憲

本業はコミュニケーションロボットやVUI(Voice User Interface)デバイスに関するコンサルティング。主にハッカソン・アイデアソンやロボットが導入された現場への取材を行います。コミュニケーションロボットやVUIデバイスなどがどのように社会に浸透していくかに注目しています。

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