スターウォーズ・ファン必携アイテムBB-8とフォースバンドの魅力と楽しみ方~スフィロ社CTOに聞く~開発の経緯、プログラミングアプリとSDK

9月末に発売され、スターウォーズやロボット・ファンの間で話題となっているSphero(スフィロ)社の新製品「BB-8™ スペシャル・エディション バトルウォーン」(以降バトルウォーンと表記)と「フォースバンド™ by スフィロ」(以降フォースバンドと表記)。
私も楽しんでいますが、遊ぶたびに新しい発見がたくさんあって面白いですよ。
そうそう、BB-8の動作を無料のスマートフォン・アプリで簡単にプログラミングできるって知っていましたか?
更に、なんとフォースバンドのSDKが近々に公開される予定のようです。
そんな盛りだくさんでレアな情報をまとめて全部紹介します!

ロボスタ編集部は先日、来日中のSphero社、共同創設者であり、CTOのイアン・バーンステイン(IAN BERNSTEIN)氏にインタビューする機会を得ました。「BB-8 by スフィロ」や「フォースバンド」誕生の経緯、プログラミングできるアプリについて、そもそもどういうしくみでBB-8は前進しているのか、などを聞きました。

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Sphero社のCTO、共同創設者のIAN BERNSTEIN氏




BB-8 Battle-Worn と Force Band

神崎(ロボスタ編集部)

今回、来日した目的から聞かせてください

バーンステイン(敬称略)

今回の来日の目的は、日本のマーケットを理解すること。それと、BB-8バトルウォーンとフォースバンドのプロモーションです。日本の皆様に、このふたつの製品の魅力を知って欲しいと思います

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神崎

なるほど。バトルウォーンとはウェザリング塗装されたBB-8ですね。私はスタンダードのBB-8を持っていますが、バトルウォーンもとても格好いいですね。では早速、この製品の特長を教えてください

バーンステイン

バトルウォーンは、戦い抜いたBB-8の姿を表現したものです。フォースバンドとのセットで「BB-8™ スペシャル・エディション バトルウォーン」(税抜:24,800円)だけの特別なバージョンになっています。BB-8の性能はスタンダードバージョンと同じです。パッケージの中には専用のブリキ製コレクターズボックスが入っていて、そこにBB-8と非接触式充電ユニットがぴったりおさまっています。そのため、ボックスに入れて持ち運ぶことができて便利です。

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神崎

映画に登場したBB-8に似て、リアルですね

バーンステイン

最初のBB-8 by スフィロ開発時からこのバトルウォーンのデザインも発売したかったのですが、完成度を上げるには開発に時間がかかることもあって、初代BB-8の発売日程に間に合わせるために、あのデザインのみに落ち着いた経緯があります。ただ、今回、スペシャルバージョンとしてバトルウォーンを皆さんにお披露目できてとても嬉しいです。



「BB-8™ スペシャル・エディション バトルウォーン」は、ヨドバシカメラなどの家電量販店の店頭やオンラインショップ、東急ハンズ、ロフトなどの店頭、更にはAmazon、SoftBank SELECTIONなどのオンライン上で販売されています。また、アップルストアではアップルストア限定のバージョンを販売しています。外箱が白く、中のコレクターズボックスが黒い等、パッケージ関連のデザインが少し異なりますが、中身の製品は同じものです。



それぞれの製品の特長



BB-8と一緒に「スター・ウォーズ/フォースの覚醒™」を観よう

「BB-8 by スフィロ」はスマホで操作することができる玩具の一種で、小型のドロイドです。映画そっくりの動きで走ったり回ったり。著者もお気に入りで息子と一緒に楽しんでいます。こんなに小さなボディですが、プロジェクタ機能も付いています。

実はこの夏、新しい機能拡張も行われていて、そのひとつが「一緒に映画を観よう」(Watch With Me)機能です。BB-8を充電器にセットしてスマートフォンと連動した状態で、一緒に映画「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」を観ると、シーンに合わせてBB-8が反応して、一層楽しく観賞できる趣向となっています。これはスタンダードとバトルウォーン、どちらでも同様に機能します。

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フォースバンドの特長と機能

フォースバンドは新発売の製品で、こちらは単品で購入することができます(単体:9,800円(税抜))。スタンダードとバトルウォーンのBB-8、どちらにも対応しています。
では、フォースバンドにはどのような楽しみ方があるのでしょうか。
まず次の3つの主要な機能があります。

■ ドロイド・コントロール・モード
スマートフォンで操作するかわりに、フォースバンドを装着した腕をプッシュしたりプルしたり、ジェスチャーでBB-8を操縦できるようになります。スマートフォンなしに直感的に操作できるのはとても気持ちいいのです。自分の後をBB-8がついてくるモードもあって、更にBB-8への愛着がわいてきます。なお、BB-8以外にも、「SPRK+」や「Ollie」といったSphero社のBluetooth Low Energy (Bluetooth Smart)対応のロボットもコントロールできます。


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スマホなしで、ジェスチャーだけでBB-8を操作できる。

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バーンステイン氏とBB-8の動きを見ていると本当にフォースを駆使しているかのようだ

■ コンバット・トレーニング・モード
いわゆる大人も遊べる「なりきり」バトル遊び。腕を大きく振ったり、小刻みに動かすとジェスチャーに合わせてフォースバンドから様々なサウンドが鳴ります。例えばライトセーバーに設定して振って楽しんだり、タイファイターに設定して腕で飛行音やシューティング・サウンドが楽しめます。とはいえ、どんなサウンドでも出せるわけではありません。次に解説する「ホロクロン」の捕獲と関連しています。



■ フォース・アウェアネス・モード
フォースを使って身の回りにあるデジタル「ホロクロン」を見つけ出し、アプリ内にコレクションします。フォースバンドを装着してこのモードで待機していると「フォースに乱れを感じる」という声が聞こえてきます(バンドから)。そこでバンドを前にかざしてゆっくりと周囲を探索するとブルブルと振動を感じてホロクロンをバンドの中に捕獲できます。アプリを起動したスマートフォンを近づけるとアプリ内にホロクロンを移動して保存することができます(現時点で70種類)。

ホロクロンは武器、兵器、乗り物、スターウォーズの名シーン、キャラクター等さまざま。ホロクロンとして捕獲した武器や乗り物はアプリの「アイテム保管庫」に保存され、保管庫でサウンドや画像を楽しむことができるほか、コンバット・トレーニング・モードでブラスター、ライトセイバー、飛行機などのサウンドを利用することができます。

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著者がゲットしたホロクロンの例。ミレニアムファルコンとチューイ御用達のボウキャスター。捕獲した武器や戦闘機はアイテム保管庫に保存され、コンバットトレーニングでサウンドを堪能できる

これら3つの特長のほかに、スマートフォンのアプリを使って「フォース・トレーニング・モード」などが楽しめます。例えば、ミレニアムファルコン内で襲いかかってくるラスターから、フォースバンドを使って画面内のBB-8を操作して逃げながら、実際のドロイドの操作方法を学ぶことができます。

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BB-8とフォースバンド開発のきっかけ

神崎

BB-8 by スフィロを開発することになった経緯をおしえてください

バーンステイン

米国にはスタートアップにメンタリングや投資をして育成する「アクセラレーター」がいくつかあります。そのひとつであるTechStarsを通して、私達はロボットボールの原型を完成させ、最終日のデモデーに発表しました。



BB-8はボール型のボティを回転させて移動しますが、常に上部には頭がちょこんと乗っかっていてとても愛らしいスタイルです。そのボディの部分のベースになっているのが、米国など海外で人気のボール型の「Sphero 2.0」や最新型の「SPRK+」です。

バーンステイン

ドロイドやロボットにとってキャラクターはとても重要だと思っています。
以前、Sphero2.0をイベントで披露しているとき、子供達がたくさん集まってくれて、ひとりの子供がとても欲しがったのでSpheroをとっさにひとつプレゼントしました。しかし、後になってプレゼントしたSpheroが新品ではなく、自分がずっと愛用していた愛着のある固体だったこと、つまり間違ってプレゼントしてしまったことに気付き、とても寂しく感じました。そんなこともあってロボットやドロイドには単なるオモチャ以上のパーソナリティを感じていることにそのとき自分自身ではっきりと気付きました。

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そこで、私たちはSpheroを最初に登録する際、ストーリーを作ってドロイドひとつひとつにユーザーが名前とつけてキャラクター作りをすることにしました。
その結果、今までよりユーザーはドロイドを長く使ってくれるようになりました。
そんなとき、2014年にストーリーやキャラクターではナンバーワンの実績を持つディズニーによる初めてのコーポレートアクセラレーター「2014 DISNEY ACCELERATOR」があると聞き、学べることも多いのではないかと思って応募しました。その結果、厳しい審査を通って10社に選ばれました。

神崎

それはすごい!! アクセラレーターはディズニーのスタジオ構内で行われたんですか? また、そのときのメンターはディズニーの人ですか?

バーンステイン

ディズニー本社から数分の場所にあるクリエイティブキャンパスで、4ヶ月間おこなわれました。ディズニーの人のほかにディズニー以外で関わっている人たちもいました。投資家やクリエイティブ関連など様々な人たちがメンターとして参加していました。そのときにウォルト・ディズニー社の社長のボブアイガー氏(Robert A.Iger氏)と話す機会がありました。アイガー氏はSphero 2.0のことを知っていて「ちょっと観て欲しいものがある」といって「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」のプロップのスケッチを見せてくれました。映画が公開される一年以上前のことです。

神崎

それがBB-8だったのですね

バーンステイン

Sphero 2.0に似てるとは思いましたし、アイガー氏もそう言っていました、「何かできないか?」と。その時点ではプロップといってもスケッチをチラリとみせてもらっただけでしたので、とにかく忘れないようにと戻ってすぐに、記憶からそのドロイドをiPadに書き写しました。新作映画の極秘キャラクターだったこともあり、メンタリングを受けていたほかの9社が帰ったあと、人目を避けて夜中のうちにヘッド部分(頭部)のデザインと設計を行い、持って来ていた3Dプリンタで出力しました。そして、Spheroにヘッド部分を装着し、スターウォーズの壮大な音楽をBGMに入れて動画を撮影し、次の日の朝にはアイガー氏に動画ファイルを送りました。それが2014年の夏のことです。

神崎

こうして「BB-8 by スフィロ」のプロジェクトがはじまったのですね

バーンステイン

そうです。そして、それは私達が開発するロボットに最高のキャラクター性が与えられることになった瞬間でした。



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神崎

フォースバンド開発のきっかけは?

バーンステイン

フォースバンドのアイディアは、コロラド州ボルダーのSphero本社にほど近いラボ(研究所)で生み出されました。ラボではハード、ソフトに限らず様々な技術を開発していますが、その中のひとつにウェアラブルなデバイス(身につけられる機器)で、ドロイドが操作可能なものがありました。それを操作するジェスチャーやスタイルをみて、ある人は太極拳みたいだ、と言いましたが、ある人は「フォース」みたいだと言いました。そこで、BB-8をフォースで操作できるリストバンド型デバイスがあったら面白いんじゃないか、ということになったのです。




BB-8の動きをプログラミングするアプリ

冒頭でチラリと紹介しましたが、実は「Lightning Lab」(ライトニング・ラボ)というスマートフォン用アプリを使うと、SPRK+やBB-8を自動操縦するプログラミングができます。動作を予め設定しておく、と言った方が適切かもしれませんが。

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「Lightning Lab」はiPhoneやAndroid用のアプリで無料でダウンロードできます。実際にやってみるとドラッグ&ドロップ(タップしてドロップ)と時間やカラーの設定を登録し、実行をタップするとBB-8はそのとおりに動作しました。

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BB-8のボディの発光カラーもこの通り簡単に変更して登録できる

どのくらいの速度で×秒間前進してストップ、×度回転して、また前進×秒、などのプログラミングがこのアプリだけで可能です。米国、オーストラリア、そして日本も含めて約7,000校の学校で使われています。子供はスターウォーズが好きなのでSPRK+ではなく、BB-8を使っている学校もあると言います。遊び感覚がきっかけで、プログラミングや数学、ソーシャルスキルなどを学ぶことができます。ドロイドが行って戻ってくるという動作だけでも実は慣性力を考慮しなければいけなかったり、とロボットに関する様々な勉強ができます。

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プログラミングしたいドロイドを選択し(左)、ドロイドに指示する動作(前進/スピード/秒数、回転など)を自由に設定できる(右)

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スピードの設定画面(左)、回転する角度を指定している画面(右)。UIはとても解りやすい



フォースバンドのSDKが登場予定!! IFTTTのレシピも作成可能

また、「IFTTT」のレシピを作成して、フォースバンドのアクションでFacebook、Evernote、Twitter、Dropboxなどを制御することができます。
またフォースバンドのプッシュやブルのジェスチャーで、スマートホーム対応のサーモスタット機器と連動して、室内の温度を変更するなどIoT連携も可能です。Spotify(スポティファイ)で音楽のストリーミングを行うこともできます。
さらに今後は、フォースバンド向けSDKも公開する予定なので、多くの開発者が自身のアプリとフォースバンドを連携した機能を追加していくことができるようになります。他のロボットやデバイスと連携したり、操作したりできるようになるかもしれません。

ちなみに、既にSphero用のSDKは公開されていて、「http://sdk.sphero.com/」で確認することができます。

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IFTTTのレシピを作成しているところ

フォースバンドのハンド・ジェスチャーによって、スマートホームやIoT機器が操作できるようになれば、新しい操作方法や活用の広がりがみられるかもしれません。



そもそもBB-8ってどうやって移動してるの?

ところで、BB-8はどうしてこんな奇抜な動きで移動することができるのでしょうか。
どんなしくみで動作しているのか、その答えはBB-8のボディの基本となり、教育用としても利用されている「SPRK+」が教えてくれます。スケルトンモデルのため、その構造と移動するしくみがよく解ります。

バーンステイン

このボールの中にはとても小さなセグウェイのような機構が入っています。下部に白い2つの大きなホイールがあって、これが駆動して前進や後進を行っています。このホイールをボールに押しつけたりする役目が上の青いホイールです。青いホイールとスプリング構造によって、下のホイールをボールに強く押しつけて駆動力を伝えます。

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神崎

BB-8の頭部はどうやって常にボールの上に乗っているのですか?

バーンステイン

それは・・フォースのチカラですね。
冗談です(笑)。駆動部と反対に内部では常に上部に来るブラケットがあって、そのブラケットに磁石でヘッドを吸着させています。もちろんボディには加速度センサーやジャイロが内蔵されていて、姿勢をコントロールしています。



現在、Sphero2.0やSPRKは東京ドームシティの宇宙ミュージアム「TeNQ」(テンキュー)や、ハウステンボスのロボットの王国でも体験することができます。「TeNQ」の「GO!GO! sphero TeNQ」ではSpheroを操作して、協力してゴールに導き、制限時間内にコースをクリアする楽しいイベントに参加することができます。

ちなみにSPRK+は水の中も移動できる優れもの。日本でも子供達が学んで遊べる玩具として、更には大人達にとってもエンターテインメントやビジネスに役立つソリューションとして活用できたら素晴らしいですね。
イアンさん、忙しいなか、時間を頂きましてどうもありがとうございました。

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関連サイト
Sphero
DISNEY ACCELERATOR

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神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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