【羽田卓生のロボットビジネス入門vol.4】いま、日本で沸騰するロボットブームの現状
いま、第三次ロボットブームと言われている。ただ、その実態を示すデータは意外と少ない。
ロボット関連の報道や、人づてにその状況を探っているのが現実ではなかろうか。
今回、わたくしが所属するアスラテックが公開した「国内のロボットの開発動向」(https://www.asratec.co.jp/2016/11/10/9318/)を元に、その実態を把握したいと思う。
成長を続けるロボットビジネス
2016年に国内で製作された新サービスロボット数は10月末時点で「91機種」。11月~12月も同様のペースで推移した場合、2016年末にはおよそ109機種に届く見通しとなっている。
100を超えるロボットが世に送り出されてるのだ、まさにブームと言える。
2016年の新サービスロボットの機種数は昨年比で「133%」となる見込みだ。
過去2年では、2014年は67機種、2015年は82機種で、年間の新規サービスロボット数の推移を示したグラフが図1となる(2016年は予測値)。
2016年の新しいサービスロボットの機種数は昨年比で133%となり、調査を開始した2014年から引き続き高い成長を続けていることを示した。
見守り・コミュニケーション向けロボットが成長をけん引。構成比も15%に及ぶ。
2016年に開発されたサービスロボットをジャンル別に分けると、図2のようになる。
サービスロボットのジャンル別の割合では、「見守り・コミュニケーション」が最も多く、全体の約15.4%に及んでいる。2位以降、「アミューズメント」約13.2%、「介護・福祉」約12.1%、「清掃」約11.0%と続く。20ジャンルのうち上位4ジャンルで全体の半分以上を占める結果が明らかになった。
ジャンル別の新規開発サービスロボットの機種数について、2014年以降の年間推移を示したものが図3となる(2016年は予測値)。
目立った伸びを示したのが「見守り・コミュニケーション」ロボットで、2014年に2機種、2015年に9機種だった新規開発数は、2016年ではおよそ17機種が見込まれている。これは前年比で約187%、2年前との比率は約840%となっており、「見守り・コミュニケーション」ロボットの躍進がデータのうえからも明らかだ。
2016年以降は、ただ、ロボットビジネスはさらに細分化することは間違いない。特に、日本は2020年の東京オリンピックを控えており、そこに合わせた開発競争は、当面は続くであろう。一方で成長が続くのかを冷静に見守る必要はある。
ロボットビジネスの競争激化の兆し
2016年に入り世界中でロボットの開発競争は爆発的に加速してきている。
ロボットビジネスへの新規参入が、ゴールドラッシュさながらに急増している中、どのロボットジャンルのどんな役割で参入するのかを明確にする必要がある。
どんなロボットの、どんな仕事をするのかを、旗印を明確にできないと、厳しい競争にさらされることは間違いない。この連載の第三回で、ロボットビジネスの代表的役割はご紹介した。こちらもぜひ参考にしていただきたい。
1. 企画(Planning)
2. 要素技術(Elemental technology)
3. 製造(Manufacturing)
4. 運用(Operation)
5. 保守(Maintenance)
6. 販売(Sales)
7. コンテンツ・アプリ(Contents・Applications)
8. アプリプラットフォーム(Application platform)
2020年のサービスロボットは1兆円の市場規模
では、ロボットにはどんな分野があって、どんな市場規模なのかを説明したい。
これに関しては、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機)が、2035年に向けたロボット産業の将来市場予測を発表しているのを参考にいただきたい。
http://www.nedo.go.jp/content/100080673.pdf
この予測では、20ジャンル28項目に分類されている。また、それぞれの2035年までの将来市場予測も掲載されている。
下記には、中期目標になるであろう2020年の数字をピックアップしてみた。
▽ 2020年の将来市場予測
2020年のロボット市場は、サービスロボット分野だけでも、1兆円規模を超える見通しとなっている。現在の産業用ロボットと市場規模では肩を並べる規模になる。
このNEDOの予測をさらにどう分析して考えるかは、各社の知恵比べになるだろうか、大きな市場が出現すると考えられている。
メディアでは、多く取り上げられがちな、ホビー、見守り・コミュニケーションジャンルを足しても、727億円。市場予測の全体の7%程度に過ぎない。
そう、いわゆる「ロボット市場」は、大きな可能性を秘めているし、検討すべきジャンルは多くあるのだ。
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羽田 卓生1998年にソフトバンク入社後、メディアビジネスや通信ビジネスに主に従事。2013年のアスラテックの立ち上げ時より同社に参画。現在、事業開発部門の責任者を務める。任意団体ロボットパイオニアフォーラムジャパン代表幹事。