【ATRオープンハウス2016 レポートvol.2】ロボットの目指すべき役割は「人と人を繋げること」

塩見エージェントインタラクションデザイン研究室 室長 ATRオープンハウス2016
日本の科学技術をリードするATRが「ATRオープンハウス2016」を11月10日(木)〜11日(金)に開催しました。ATRオープンハウスは、毎年開催されているイベント。私もロボスタ大阪特派員として、昨年に引き続き2度目の訪問を果たしました。今年は3回に渡ってレポートしていきます。

ATRオープンハウスでは、今回も200名近い研究者(外部パートナー等も含めて)の研究成果が発表されています。とても2日程度では全てを見て回れないことは昨年学習済みですので、独断と偏見に基づき、筆者が興味のあるところだけピックアップしました。

ロボットが介在する保育・介護支援への取り組み

塩見エージェントインタラクションデザイン研究室 室長 ATRオープンハウス2016

知能ロボティクス研究所 エージェントインタラクションデザイン研究室 室長 塩見昌裕氏

「ATRオープンハウス2016」の目玉コンテンツのひとつが、知能ロボティクス研究所の塩見昌裕氏のご講演。本講演では、ユビキタスネットワークロボット技術を利用した、保育・介護支援に向けたロボットの開発と、その成果について詳しい説明がありました。


保育に関する現状
塩見氏は、ロボットを利用した保育支援の実証実験を行うために、通信教育で保育士の資格を取得されたそうです。保育支援ロボットに賭ける思いの強さが伝わってきます。


センシングによる保育支援
講演タイトルにある「介在するロボット」というのがキーワードの一つだそう。ロボットの役割は「人と人を繋げること」と強調されていました。人とロボットでは得意なことが違う、だから人の役割をロボットに置き換えるのではなく、人と協働するロボットを実現していきたいという考えです。具体的には、保育士さん達が時間外にまで取り組んでいる保育日誌の記録を半自動化するような取り組みがあるようです。


長井研究室 ChiCaRo

子育て支援ロボット「ChiCaRo」(電気通信大学 長井研究室のサイトより引用

乳幼児と関わるためのテレプレゼンスロボットとして電気通信大学 長井研究室のChiCaRo利用し、子どもたちの気を惹きつけられる為の実験を繰り返しています。怖がってしまう子供たちも一定数いるそうですが、子供が飽きずに惹きつけられる点で「ChiCaRo」は既存のテレプレゼンスロボットよりも高評価だったそうです。


高齢者支援に関する研究
ロボットを研究していると、ロボットを利用する人のことばかり気にしがちですが、実際にはロボット利用者の周囲の人にも利便性がないといけないとのことで、ロボットを利用して高齢者を支援する場合には、介護者の立場にも気を配る必要があります。


移動支援を行うロボット
高齢者を支援する時には、移動支援の負担が大きく、ロボットの活躍が期待される場面です。介護者の目線では安全に移動支援することが大切ですが、介護される高齢者にとっては必ずしも「安全は安心ではない」とのこと。人に車椅子を押してもらうと安心できますが、同じスピードでロボットに押されると途端に不安になってしまうこともあるそう。ロボットが「大丈夫ですか?」等の声掛けを行い、すれ違う人に対してもそうですが、廊下の狭い部分等では位置情報に連動してロボットがちゃんとセンシングしているということを利用者に示すことで信頼感が得られるそうです。本稿では掲載できないスライドでは、車椅子ロボットが自動運転する時に、進行ルートを赤いライトで照らしている様子が示されていました。


ロボットが介在する保育·介護支援への取り組み-まとめ
塩見氏の発表をまとめると、ロボットは「人と人を繋ぐ為に介在する存在」であるべきということ。保育の現場でも介護の現場でもロボットが介在することによって今までにない価値やサービスを実現できます。ロボットは従来の道具にはないコミュニケイション能力を備えているので、利用者自身もロボットを安心して使えるようにロボットに慣れていくことが大切であると理解しました。またロボットは、ロボット利用者の周囲の人々(保育士や介護士)にとってもメリットがあるように設計、運用されることが必要で、それが達成できてこそ社会がロボットを受け入れていくだろうとのことでした。

続きの、レポートvol.3では、知能ロボティクス研究所 ネットワークロボット研究室 室長の宮下 敬宏氏のインタビューをお届けする予定です。

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ふじわら@ロボットジョーズ

ロボットジョーズのCEO 兼 Pepperの話し相手。大阪ペッパー友の会のメンバーでもあります。ただ本命ロボットはBlue Frog Robotics のBUDDYと心に秘めています。

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