【中国ロボット市場最前線 vol.05】中国で注目されているロボット専門会社
ロボットブームが本格的になりはじめた中国では、いったいどんな会社が話題になっているのか、ロボスタ読者には関心をお持ちの方がたくさんいると思います。
中国のロボット業界は今、「戦国時代」とも言える激変環境にあり、業界地図も日々変わったりしています。今回ご紹介するロボット専門会社が今後、激しい競争の中で勝ち抜けるかは断言できませんが、「現時点」での情報としてその基本情報、技術実力、製品ラインなどをご紹介します。
1.瀋陽新松(Siasun):中国ロボット会社と言えばこの会社
瀋陽新松は、中国科学技術研究院瀋陽自動化研究所から生まれた中国ロボット産業のリーディングカンパニーであり、中国国産ロボット領域の№1とも言えます。上場銘柄の名称は、「機器人(ロボット)」とネーミングされており、中国ロボット業界での地位を物語っています。
【基本情報】
会社の基本情報は、以下の通りです。
会社名称 | 瀋陽新松機器人自動化股份有限公司(英字:Siasun Robot & Automation Co., Ltd. 略称:瀋陽新松) |
---|---|
会社設立 | 2000年4月に設立し、2009年10月に上場。 |
拠点情報 | 本部は瀋陽、国際本部は上海。瀋陽、上海、杭州、青島にロボット産業園区を保有している。 |
売上規模 | 2015年度の売上高は、16.9億人民元で、純利益は3.9億人民元。 |
従業員数 | 2015年12月31日時点で3097人となり、そのうち技術者は2033人で全体の約66%を占めている。 |
特許情報 | 2015年までは143件の特許を保有。そのうち発明71件、実用新型59件、外観設計13件。 |
業界地位 | 中国国産ロボットのリーディングカンパニーとして中国ロボット産業連盟、及び中国ロボットイノベーション連盟の理事長(会社)を務めている。 |
【技術領域】
技術的なコアコンピテンスは、以下の領域に集中しています。
- 産業用ロボット制御技術
- スポット溶接ロボット技術
- アーク溶接ロボット技術
- 運送・組み立て型AGV技術
- レーザー加工ロボット技術
- クリーンルームロボット技術
- 知能測量・モデリング・加工一体化技術
- 知能サービスロボット技術
- 直駆動型真空ロボット技術
【主要業務】
主要業務は、ロボット中核部品、系列ロボット、特種ロボット及びインダストリー4.0ソリューションの4つに分けられます。
中核部品 | コントローラ、サーボモータ、減速機などをカバーし、ロボットのみならず、工作機械、電動自動車などにも利用されている。 |
---|---|
系列ロボット | 産業用ロボットは、溶接、組み立て、研磨、パレタイジング、塗装、プレスなどの領域をカバーしている。クリーンルームロボットは、主に半導体メーカーに導入されている。サービスロボットは、公共機関、銀行、レストラン、ホテル向けの展示・受付ロボットや医療支援ロボットなどがリリースされている。 |
特種ロボット | 特別な領域における装備自動保障などの特種ロボットの研究開発が進められている。 |
インダストリー4.0ソリューション | デジタルファクトリー、倉庫・物流自動化設備、軌道交通自動化などのソリューションがラインアップされている。 |
【製品ライン】
瀋陽新松は、中国ロボット専門会社の中でもっと豊富なロボット製品を持っている会社です。工業ロボット、AGV、クリーンルームロボットロボット、人型ロボットなど幅広く製品を出しています。
2. 安徽埃夫特(Efort):産業用ロボットの応用から生まれたロボットメーカー
安徽埃夫特の事業の発展は、ロボット専門会社の中では特別なアプローチになっています。会社は中国自動車メーカー奇瑞自動車(Chery)の一部門から生まれ、自社の産業自動化(産業用ロボット応用)を経て、ロボットの研究開発に変身した会社です。特に塗装、金属加工領域では中国産業用ロボット業界の先頭を走っています。
【基本情報】
会社の基本情報は、以下の通りです。
会社名称 | 安徽埃夫特智能装備有限公司(英字:EFORT Intelligent Equipment Co., Ltd. 略称:安徽埃夫特) |
---|---|
会社設立 | 2007年8月に設立し、本部は安徽省撫湖市、上海、東莞、重慶に拠点を持っている。 |
従業員数 | 500人規模で、そのうち技術者300人(外国籍100人程度)。 |
業界地位 | 中国ロボット産業連盟の副理事長を務める会社であり、国家のロボット基準の策定にも参加している。中国ロボット産業区域の集中的発展重点企業でもある。 |
その他 | 2015年にイタリアの塗装専門会社CMAを、2016年にイタリアのEVOLUT会社を買収。 |
【技術領域】
- 主要領域は、通用ロボット、塗装ロボット、金属加工ロボット、及び自動車自動化装備にフォーカスしている。
- 海外ロボット企業の買収に伴い、イタリアに知能塗装ロボットR&Dセンター、及び知能ロボット応用センターを保有。
- 中国初の165kg搬送可能ロボットの研究開発に成功し、中国ロボット企業の創新記録を刷新。
- 中国工程院メンバー(Academician of China Engineering Academy)蔡鶴皋院士ステーション、及び哈爾賓工業大学ロボット研究所との共同研究開発センターを保有。
【製品ライン】
ロボット製品ラインには、主に工業ロボット、買収した会社CMAの製品、及び自動化装備などがあります。
3.康力優藍(Canbot):コミュニケーションロボットのリーディングカンパニー
康力優藍は、中国コミュニケーションロボットのリーディングカンパニーであり、幼児教育、知的開発、教育娯楽、受付案内、お年寄り付き添いなど知能ロボットの研究開発・生産・販売事業にフォーカスしています。
【基本情報】
会社の基本情報は、以下の通りです。
会社名称 | 北京康力優藍科技有限公司(英字:Beijing Canbot Robotic Technology Co., Ltd. 略称:康力優藍) |
---|---|
会社設立 | 2006年に設立し、本部は北京、深センに拠点を持っている。 |
業界地位 | 中国初のISO9001認証取得したサービスロボット企業。中国工業と情報化部が評価されたロボット企業Top10。 |
【製品ライン】
ロボット製品ラインには、デスクトップ玩具型ロボット「Copycat」、日常会話・幼児教育・家電制御・遠隔地コントロールなどの機能を備えた家庭用知能ロボット「小優」(ショーユ―:U03S)、と商用サービスロボット「優友」(ユーユー:U05)がリストアップされています。10年間の研究開発を経て、これらの製品のリリースを確実に果たしたのです。
- 2008年8月に、家庭用知能ロボットU01リリース
- 2009年4月に、デスクトップ玩具型ロボットCopycatリリース
- 2011年3月に、アンドロイドOSを利用した家庭用知能ロボットU02リリース
- 2013年5月に、Linuxに準拠し、Android及びWindowsと互換性のある独自のロボットオペレーションシステムUROSリリース
- 2015年6月に、IoTを生かした家庭用知能ロボットU03Sリリース
- 2015年11月に、商用サービスロボット「優友(U05)」リリース
4.優必選(UBTech):中国知能ロボット業界のユニコーン
優必選は、人工知能、人型ロボット、プラットフォームの研究開発企業であり、独自のデジタルサーボ(Digital Servo)を武器に製品のコストパフォーマンスを発揮することにより、企業評価価値は10億ドルを超え、中国ロボット業界のユニコーンと言われています。
【基本情報】
会社名称 | 深セン市優必選科技有限公司(英字:UBTECH Robotics Corp. 略称:優必選) |
---|---|
会社設立 | 2012年3月に設立し、本部は深センで、カリフォルニア州に拠点を持っている。 |
従業員数 | 会社全体は600人規模で、そのうち500人は技術者。 | 融資履歴 | 2014年10月にRound-Aで2000万人民元調達。2015年4月にRound-A+で2000万ドル調達。2016年7月にRound-Bで1億ドル調達。企業価値は10億ドルと評価されている。 |
ミッション | ハードウェア+ソフトウェア+サービスのロボット生態圏を創り出し、普通の家庭にロボットが入ることを目指している。 |
【技術領域】
- 人型ロボットに利活用される自社独自のデジタルサーボ技術を保有している。国際同類製品と比べ、コストが三分の一程度抑えられ、同社製品の高いコストパフォーマンスを支える重要な競争力でもある。
- 独自の技術を創出する方針で、持続的な技術イノベーションを推進し、今現在70件以上の特許を保有している。
【製品ライン】
製品ラインには、人型ロボットのほか、積み木ロボットなどがあります。主力製品としてのアルファシリーズは、2016年2月7日(旧暦お正月)の中国中央テレビ春節聯歓晩会番組に540台も登場し、10億国民視聴者の目の前で集団ダンスを披露し、一気に有名となり大きな人気を浴びました。積み木ロボットのMeeBotシリーズ及びAnimal Add-Onセットは、Apple Store(実態店舗)にも入っています。
5.小i機器人(Xiao i):「考える大脳」を目指すクールベンダー
小iは、中国知能ロボット技術とプラットフォームのプロバイダーであり、ロボットの「考える大脳」を目指し、バーチャル的なチャットロボットと実体ロボットの両方に取り込んでいます。
【基本情報】
会社名称 | 上海智臻智能網絡科技股份有限公司(英字:Shanghai Xiaoi Robot Technology Co., Ltd. 略称:小i機器人) |
---|---|
会社設立 | 2009年8月に設立し、本部は上海で、広州、北京に拠点を持っている。 |
従業員数 | 会社全体は300人規模で、そのうち約200人は技術者。 |
業界地位 | 2015年のGartner各種評価では、よくXiaoiの名前が挙げられている。Hype Cycle for Smart Machines, 2015 / The Gartner CRM Vendor Guide, 2014 / Cool Vendors in Asia/ Pacific, 2013 / Cool Vendors in CRM Customer Service and Social, 2013 / Virtual Assistant Vendor Landscape, 2011など。 |
ミッション | ハードウェア+ソフトウェア+サービスのロボット生態圏を創り出し、普通の家庭にロボットが入ることを目指している。 |
【技術領域】
- Human-Machine中国語知能会話エンジン及びその中核技術
- 言語知識データベース及び百科知識データベースおよび学習能力
- 通信・金融などの分野で業界最大のデータベース
- テキスト・音声などによるフルチャネル応用実績
【製品ライン】
製品ラインは、企業向けのバーチャル知能サービスロボット(iBot Enterpriseシリーズ、 iBot Standard)、中小企業や個人向けの小 i知能ロボットクラウドサービスプラットフォーム(iBot Cloud) 、知能実体ロボット、及び知能ロボットクラウドオペレーションシステムiBot OSから構成されています。2016年10月に北京で開かれた世界ロボット大会では、知能会話ロボット開発プラットフォームとしてBots Development Platformが採用されました。知能会話ロボットの開発にかかわるSDK、開発者ポータル、Botsディレクトリ、自然言語処理APIなどが公開され、話題となっています。
6.克路德(Krund):家電メーカー、ハイアールのロボット事業担い手
克路德は、家電メーカー大手ハイアールグループ傘下のロボット専業会社であり、ハイアールのロボット事業の担い手でもあります。「AI Born for Love」の理念のもとで、家庭用ロボット、商用ロボット、特種ロボットなど様々なロボットを開発しており、ロボット業界の新鋭として注目を浴びています。
【基本情報】
会社名称 | 青島克路德機器人有限公司(英字:Qingdao Krund Robot Co., Ltd. 略称:克路德) |
---|---|
会社設立 | 2015年6月に設立し、本部は青島、北京、昆山に拠点を持っている。 |
事業連携 | ハイアール、Huawei、北京理工大学、Baiduなど中国国内企業・機構と共同研究開発を実施するほか、イタリア・日本などの海外企業・機構とも連携している。 |
【主力製品】
主力製品は、2015年8月に発表された家庭用知能ロボット「哇欧」(ワオー)であり、「Smart, Cute, Fashion」をキーワードに、家庭で必要となる機能を備えており、人気を集めています。特に「哇欧」ロボットとハイアールのある洗濯機との面白い会話ビデオ(http://www.toutiao.com/a6268494698873340161/)が発表されてから、その会話能力が視聴者に響いています。単価は1万人民元程度で、以下の機能を持っています。
- 室内環境安全チェック(温度・湿度・PM2.5チェック、お年寄りや子供などの転落有無チェックなど)
- 家電マネジメント(テレビ・空調・冷蔵庫など各種家電の制御ポータル)
- コミュニケーション相手(音声・ビデオによる自由自在な会話、及び自主学習)
- 生活アシスタント(リアルタイム的に各種クラウド情報の提供)など
【製品ライン】
上記以外にも多くの会社がロボット市場に進出しはじめています。
ロボット市場の潜在力はどれほどあるかはまだ不明ですが、ロボットの利活用に伴い、市場が徐々に拡大されることには間違いありません。十数年前の電子商取引と同じく、ロボットの利活用を推進することにより、市場そのものを作ろうとする各メーカーの思いがあるのではないか、と思われます。この意味では、混乱しながらも今後の展開は楽しみです。
ABOUT THE AUTHOR /
Dequan Tangイーパオディング株式会社代表取締役社長、北京璞華機器人(ロボット)情報技術有限公司CEO。東京・北京にてITシステム化、日中間ビジネス、グローバルビジネスコンサルティング業務に十数年間携わり、いま中国でロボットのメディア、展示、販売、研究開発を行うロボット事業、及び「個客」ビジネスの「自由自在」を支援するグローバルリサーチ、コンサルティング、インターネットサービス事業に従事。IT関連の講演・著書多数。 Email:tang_dequan@epaoding.com 微信(Wechat) ID:tomotogether