大阪南港のATCでロボットストリートが開催中、コンセプトは「人がロボットに近寄りたくなるように」
大阪南港のイベント・ショッピングモール「ATC(アジア太平洋トレードセンター)」で「ロボットストリート」というロボットイベントが12月17日(土)〜1月31日(火)の期間で開催されています。メディア向けの発表会が開催されましたので、そちらの模様をレポートします。
最初に、アジア太平洋トレードセンター株式会社 代表取締役 堀田則雄氏からご挨拶。「ロボットストリート」は経済産業省の「ロボット導入実証事業」に採択されたプロジェクトであり、外国人観光客向けのロボット活用のための実証実験が目的です。商業施設のATCとしては、オープンした免税店が、駅から遠い場所に位置しているので、ATC館内の回遊性を高める為にロボットストリートを活用していきたいとのこと。
今回の「ロボットストリート」の企画と運営を担当したのがロボットコンテンツ開発の株式会社タスカケルです。代表取締役 瀬川寿幸氏から「ロボットストリート」のコンセプトとして「明日と出会える街」という説明がありました。
ロボットクリエイターと、アニメ・映像クリエイターが一緒になった珍しい組み合わせのチームによってプロジェクトは進められており、ロボットとモニター画面を組み合わせたエンターテイメントが見所です。モニター画面でサイネージとして展開する映像コンテンツをアピールしながらも、ロボットコンテンツ開発の専門会社ですのでロボットの身振り手振りのモーションはレベルが高いです。外国人観光客を主な対象ということで英語話者と中国語話者を想定していて、勘違いが起こらないようにするには、モニター画面で分かり易く説明するというのは大切ですね。大阪南港ATCは、子供と高齢者をメイン顧客とした商業施設なのでロボットウケは間違いない、と自信を覗かせていました。因みに社名の「タスカケル」はロボットを楽しむ為のたし算とかけ算が由来だそう。
今回のイベントでサイズが一番大きいロボットは、「Robovie-R」です。オペレーターが、機械翻訳を利用し観光客からは見えない場所から接客を行います。
コンテンツ開発に注力したというロボットと映像の組み合わせは斬新で、ロボットの新しい楽しみ方を提案しているようでした。従来のロボットを展示するだけで満足するのではなく、楽しんで貰えるコンテンツのレベルにまで昇華できているのではないでしょうか。
ATC館内の案内をするコンシェルジェロボット「PUL」の愛称は「アンアン」と「ナイナイ」です。中国人観光客に向けて「案内」を中国語風に分解したのが名前の由来とのことでした。音声合成エンジンは株式会社ATR-Trekのものを利用しており、日本語と中国語で掛け合い行います。もともと人間らしい特徴のある音声合成エンジンをチューニングして中国人の方々にウケるようにロボットらしい味付けにしているそうです。
「人間とロボットとのコミュニケーションってハードル高いじゃないですか。その一方で、私たちは、2,3才の子供ともワンコとも、コミュニケーションは成立しますよね。それってコミュニケーション対象者に向かって腰を屈めて寄り添ってるんからだと思うんですよ」と語るのは株式会社タスカケルの足立靖取締役。
足立氏によれば、現在ロボット開発に取組んでいる技術者やクリエイターは、アトムやドラエもんに憧れてロボット開発の世界に入ってきた為、自らが掲げる理想のロボット像に縛られてしまっているとの事でした。なるほど、ロボットは完璧でなければならないとなると、現在のロボット技術だけではロボットの不出来感が目立ってしまうかもしれません。
「今回のロボットストリートでは、人が腰を屈めてロボットに近寄りたくなるようなコンセプトでコンテンツ開発を行っています。人からロボットに近寄って貰えるような啓蒙活動を世界中で行うのは困難ですが、ATCという商業施設の狭いエリアで、人がロボットに優しく接してくれて、人もロボットも共に成長し学習する機会を作りたいと思っています。」
との事でした。サービスロボットの分野は、ハードウェア開発への関心が集まりがちですが、ユーザーとなる人間のほうからロボットが存在する環境を学習したほうが良い時代になっているのだと考えさせらえました。
「ロボットストリート」は、12月17日(土)~2017年1月31日(火)の期間で開催されています。ATCには常設の子供向け施設がありますし、ご家族連れでロボットが楽しめる貴重な機会ですね。