【中国ロボット市場最前線 vol.08】バイドゥの人工知能ロボットが人間と対戦、その結果は? TV番組「最強大脳」の「人機対戦」

2017年1月6日、天才的な頭脳を競い合う中国人気バラエティ番組「最強大脳(Super Brain)」で、コンピュータと人間がゲームや識別能力などで競う「人機対戦」が行われ、検索大手企業バイドゥのロボット「小度」と、中国の「脳王」と称されている王峰氏が対戦しました。その結果、コンピュータが3対2(3:2)で脳王に勝ちました。これは中国では非常に大きな反響を呼んだ出来事となりました。
今回は、この人機対戦について紹介したいと思います。

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1. 人機対戦 人間とロボット(人工知能の勝負)

今回の人機対戦に登場した選手は、世界記憶力選手権の優勝者であり中国の「脳王」と呼ばれている王峰氏とバイドゥの人工知能ロボット「小度」です。

対戦の主な内容は、幼少期と成年期の写真を見て本人を識別する顔認識能力です。特別ゲストとして参加したエドバルド・モーセル氏は「今回の挑戦は人間にとっては非常に難しい。人間の顔識別能力だけではなく、高度な記憶力も必要だ。」と述べています。

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1.第一ラウンド

■対戦のルール
Ladybeesというアイドルグループ20人のステージ上の姿と子供時代(0~4歳)の写真とを照合し、2人を当てること。2件全正解のみで1点を取ります。

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■対戦の難易度
このラウンドの難しいところは、LadyBeesメンバーは、演出上の化粧をしていることです。整形したことがあるかどうかはプライベートな情報なので分かりません。子供時代の写真は、0~4歳のものであり、成年の写真と比べると、かなり大きな変化があります。舞台演出から子供時代の写真を正確にマッピングすることは、高度な記憶力と観察力が必要です。更に双子の場合は、難易度がさらに高くなります。

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■対戦の結果
第一ラウンドでは、1件目(1問め)の識別対象について、王峰も小度も正解でした。

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2件目(2問め)の識別では、小度は意外にも二つのマッピング結果を提示しました。72.98%と72.99%のマッピング率となった女性が2人いたからです。それは双子の姉妹でした。結果として、より高い識別度の72.99%の女性を選び、みごと正解となりました。

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グループには双子がいましたので、識別が難しかったことはたしかです。

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残念ながら、王峰氏の答えは間違えでした。
こうして第一ラウンドでは、小度が1:0でリードします。



2.第二ラウンド

■ 対戦のルール
30歳以上の対象者を観察し、小学校のときに記念撮影した30枚の写真の中から該当の人物を見つけること。正解の場合は2点を取ります。

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■ 対戦の難易度
30枚の記念写真には1000~2000人の子供の様子が映っています。大人一人と照らし識別・マッピングするには、対象者数、年齢の差、照明などの要素も識別正確率に影響するかもしれません。


■ 対戦の結果
今回は、王峰もロボットも正解で、それぞれ2点を取りました。
以下は王峰の回答です。

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小度の回答は下記です。
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最終的に、ロボットの小度が3:2で勝ちました。



2.対戦についての王峰氏やサイエンティスト等のコメント

今回の対戦は、子供のときの写真とオトナになった顔を比べる顔識別能力でした。これには、表情、光、シャドウなども影響するかもしれません。バイドゥは現在、200万人、2億件の画像ライブラリを持っており、2016年9月時点では識別正確率が97.7%と言っています。人間が人工知能に勝つには既に非常に高いハードルがあると思われます。

選手の王峰氏は、対戦後、「人と人工知能は、対立の関係ではなく相互補完の協力関係になると思います。今日の対戦では私が負けましたが、このテクノロジーは我々に多くの利便性をもたらしてくるだろうと思います。」と人工知能への期待を寄せています。

バイドゥのチーフサイエンティスト呉恩達氏は、「いま、われわれのコンピュータにとっては、強力なデータ分析能力を生かし、年齢が近い時期の写真を識別させることは簡単なことになりました。しかし、整形、化粧または十数年の年度にまたがる写真に対しては、大量のデータを持っておりません。従いまして、今日のような対戦内容は、顔識別技術領域で世界においてもチャレンジ的なものでした」と番組の意味を語っています。

番組の企画者は、「この番組の趣旨は、人類に自分の天賦を無視せずに、天賦を存分に発展させ、社会に貢献すること。今回の人機対戦は、単に人工知能がホットなテーマだからではありません。この番組を通じて、人工知能が勝てばその能力で人類に貢献できることを、人間が勝てば人工知能のさらなる進化が必要であることを示したいと思います。なので、今回の人機対戦は人類にとっても人工知能にとっても非常に意味のあるものです」と企画の趣旨を語っています。更に、「このような人機対戦で確認しようとしていますが、もし人工知能は正確性が担保できれば、親と長年連絡がなくなった子供の識別に役立つのではないか。」と抱負を語っています。


3.番組についての情報

「最強大脳」は、中国でとても人気のある番組で、世界的にも影響が広がっています。番組そのものについて簡単に紹介します。



1.番組の概要について

「最強大脳」は、江蘇衛星テレビの天才的な頭脳を競い合うバラエティ番組で、中国で最も人気のある番組の一つです。番組の趣旨は、そのスローガン通りに、「科学を流行させよう」とのことです。

2014年1月からスタートし、毎年3か月間ほど毎週金曜日に放送されています。今年は第四期になり、今回の「人機対戦」は一回目の中の一部で放送されました。今期では、今後、人間とロボットの音声識別対戦や、顔識別領域のアップデート対戦が想定されています。

番組には「鉄三角」と呼ばれる主要メンバーが出演していますが、司会者の蒋昌建氏、オブザーバー(特別ゲスト)の陶晶莹氏と魏坤琳氏は中国でよく知られています。

蒋昌建氏
復旦大学の助教授で、もともと中国の有名なbest debaterです。「最強大脳」でいま再び有名人として人気を集めています。

陶晶莹氏
中国で活躍している歌手、俳優、司会者で、数多くの番組で活躍しており、「最強大脳」では評論的な役割を担当しています。

魏坤琳氏
北京大学の心理学教授で、運動制御、生理力学などの研究をしており、「最強大脳」では、科学裁判官的な役割を担当しています。



2.今回の選手について

王峰について
1990年生まれ。2010年と2011年の世界記憶力選手権(World Memory Championships)の優勝者で、「最強大脳」第一期の「脳王」でもあります。
今回は、「最強大脳」番組で各領域の頂点に立っている優勝者から構成されている「名人堂」の当番主席を務めています。記憶力は非常に優秀な選手ですが、識別力では「名人堂」の中で最強ではありません。しかし、識別力の頂点に立っているほかの選手は心身状態が最良ではない理由から、当番主席の責任を果たすべく対戦に参加したのです。

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小度について
「小度」はバイドゥのロボットシリーズの一つで、バイドゥの検索能力、自然言語解析力、自然言語理解力、知能会話力などの人工知能技術を生かし、人間と情報、サービス、感情の交流ができるもので、深層学習などの技術で絶えずに学習・成長し、様々技能を持つようになります。FDDB(Face Detection Data Set and Benchmark)、LFW(Labeled Faces in the Wild)で首位の座を取得したことがあります。


3.今回の特別ゲストについて

エドバルド・モーセル(Edvard Moser)
ノルウェーの心理学者、神経科学者であり、2014年に「脳における空間認知システムを構成する細胞の発見」でノーベル生理学・医学賞を受賞しました。

章子怡(チャン・ツィイ)
中国でトップクラスの人気女優で、初恋のきた道、HERO、ジャスミンの花開く、女帝 [エンペラー]、ソフィーの復讐、グランド・マスターなどの映画に出演しました。

劉国梁(リュウ・グォリャン)
世界選手権・オリンピックの全ての種目で優勝し、90年代の卓球界をリードした名選手で、いわゆる「裏面打法」を本格的に取り入れた最初の選手として知られています。2002年に現役引退後、ナショナルチームのコーチに就任しています。


4.いままで番組に参加した日本人選手について

「最強大脳」では、海外選手との対戦もあり、世界中から天才が集まってきています。いままでは、以下の日本人選手が参加し、すごい脳力を発揮し、番組を盛り上げました。

  • ルービック世界ランキング3位の郡司光貴氏
  • 円周率10万桁まで暗記する原口証氏
  • フラッシュ暗算の達人である笹野健夫氏
  • 記憶力達人である青木健氏
  • 暗算神童辻窪凛音氏
  • フラッシュ暗算の世界記録を刷新した土屋宏明氏
  • ゲーム界の「黄金の指」と呼ばれる吉備弘純氏

いかがでしょうか。人機対戦では、勝負の緊張感が伝わって来て、とても面白いと感じました。人工知能のさらなる発展に伴い、その魅力がより一層高まるのではないかと思います。

※ 上記画像は、江蘇衛星テレビ「最強大脳」のものを引用しており、著作権などは最終的に江蘇衛星テレビに属します。


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Dequan Tang

イーパオディング株式会社代表取締役社長、北京璞華機器人(ロボット)情報技術有限公司CEO。東京・北京にてITシステム化、日中間ビジネス、グローバルビジネスコンサルティング業務に十数年間携わり、いま中国でロボットのメディア、展示、販売、研究開発を行うロボット事業、及び「個客」ビジネスの「自由自在」を支援するグローバルリサーチ、コンサルティング、インターネットサービス事業に従事。IT関連の講演・著書多数。 Email:tang_dequan@epaoding.com  微信(Wechat) ID:tomotogether

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