今年はロボット競技の世界大会「ロボカップ(RoboCup)」が、7月末に名古屋で開催されます。
ロボスタでは「ロボカップ2017名古屋世界大会」の事前情報や現地の様子なども報道していく予定です。
それに先駆け、前編に続いてロボカップの発起人のひとり、ソニーコンピュータサイエンス研究所(ソニーCSL)の北野宏明氏に、現状とこれからのロボット業界について聞きました。
編集部
現在、ロボットとAI(人工知能関連技術)はブームだと言う人もいますが、どう感じていますか?
北野氏
ロボットとAIによってこれからの社会が変わっていくのは確実ですが、少し高揚しすぎている…バブル状態と言えるかもしれません。特にAIは実態が伴っていないにも関わらず、AI機能を名乗って注目を集めているような状況も一部で見られます。そのため、一旦調整が入るというか、一度、過剰な期待感が沈静化してから、本当のAI関連技術が浸透していくでしょうね。
編集部
AI技術によってロボットの会話機能の性能も飛躍すると言う声があります。実際のところはどうなのでしょうか
北野氏
内容が限定された環境で交わす会話なら成立します。最近ではアマゾンエコーが売れていると聞きますが、あれはやりたいことが明確な点が評価できると思います。商品を注文することがゴールであったり、シナリオに沿った会話、特定のボイスコマンドなら会話は成立するでしょうね。
しかし、どんな内容でも違和感なく、人と会話をするというのはとても大変なことです。雑談や目的が曖昧な会話についてはとても大きなチャレンジであり、現在の技術では成功は難しいでしょう。
編集部
人と同様に会話するロボットが期待されています
北野氏
期待感をコントロールすることが実は大切です。これはデザインにも関係することです。ヒューマノイド型ロボットは人に似ているので、それを見た人はヒューマン・インテリジェンスに期待してしまうんですね。人と同等に会話ができるのではないか、と。そうなると質問も幅広くなって、その結果失望することになります。
その点、アマゾンエコーは知的な反応を期待させないデザインをしています。相手が抱く期待感の制御をデザインで行っているんでしょうね。
編集部
どうもありがとうございました
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神崎 洋治神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。