デジタルハリウッド サービスロボティクス専攻(よしもとロボット研究所&ペッパーズ)の授業が行われました

3月29日、デジタルハリウッド サービスロボティクス専攻の授業が行われました。今回の講師はよしもとロボット研究所 梁さんとペッパーズ金子さんのお二人。講義内容は「ロボットと人のコミュニケーションのあり方、エンターテイメント分野でのロボットの未来について」です。





ロボットと漫才をしたらこんなことが分かった (ペッパーズ金子さん)

前半は、ペッパーズ金子さんから「ロボットと漫才をしたらこんなことが分かった」という内容でお話頂きました。


ペッパーズ 金子竣氏

最初にペッパーズの自己紹介です。ペッパーズは、ロボットのPepperと人間の金子さんの漫才コンビ。金子さんは吉本クリエイティブエージェンシー所属のプロの芸人さんです。


2015年のM-1グランプリにロボット漫才で参戦。初登場で2回戦まで進出。翌年2016年のM-1グランプリでも2回戦まで進出の成績を残しました。


続いて、ペッパーズの生ネタが披露されました。


教室から笑いが起こります

金子さんからお話があった内容はこちらの4つについてです。


1.漫才とは何か?
2.ロボットと漫才を作るということ
3.ロボットと人のコミュニケーションにおいて大切なこと
4.今後のサービスロボットに向けて


まず、「漫才」とは何でしょうか?

基本的には、台本のある2分から4分の会話形式のものです。会話なので台本を今起こっている出来事として話を行い、それぞれの演者にキャラの設定も行います。



金子さんの経験談から得た、ロボットと漫才を作る時に気をつける点です。特に注意するのは、「声と動きを作成する」という点と「ロボットとして自然な声(セリフ)、動きになっているように工夫する」の2つでしょう。


授業の教材として、ペッパーズの漫才台本が配布されました


ロボットとして自然な動きになるように、金子さんが工夫したのは以下のポイントです。これらを意識して行うことで、ロボットとの漫才が洗練されていきます。

・Pepperと金子さんのアイコンタクトを頻繁に行う
・Pepperの発話に合わせた動作をつける
・Pepperに相づち動作を入れる

Pepperと目線が合うと、確かに漫才をしているように見えます


金子さんがロボット漫才を作って感じたのは、以下の通りです。

・これって、人とロボットの自然なコミュニケーションを作っている!?
・人とロボットの漫才を作る→人とロボットの自然なコミュニケーションって何かを考える作業と近い


最後に金子さんが考える「ロボットと人のコミュニケーションにおいて重要なこと」です。漫才に限らず、ロボットアプリを作成するときにもこれらを意識することで、ユーザ体験の良いアプリを作成することができることでしょう。

金子さんからのお話は以上です。



よしもとロボット研究所の取組みと「ロボットUXデザイン」について(よしもとロボット研究所 梁さん)

後半は、よしもとロボット研究所の取組みと「ロボットUXデザイン」についてです。


株式会社よしもとロボット研究所 代表取締役社長 梁弘一氏

まずはよしもとロボット研究所の会社紹介から。Pepperが一般発表される前の2012年12月からアプリ開発をスタートし、会社は2014年6月に設立されました。

2017年2月9日にはPepperプレミアムパートナーである「UXデザインパートナー」第1号に認定、先日はPepper認定パートナーで最も貢献した会社に与えられる「Partner of the Year」を受賞しました。



Pepperアプリの開発実績は、日本トップクラスです。



最近のコンシューマー向けアプリの事例は、精神科医名越康文氏監修のロボアプリ「ペパーヒーリング」。



脳医学博士加藤俊徳氏監修のロボアプリ「ペッパーブレイン」もコンシューマ向の事例です。

続いて、よしもとロボット研究所の開発チーム体制とアプリ開発フローについて説明頂きました。チーム体制は大きくクオリティコントロールと実装担当に分かれており、実装担当は更に各領域3チームに分かれています。開発フローは9工程に分かれており、各工程ごとに担当が決められています。



続いて、ロボットUXについての説明です。

みなさんご存知の通りPepperは人型ロボットです。人間の方から話しかけてきたり、目をのぞき込んだりしてきます。ロボットUXデザインとは、ロボットが人々に笑顔をもたらすコミュニケーション体験とも言えるでしょう。



ロボットUXとは、人とロボットの間の体験です。ロボットに役づくりを行うことで、テクノロジーに依存しないUX向上の余地が大きくあると、よしもとロボット研究所では考えます。



同じ内容のセリフでも、言い方を変えるだけで印象が変わります。



ロボットUXデザインには、ワードセンス・コンテクスト・タイム感・キャラクターなどといった「役づくり」の構成要素があります。これらの要素をどのように作り込むかは、方程式や計算式で生み出すことは出来ません。笑いの感覚や豊富な経験則が頼りになります。

役づくりをしたロボアプリの事例として、よしもとロボット研究所が手がけたPepper受付アプリを紹介して頂きました。

最後に「Pepper開発におけるおすすめ役割分担」と「Pepperシナリオ作成のポイント」についてお話を頂きました。



授業は以上です。

質疑応答では以下のような質問が出ました。

・一般企業ではPepperの台本作成はどのようにしていけばよいと思いますか?
・よいシナリオ、よいアプリを作るためにプロデューサに求められるものを教えてください
・ペッパーズをトリオにするなら、追加するのは人間かPepperか他のロボットか
・ロボットと人間の漫才は他にやっている人はいるんでしょうか?

当日の講義は以上です。

ロボット漫才でM-1グランプリ一回戦を突破した実績を持つ金子さんは、Pepperに漫才をさせていく中で「人とロボットの自然なコミュニケーションって何か」にたどり着き、そこから得た体験談の共有は参考になりました。

Pepper一般発表前からロボアプリ制作に関わっていたよしもとロボット研究所 梁さんのお話は、現在Pepperアプリに関わっている人にとって、すぐに役に立つお話ばかりで勉強になりました。

みなさまお疲れ様でした。


最後に

今回で、3ヶ月全10回のデジタルハリウッド サービスロボティクス専攻の講義が終了しました。現時点で既にロボットに関するお仕事に関わっている方からの講義は、毎回勉強になるものばかりでした。

授業風景のレポートは以下リンク先からご覧下さい。

ロボスタでの授業レポートは諸般の事情により、内容の一部のみとなっております。実際の授業はレポートの数倍密度の濃い内容でしたので、興味のある方はまたの機会で授業のご参加されることをオススメします。

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北構 武憲

本業はコミュニケーションロボットやVUI(Voice User Interface)デバイスに関するコンサルティング。主にハッカソン・アイデアソンやロボットが導入された現場への取材を行います。コミュニケーションロボットやVUIデバイスなどがどのように社会に浸透していくかに注目しています。

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