デジタルハリウッド ロボティクスアカデミー サービスデザインプログラム4回目の授業が8月9日に行われました。
今回は特別講義です。「Gatebox」でおなじみのGatebox株式会社代表取締役の武地実さんと、ソフトバンク株式会社の直野廉さんによるロボットビジネスの事例紹介です。
Gatebox株式会社代表取締役 武地実さん
前半は、Gatebox株式会社代表取締役 武地実さんからの講義です。
Gateboxは好きなキャラクターと一緒に暮らすための世界初のバーチャルホームロボットで、通称「俺の嫁、召喚装置」と呼ばれています。
開発をスタートしたのは2014年12月。この頃世に出てきたのはソフトバンクのPepperやAmazon echoでした。当時Pepperを見た武地さんは「サイズが大きいから自分の家には置けないな」と思いました。
武地さん自身、キャラクターが大好きで、特に初音ミクは特別な存在です。
そこでキャラクターと一緒に住みたいと思い、プロダクトの発想を得たそうです。
ところが、発想は得たもののエンジニアではない武地さんにとって、ハードウェアの製造に関しては分からないことだらけでした。分からないことは色々と勉強して一歩つづ前進してきました。
同時にGateboxのオリジナルキャラクターである逢妻ヒカリ(あずまひかり)ちゃんも一から作っていきました。
2014年からステルスで開発を行い、2016年1月に初めてのコンセプトムービーを発表すると世界中に拡散。7割がアメリカで再生され、予想以上に世界中の人たちに衝撃(トラウマ?)を与えました。
去年の年末に300台限定で予約販売を開始すると、1ヶ月で完売。
その後、LINEさんとの提携を行いました。
Gateboxのビジョンは「次元を超える技術でキャラクターと共に暮らせる世界をつくる」ことです。技術の種類にはさほどこだわりがなく、このビジョンを実現したいとのことです。
続いて、事業を立ち上げたい方に向けて以下の3点をお話頂きました。
・事業を行う上で気をつけていること
・Gateboxのユーザー体験で大切にしていること
内容は受講生限定となりますので、いくつか写真で紹介させていただきます。
質疑応答では以下のような質問が上がりました。
・今も事業を行っていると思いますが、「本当の事業化のタイミング」をどう考えていますか?
・キャラクターのシナリオやふるまいをどうするかは誰がどのように作っているのですか?
・キャラクターを作る時に大変だったことは?
・逢妻ヒカリちゃんのキャラを作った方は、前職で何をされていたのですか?
・投資家の方とはどうやって接点を持ったのでしょうか?
・お金周りについて教えてください。特に1台30万円という値段や、限定300台という数字はどうやって決めたのを教えてください。
Gateboxさんの講義は以上です。
続いて・・
ソフトバンク株式会社 直野廉さん
後半はソフトバンク株式会社 直野廉さんの講義「Pepperの誕生から今、そして」です。
直野さんの所属は、ソフトバンク株式会社 法人事業戦略本部 ロボティクス事業推進部。業務内容はソフトバンクとPepperのメーカーであるソフトバンクロボティクスの間に入ってPepperの販売企画をするというものです。
大学時代に機械工学を学んだ直野さん、就職活動の時にロボット系の企業を受けましたが何か違和感を感じていました。そんな中、以前ソフトバンクが発表した「新30年ビジョン」でロボットについて触れられていた事を思い出し、ソフトバンクに入社。そこからめでたくPepperの担当となりました。
ソフトバンクには社内サークルとして「Pepper部」があり、もちろん直野さんも所属しています。イベントでのPepper展示やハッカソンの参加などの活動を行っています。
Pepperの始まりはソフトバンク創業30周年となる2010年に行われた「新30年ビジョン」を全社員から募集したことにさかのぼります。この時に優勝したアイデアが「世界No.1のロボットカンパニー」でした。そこからPepperの開発に取り掛かりました。
2015年6月に世界初の感情を持ったロボットのPepperがリリースされました。
開発ツールであるChoregrapheを使うことで、プログラミングの知識がなくてもアプリの作成が可能なのがPepperの大きな特徴の1つです。
2015年10月にはビジネス版となる、Pepper for Bizが登場。Pepperの強みであるエンゲージメント、データ連携を活用することが出来ます。
Pepperの最新事例の紹介です。
「SMSアプリ」は、お客様がPepperに電話番号を入力すると、各種URLをSMSで送信します。これにより、新規顧客の獲得や既存顧客の再来店を促すことができます。
「自動会員登録」は、お客様の身分証を読み取り、登録フォームをSMSで送信します。これにより、会員登録の手間が減り、会員獲得数増加が見込まれます。
「疾患啓発」は、Pepperから簡単な質問を行って健康チェックを行います。疾患啓発や健康情報を案内し、患者様の検査数をアップさせる効果が見込めます。なお、監修は医師が行っているとのこと。
「リモートコンシェル」は、オペレーターがPepperを介して遠隔地から各種ご案内を実施。これにより、スタッフ一人で複数機体を操作できるので業務効率化が可能となります。
「観光コンシェル」は、Pepperが6ヶ国語でオススメの観光地案内を行います。訪日外国人旅行者の定着と回遊を促進します。
最後にPepperでのSLAMの紹介を。現在のPepperではβ版としてですがSLAM実装されています。SLAM機能とは、自己位置推定と環境地図作成を同時に行う機能のこと。Pepperが移動する際に使われます。
直野さんはQiitaにソフトバンクロボティクス主催のSLAMセミナーレポートを書いていますので、ご興味ある方はご覧ください。
直野さんからのお話は以上です。
質疑応答では以下のような質問が上がりました。
・多言語対応についても詳しく教えてください
・想定していたPepperの使われ方と、想定外なPepperの使われ方をそれぞれ教えてください
・直野さんが個人的におすすめのPepper案件を教えてください
・どうしてPepperは白色なのでしょうか?
・Pepperを使ったユーザ体験を創る時に直野さんが気をつけていることを教えてください
今回の講義は以上です。
みなさまお疲れ様でした!
デジタルハリウッド ロボティクスアカデミー
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北構 武憲本業はコミュニケーションロボットやVUI(Voice User Interface)デバイスに関するコンサルティング。主にハッカソン・アイデアソンやロボットが導入された現場への取材を行います。コミュニケーションロボットやVUIデバイスなどがどのように社会に浸透していくかに注目しています。