2017年11月に開催される「Pepper App Challenge 2017 Autumn」に向けて、関西では初めてのPepperハッカソン「ペッパソン2017西の陣〜”AIやIoT”をPepperと絡めて技術で勝負!〜」が開催された。そこに前回の「Pepper App Challenge 2017」(2017年2月開催)でファイナリストに選考された株式会社メイテツコムのチームも参加していた。
2017年2月に行われた前回の「Pepper App Challenge 2017」(以下、PACと表記)、メイテツコムは「ウェイティングボードアプリ」を出展。ロボットならではのアプリを提案した。
レストランでランチの時間、忙しい店員になり代わり、Pepperがお客様の順番待ちを管理するというものだ。しかし、それだけではない。スタッフの代わりにシステム的に業務するだけでなく、そこはPepperの愛嬌を活かし、待ち時間を快適に過ごすための工夫を盛り込んだ。イライラする待ち時間もPepperの接客によって店内を明るい雰囲気にすることも狙ったシステムだ。
待ち時間を楽しく過ごすため、Pepperによるメニューの紹介や会話機能を装備した。会話機能には高度なやりとりに対応できるよう、ネットワークを通じて「IBM Watson」と連携する。
惜しくも受賞は逃したが、ロボットによる受付の自動化と、エンタテインメント性を両立させた、今後に期待ができるシステムだった。
Pepper開発に既に実績を持つメイテツコムがPACに出場する目的は何か? ロボット活用の将来性などを同社のゼネラルマネージャー下谷氏に聞いた。
「アプリ開発コンテストはアイディアや発想を出し合う他流試合のようなもの」
編集部
PACに出場して、どのように感じましたか?
下谷(敬称略)
前回のPACでは直前で機能を追加したり、突貫工事で改良を加えたりと、バタバタのスケジュールの中で、若いメンバーががんばってくれたと感じています。
短期間で気合いを入れなきゃいけない点はコンテストならではです。開発者にとって刺激的で貴重な体験になったのではないでしょうか。大変でしたが楽しかったですね。
編集部
PACに出場しようと思った理由やきっかけを教えてください
下谷
PACのようなコンテストは、若手にとって自分の可能性を磨くチャレンジであり、トレーニングの場になるのではないかと感じたからです。参加したメンバーは普段、お客様ごとに開発したシステムの保守や運用、メンテナンスに携わっている技術者が中心です。それらの日常業務は非常に重要で正確性が求められます。その一方でユニークな発想やアイディアを出す機会はなくなっていきます。
PACのようなコンテストはいわば「アイディアや発想を出し合う他流試合」のようなもので、若手メンバーたちの活性化や経験に繋がって欲しいと考えて参加しました。その甲斐あって、どのメンバーもとても活き活きとやってくれましたね(笑)。
編集部
メイテツコムさんはビジネスでもPepperを使ったアプリやサービスを開発してきたと思いますが、ロボアプリをやるようになったきっかけを教えてください。
下谷
当社は名鉄グループの企業なので、主にグループ内のシステム開発を手がけています。鉄道関連のシステムだけでなく、グループ内には物流や百貨店など様々な会社がありますので、比較的大規模で多種多様なシステムを開発してきました。
ただ今後、業務システムの受託開発の案件は少しずつ減っていくことも想定し、当社なりに新しいことにもチャレンジしていきたいと常々考えていました。
編集部
業務用の専用システム以外の開発ですか
下谷
実はスマートフォンが登場した時にも、タクシーの「東京無線」様の配車アプリの開発を受託する機会をもらったり、グループ内では「博物館明治村」(愛知県犬山市)でiPadを使った人生ゲームのアプリを開発したりしました。いち早く着手することができたことで、その後のスマートフォンやタブレット、更にはクラウド関連のアプリ開発のビジネスに繋がった感じていました。また、明治村での経験は、お客様にアプリを通して楽しんでもらう工夫やノウハウも得ることができました。
Pepperの発表を聞いたとき、コミュニケーションロボットが登場するのなら当社でもお客様に楽しんでもらえるロボアプリの開発にいち早くチャレンジしようと感じました。そして名鉄グループ内のホテルで実証実験などを重ね、今ではある程度の知見を積んだかなと自負しています。
編集部
Pepperのロボアプリ開発はスマートフォン用のアプリやウェブ開発の経験がベースになっているんですね
下谷
技術的に言えば、ロボアプリはスマートフォンやタブレットのアプリ開発に近いと感じています。Pepperには「コレグラフ」という専用ツールが用意されています。更に個性的なことをやりたい場合は、JavaスクリプトやPythonなどの言語を使って開発を行います。Pepperはネットワークのクラウドと連携するとより高度な開発ができますので、ウェブの開発技術があると役立ちます。当社はチケットのオンライン販売などを含めて、社内ではウェブの開発技術も蓄積されていましたので、ロボアプリ開発は難しいものではありませんでした。
ロボットに重要なのはエンタテインメント性、開発は楽しくて夢がある
編集部
PACではファイナリストに選出されましたが、ロボアプリならではのポイントはどんな点でしょうか。
下谷
スマートフォンアプリなどと比べて、シナリオが重要になる点が新しいと感じました。また、ロボットはタブレットやスマートフォンと違って、手や頭の動きによっても表情を作ることができることが特長です。
実際のビジネスでクライアントさんに依頼されてロボアプリを作る場合、たくさんのことを言葉で表現しようとして、ロボットのセリフが長くなりがちになります。しかし、セリフが長いと誰も最後まで聞いてくれません。そこでシナリオでセルフを短くして、ロボットに身体を使って表現させる方法を取り込むとグッと良くなりますね。
とはいえ、これはクライアントさんも実際に見てみないと理解しづらいんですね。そこで、プレゼンの際にお客様の要求通りに長いセリフをPepperに喋らせる動画をあえて作り、更にもうひとつセリフを抑えてPepperらしい表現力を前面に出した動画をお見せすると、ひと目でわかってもらえるんですね。これも実はロボットのアプリ開発を着手してきたからこそわかることなんだと実感しています。
編集部
ロボット開発をやってみた「中の人」だからこそわかる知見ですね(笑)
下谷
長い間、業務システムを中心に技術だけに目を向けてがむしゃらにやってきました。しかし、ロボアプリの開発をするようになって、人を楽しませる方法やエンタテインメント性の重要性にも目を向ける機会が増えて、それが楽しみでもあります。社内でもよく同僚から「Pepperの仕事をしているときは楽しそうだな」と言われますよ(笑)。
ロボットが必要とされる時代が来る、着手しなければ解らないことがたくさんある
編集部
今後、ロボットの需要は伸びていくのでしょうか。
下谷
ロボットの需要はこれからだと感じています。
今後は労働人口が減って、人手不足やスタッフ不測がより深刻になることが予測されています。鉄道やグループ会社の多くがサービス業の一面があり、人を案内したり、おもてなしをする人員が減るなら、それをカバーしていく必要があります。また、海外からのインバウンドの観光客も増えて、多言語対応のニーズが年々大きくなっています。こういった背景から、コミュニケーションロボットの需要が増すのは確実で、競合他社に負けないようにするにはロボットとの協働を含めて、仕事のやり方をみんなで考えていかないといけないと考えています。それには、ビジネス提案であれ、コンテストであっても、いち早くロボアプリの開発に関わっていることが重要です。
将来性ゆたかなロボアプリの開発コンテスト、参加受付中
「Pepper App Challenge 2017 Autumn」はロボットに未来を感じる人なら誰でも参加できるアプリ開発コンテストだ。個人でも法人でも参加できる。
応募作品の受付の締切は2017年10月25日。決勝は 2017年11月22日(水)に東京「ベルサール汐留」で開催される。
最優秀賞として賞金100万円と限定グッズ、その他、AIソリューション賞、IoTテクノロジー賞、ビジネスイノベーション賞として賞金10万円ほかが用意されている。
「Pepper App Challenge」でファイナリストに輝くことで、各界から注目され、ビジネスが拡大できた事例もたくさんある。世界をリードするコミュニケーションロボットの技術者、開発者、プランナーを目指して、参加してみてはどうだろうか。
詳細は公式「Pepper App Challenge 2017 Autumn」を参照。