福岡で学生向け「ロボットアイデアソン」が開催 地元の有力企業、学生112名、ロボット6種が集結
1月12日(金)、13日(土)の2日間、福岡銀行の本店にて、学生向けのロボットアイデアソンが開催された。これは、企業と学生と行政によるロボットの社会実装における福岡の未来創造を目的としたアイディア大会。学生は23チーム112名が参加し、ゲストや審査員を含めて総動員数は計180名を超えるイベントとなった。
福岡で、地元の大手企業や行政そして学生がこの規模で集まった意味は大きい。参加した全員が、ロボットの未来を考え、熱のこもったディスカッションをした。この熱を少しでも伝えられるような記事にしていきたい。
なぜこのイベントを開催したのだろうか。イベントを主催した「僕らの未来創生物語実行委員会」の中心として起案と運営を行なったシステムトランジスタの代表 高橋周矢氏は、「私自身、福岡と東京を行き来しているが、福岡と東京のロボット熱の盛り上がりの違いを感じていた。まだまだ地方ではロボットの活用が進んでいない。企業にロボット活用を促し、かつ情報を広めたかった」と説明した。企業単体の主催ではなく、複数の企業や団体による委員会という形を取り利益を目的としなかったのも、この想いがあったからだ。
今回のアイデアソンは、企業側が抱えている課題(テーマ)を学生に共有し、学生たちはそれに見合った解決策をロボットを使って提案するというもの。テーマを出題する企業には、福岡銀行、西日本鉄道、福岡放送という福岡の大手3社と共に、福岡市の防災共創プラットフォームという行政組織も参加した。どの組織も、ロボットの活用の重要性を理解しているのだという。
このアイデアソンが特殊だった点は6社ものロボットメーカーが集まった点にある。通常「Pepperの活用方法」という形でアイデアソンが行われるが、課題を解決するためにこれら6体のロボットを組み合わせて提案するという形が取られたため、アイデアを考える広がりができた。
並んだロボットは、ソフトバンクロボティクスの「Pepper」、シャープの「RoBoHoN」、MJIの「Tapia」、ヴイストンの「Sota」、ソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia Hello!」、地元企業であるドーナツロボティクスの「Cinnamon」の6種。
学生たちは初めて見るロボットも多かったようで、楽しそうにそれらのロボットを体験していた。
1日目は主に企業やロボットメーカーによる学生向けのインプットタイム。そして、チームごとのアイデア出しとブラッシュアップが行われた。
インプットタイムには、ロボスタが誇るロボティクススーツ「ぱっぺー」も参加。ぱっぺーは九州初上陸となった。
企業からのテーマは福岡銀行からは「未来の銀行で活躍するロボット活用アイディア」、西日本鉄道からは「沿線での毎日をより便利に、より楽しくするようなロボット活用アイディア」、福岡放送からは「ロボットを使った新しい発信の形」、防災共創プラットフォームからは「家族の一員としてロボットができる家庭の備災/減災/防災」と、それぞれの立場での課題を解決するテーマを求めた。
学生たちは、この中から一つのテーマを選び、それに対して提案を行なっていく。
審査基準は、「実現可能性」、「社会性」、「新規性」、「独自性」、「面白さ」の5つ。「想像」ではなく「創造」が大事だと付け加えられた。
学生は各チーム3名から5名程度のチーム。各個人が出したアイディアをチームでディスカッションし、そのアイディアを書き出してさらにブラッシュアップしていく。
学生たちが提案企業やロボットメーカーに積極的に質問を行い、アイディアを深めていく姿が印象的だった。
1日目の夜は22時以降まで残ってアイデアを詰めている学生もいたほど、皆熱心に参加をしていた。
1次審査を経て決勝審査へ
2日目の午前中は初日のアイディアをさらに詰めつつ、発表に向けた準備を進めていく。
そして午後から1次審査が行われた。学生たちはアイデアを1枚の模造紙にまとめ、それを企業や審査員が見て回る。学生たちも自分たちのチーム以外に投票を行い、得票数が多いチームが決勝審査へと進むルールだ。
1次審査の結果、23チームの中から11チーム決勝審査へと駒を進めた。決勝審査はプレゼンテーション。アイデアもさることながら、それぞれのチームのプレゼン力と度胸にも驚かされた。
最終プレゼンに進んだ全チームのアイディアをここでご紹介することは難しいが、最優秀賞に選ばれた1つの提案と、個人的に気になったを2つの提案をご紹介していきたいと思う。
避難経路をロボホンが案内
最優秀賞に選ばれたのは、福岡大学大学院の学生で構成されたチーム「today」だった。このチームは最優秀賞のほかに、シャープのロボホン賞並びに、ドーナツロボティクスのシナモン賞も獲得している。
最優秀賞としてユニクリラーメン1年分とふくやの明太子その副賞として賞金10万円が贈られた。また、ロボホン賞やシナモン賞としてそれぞれの限定Tシャツも贈られている。
「today」は、福岡市の防災共創プラットフォームに対して提案。「備災・減災・防災」という3つのポイントがテーマに挙げられていた。
アイデアはこうだ。まず各家庭に備蓄されている食材の賞味期限などをシナモンが覚えてくれて、期限が迫ってきたら知らせてくれる。これにより災害に備えることができる。そしていざ災害が起きた時には、ロボホンが避難経路をプロジェクターで表示。SIMが搭載されている小型のロボットのため、連れて歩くことができ、ネットから情報をリアルタイムに取得することでより安全な経路を通って避難所まで誘導してくれる。
避難所に行った後も、災害時には家の中の様子が気がかりだろう。そんなときには家にいるシナモンがカメラの映像を通じて家庭の中の様子を伝えてくれる。避難してからも、住んでいる人に安心してもらうためのサポートをするというアイディアだ。
ロボットに「災害時モード」を導入
もう一つ興味深かったアイデアをご紹介していく。こちらも福岡市の防災共創プラットフォームに対する提案だ。
チーム「福ブラB」の提案は、Pepper、Tapia、Xperia Hello!、cinnamonの4種類のロボットを活用したアイデア。特徴的だったのは、これらのロボットは通常時にはそれぞれのロボットとして普通に過ごし、災害時になると災害時モードに変化するという点だ。
災害時モードでは、それぞれのロボットが得意な分野で災害時の役割を果たす。例えば、Pepperは避難所の受付をおこなったり、他の避難所の情報を把握して伝えたりする。片やXperia Hello!は災害に関するニュースを伝え、cinnamonは遠隔診療をしたり服薬管理をする。
ロボットそれぞれの特徴を生かし、災害時には各家庭のロボットたちが災害時モードとしてみんなに役立つことを始める。全ての家庭にロボットが導入されていなくても、ロボットたちが各々必要なことをしてくれるというアイデアだ。
全てのロボットに共通するプラットフォームの考え方が認められ、最優秀賞の「today」を抑えて防災共創プラットフォーム賞を授賞している。
Pepperがイルカを操るショー
チーム「アベチャンズ」が提案したのは、世界初の「人×ロボット×魚」が共存する最先端の水族館。比較的低価格であるSotaやTapiaを館内のいたるところに設置し、魚たちの案内を行い、道案内もする。そしてイルカショーではPepperがイルカのインストラクターとなり、ショーを行うというものだ。これは西日本鉄道に対する提案で、同社のグループ会社であるマリンワールドを「インスタ映え」する「行ったことを自慢したくなる」水族館にしようというアイデアだ。
発表時には「Pepperは水に弱いため難しいのではないか」というソフトバンクロボティクスからのコメントがあったものの、「ロボットのテクノロジーではなく、フィジカルな存在やインパクト生かしている」という点が評価され、ソフトバンクロボティクスのPepper賞に輝いた。
アイデアソンを振り返って
今回ご紹介したのは、23チームのうちほんの3つのアイデアだけだった。しかし、目を見張るようなアイデアはほかにもあったし、何より学生たちの真面目さと熱気、プレゼン力の高さに驚かされた。学生のうちからこのような経験をしたことはきっと社会人へと繋がっていくだろうし、ロボットというテクノロジーの未来を考えた経験は視野を広げる経験になったことだろう。
そして全体を俯瞰して見ると、主催者のシステムトランジスタ 高橋氏のコメントを借りるのであれば、このようなほかで体験できないイベントが「東京ではなく福岡で開催された」ことは意味が大きいのだと思う。
この「僕らの未来創生物語」というイベントは、次回は北九州市で開催されるという。閉会後、決勝に進めなかったチームが「次回も絶対に参加します」と言って帰るのを見て、なんとも言えない刺激を受けた。
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