「日本はロボットに対してもっとポジティブ」ボストン・ダイナミクスCEOがドイツ・CEBITで語る
6月11日〜6月15日にハノーファー国際見本市会場(ドイツ・ハノーファー)にて開催された世界最大規模のBtoB向けITソリューションに関する国際情報通信技術見本市「CEBIT(セビット)2018」。
同イベントでは様々なカンファレンスが行われていたが、ロボットのテーマで最も注目を集めていたのがBoston Dynamics(ボストン・ダイナミクス)のファウンダー・CEOのMarc Raibert(マーク・レイバート)のプログラムだ。
マークは6月12日と13日の2日間にわたって登壇したが、初日は司会を交えたトークセッション、2日目はSpotMini(スポットミニ)を携えたキーノートセッションが行われた。本記事では、これらのセッションの様子を取り上げる。
リニューアルしたドイツの「CEBIT」でロボットは? Pepperやロボットバンドが存在感
初日のトークセッションでレイバート氏は、人間や動物はセンサー(知覚)や体、知能などを使って複雑な環境を進むことができるが、ボストン・ダイナミクスのロボットはそれを目指していると語った。AIについて問われると、ボストン・ダイナミクスはアスリートタイプのインテリジェンスを作ることに注力していると答えた。
また、強くて、軽くて、早いロボットを作るためのテクニックとして金属3Dプリントの技術を使うことを挙げ、コストについては今後量産化を経て下がっていくだろうと語った。
トークセッションの司会者からは、セキュリティや社会実装、悪用などの問題についてのネガティブな質問が目立った。会場に対して「映画に登場する善いロボットのキャラクターを挙げて欲しい」と投げかけたところ「WALL・E(ウォーリー)」や「R2-D2」などのレスポンスがあったが「ターミネーターのように人に反逆するのではないか」と不安を口にした。レイバート氏は当然そうならないよう努めているとした上で、日本ではもっとポジティブだと紹介し、少子高齢化社会への実装を目指す日本は注目すべき事例だと繋げた。
実際に筆者が海外(特に欧米)の方と話す際に似たような話をされることがあるので、司会者の持っている感覚もある程度一般的なものなのかもしれない。
レイバート氏も慣れているようで「メディアにも色々言われるが、私の一番気に入っている見出しは、Washington Examinerの『米国にとって最大の脅威は北朝鮮でなく、ロボット会社ボストン・ダイナミクス』だ」と語った。
2日目は、スポットミニのデモを行うと予告していたこともあり、セッション開始前から多くの人が詰めかけた。
セッションではボストン・ダイナミクスの各種ロボットの特徴や実験について動画を交えて説明されていた。実際の家庭でのテストについては、家ごとに違う階段やドア、現実世界で生じる様々な状況に対応することで、実用性を高めているとの事だ。こうして学習を重ねたローレベルのAIが、課題の解決を目的とするようなハイレベルなAIと組み合わさった際に、より効果的になっていくという。
セッションの中でレイバート氏は、2019年に量産化が予定されているスポットミニは「プラットフォーム」であると強調していた。ハードウェアやソフトウェアのカスタマイズが可能で、建設や配達、警備などの「アプリケーション」として活用を見越しているとのことだ。
セッション終了後はステージ上にスポットミニが置かれ、その様子を間近で見ることができた。また、来場者がゲームパッドを使ってスポットミニを実際に操作できる体験コーナーも用意されていた。
なお、当日のセッションの様子は以下の動画から見ることができる。
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小野哲晴アスラテックのロボットコンサルタント。 2005年、ソフトバンク入社。法人向け/コンシューマ向けの両面において、さまざまなサービスの企画・運用に従事する。2010年、Ustream Asiaにてライブ映像配信サービスの立ち上げに参画し、プロダクトマネジメント、広告運用、ローカライズ、コンテンツ制作を担当。その後、国内最大手SNS運営会社勤務を経て、2016年よりアスラテックに転身。