リニューアルしたドイツの「CEBIT」でロボットは? Pepperやロボットバンドが存在感
2018年6月11日〜6月15日にハノーファー国際見本市会場(ドイツ・ハノーファー)にて開催された世界最大規模のBtoB向けITソリューションに関する国際情報通信技術見本市「CEBIT(セビット)2018」。1970年の初開催から40年以上の歴史を持つCEBITは、今回「The New CEBIT」を掲げて大幅なリニューアルが行われた。商業と社会のデジタル化への移行をテーマとし、展示会にフェスティバルの要素を加えたイベントとなっている。2017年まで「CeBIT」だった名称も、今回「CEBIT」に刷新するなど本気がうかがえる。
CEBIT 2018では4つのテーマに沿って展示やイベントが行われた。
業務のデジタル化を推進する製品・ソリューションを提供するBtoB向けの「d!conomy」。AI、ブロックチェーン、ロボット、VR/ARといった従来の仕組みを変えるような技術や、350を超えるスタートアップの出展する「d!tec」。会場内10カ所のステージに600人の登壇者を迎えるカンファレンスプログラム「d!talk」。様々な企業パビリオンに加え、ライブミュージックやDJプレイが行われるステージのあるエリア「d!campus」。
生まれ変わったCEBITでロボットがどのような存在感を見せたのか、レポートをお届けする。
存在感を見せたPepper
今回のCEBITの中でPepperはロボットの「アイコン」として扱われていて、たびたびクリエイティブに使われていた。今までヨーロッパではどちらかと言うとNAOを目にする機会が多かったが、Pepperの存在感が増してきているように感じられた。
ハノーファー国際見本市会場の北ゲートから入場して一番近いd!conomy エリアのHall 17に入るとすぐにソフトバンクロボティクスヨーロッパのブースがあった。ブースではPepperのアプリケーションパートナー企業が数社出展していて、オフィスや病院、ショッピングセンターなど導入先に応じたカスタマイズソリューションの提案を行っていた。
ソフトバンクロボティクスヨーロッパのブース以外にもCEBIT会場の様々なブースでPepperが活躍していた。今後、ヨーロッパの街中でPepperと接する機会が増えるかもしれない。
インダストリー4.0とロボット
CEBITはドイツでの展示会ということで、インダストリー4.0やFA(ファクトリーオートメーション)関係の展示も目立った。HuaweiのブースではHIK VISION(ハイクビジョン)社の倉庫ロボットを組み込んだソリューションが展示されていた。
DFKI(ドイツ人工知能研究センター)は複数の異なるメーカー、異なる形状の協働ロボットを一元管理するソリューションを展示していた。協働ロボット版MUJINといったところだろうか。
日本からはソニーセミコンダクタソリューションズが出展していて、FA向けのセンサ類を展示していた。
先端テクノロジーの集まるd!tec
d!tecではスタートアップや研究機関が中心に展示を行っていた。また、アクセラレーター、国や地域、テクノロジー単位でまとまったブースを出展しているところもあった。様々な技術やサービス、プロダクトが展示されていてエリアとしてかなりの勢いを感じた。生まれ変わったCEBITのコンセプトを一番特徴的に現しているといえる。
d!tecでも、下記の写真や動画で示す通り、様々なロボットが展示されていた。
日本と欧州の連携を目指して
またd!tecでは、日本の企業がまとまってジャパン・パビリオンとして出展していた。昨年(2017年)は日本がCeBITのパートナーカントリーを務めたため、ジャパン・パビリオンとして118社が出展して話題となったが、今年は日本企業の出展は全体で28社、ジャパン・パビリオンとしての出展は21社にとどまっていた。このジャパン・パビリオンのロボットでは、「BOOCO」や「Qoobo」、「ビッグクラッピー」などが展示されていた。
ジャパン・パビリオンに出展した21社のうち8割が中小企業とのことで、主催のJETRO(ジェトロ)としては、日独中小企業間の連携促進に取り組む狙いがあるという。
また、東京都の運営する「Access to Tokyo」や日欧産業協力センターもブースを構えて、欧州企業の日本誘致や日本企業の欧州進出サポートに関する展示を行っていた。
日本企業の出展数自体は昨年に比べて少なく派手さはなかったが、今後こうした日本と欧州の連携を目指す取り組みが実を結んでいくことを期待したい。
ボーダフォンパビリオンでの建機とロボットを使った5G体験デモ
d!campusでは様々な企業のパビリオンが出展されていた。ロボットの活用で目立ったのは、ボーダフォンのパビリオンで行われた5G関連の展示だ。
5Gの体験デモとして、建設機械(クレーン)とロボットを使ったデモが用意されていた。
建機のデモでは、数百メートル離れたフィールドに設置されたクレーンを遠隔操縦するもので、カメラを切り替えながらクレーンの動きを確認しながら操縦できた。なお、CEBIT会場は晴れていたところ、カメラ映像では雨が降っていたため、よりリアリティを感じることができた。
ロボットのデモは2台のアームロボットの動きを同期させるマスタースレーブ制御のデモで、ドイツのFranka Emika(フランカ・エミカ)社の協働ロボットが使われていた。フランカ・エミカは創業が2016年で新興の企業だが、今回のCEBIT会場ではこのロボットを目にする機会が多く、ドイツの協働ロボットにおける同社の存在感を示していた。
ロボットバンド「Compressorhead」の熱狂ライブ
d!campusの野外ステージではバンドやDJなど様々なライブが行われていたが、中でもCEBITならではと言えるのがロボットバンド、Compressorhead(コンプレッサーヘッド)のライブだ。2013年に結成されたドイツ出身の6人(6体?)組バンドで、ジャンルはもちろんヘビーメタル。2017年にCDデビューもしている。
ギターやベース、ドラムなどの楽器をロボットが実際に演奏しているのだが、例えばリードギターは78本あるという指を巧みに操るなど、人間離れしたプレイスタイルだった。ぜひ動画でそのプレイをご覧いただきたい。
Boston DynamicsのSpotMiniがd!talkに登場
d!talkとして行われていた様々なカンファレンスの中、ロボットのテーマで最も注目を集めていたのがBoston Dynamics(ボストン・ダイナミクス)のファウンダー・CEOのMarc Raibert(マーク・レイバート)氏のセッションだった。この模様は別記事にてお届けする。
これからのCEBITとデジタルトランスフォーメーション
CEBITでは「digital transformation(デジタルトランスフォーメーション、デジタルへの移行)」という言葉が盛んに使われていた。今回のCEBITのリニューアルはデジタルフォーメーションにフォーカスしたものだった。フェスティバルの要素が加わったことで、スタートアップなどの参加が増えたが、元々のBtoB向けITソリューション展示会の色が残っていて、まだまだ堅めの企業や展示が多かった印象だ。
ロボットに関して言うと、BtoBがメインのイベントのためコンシューマ向け製品はほとんどなく、目立ったロボットもあまり多くなかった印象だ。逆に言うと、この分野でのロボットの活躍が今後期待されると言える。
次回2019年では「d!conomy」と「d!tec」が統合され「d!expo」となるようだ。大企業とスタートアップの垣根をなくし、よりデジタルトランスフォーメーションを促進していく狙いだろう。CEBIT自体がこれからどうトランスフォーメーションしていくのか、その中でロボットがどんな存在感を示していくのか、注目していきたい。
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小野哲晴アスラテックのロボットコンサルタント。 2005年、ソフトバンク入社。法人向け/コンシューマ向けの両面において、さまざまなサービスの企画・運用に従事する。2010年、Ustream Asiaにてライブ映像配信サービスの立ち上げに参画し、プロダクトマネジメント、広告運用、ローカライズ、コンテンツ制作を担当。その後、国内最大手SNS運営会社勤務を経て、2016年よりアスラテックに転身。