8月25日(土)、東京大学の安田講堂にて、ヒューマンアカデミーロボット教室が主催する子供達のロボットコンテスト「第8回 ヒューマンアカデミーロボット教室全国大会」が開催されました。
ロボットクリエイターの高橋智隆さんが審査委員長を務めるこの大会は、未来のロボットクリエイターを目指す子供達が集まり、日頃ヒューマンアカデミーロボット教室で培ってきた技術とアイディアを披露する場です。全国大会には572名がエントリーし、精鋭となる38名が東大・安田講堂に集結。アイデア部門(26名)・テクニカル部門(12名)に別れてコンテストを競いました。
本記事では「アイデア部門」の模様をお届けしていきます。
アイデア部門は、未就学児が対象となるプライマリーコースから、ベーシックコースやミドルコースを経て参加可能なアドバンスコース/アドバンスプログラミングコースまで、複数のコースに別れています。
当日は全部で26の発表が行われ、それぞれが特徴的で聞いていて楽しいプレゼンでしたが、その中から面白かったロボットをご紹介していきます。
「体の不自由な人のためにロボットを作りたい」 MVPは本をめくるロボット
全体のMVPに選ばれたのは、大阪府狭山池前教室に通う小学五年生の出張幸樹くんのロボット「めくろう、めくろう、めくろーボ」でした。
「僕は将来、ロボットクリエイターになったら、体の不自由な人のためのロボットを作りたい」という言葉から始まったプレゼンテーション。
「めくろう、めくろう、めくろーボ」は、手の不自由な人のために作ったという、本のページをめくるロボットです。光センサーと音センサーを活用し、短く息を吹きかけると次のページへ、長く息を吹きかけると前のページに戻るという仕様。紙と接する部分にはタイヤが使われていて、タイヤのゴムを裏返しにすることで、ページをめくりやすいようにしているなど、細かいところにも工夫が見られました。
「上に乗っているロボットは高橋智隆先生の『ロボットの天才』を読んでいます」という細かい芸にも、会場から笑いと拍手が起こりました。
ロボットが壊れてもその場ですぐに修復して一生懸命に話をする姿と、出張くんの人柄、ロボットの完成度に、会場全体が引き込まれているのがわかるプレゼンテーションでした。
審査委員長の高橋智隆さんからは、「実は私もカリキュラムを考える中で、本をめくるロボットを作ろうとしました。その時に僕が経験した苦労は、ページが戻ってしまったり、5ページくらい一気にめくれてしまうことでした。同じロボットを作ろうとしたライバルとして、その出来栄えを楽しみに見ていましたが、素晴らしい出来でした。タイヤのゴムを裏返しにしたり、息を吹きかけるアイデアなど、コントロールするための入力装置にも工夫が見られました。」と評価。見事MVPに輝き、MVP賞として完成版ロビが贈られました。
新設のプログラミングコース最優秀賞は「計算ロボット」
昨年から新たに開設されたアドバンスプログラミングコース。こちらは、ロボットの機構を学ぶだけでなく、それをプログラミングによって動かす方法を学ぶコースです。同コースの最優秀賞に輝いたのは、大阪府狭山池前教室に通う小学五年生の花園明良くんの「計算ロボット」でした。花園くんは、過去に2年連続でMVPに輝いています。
花園くんが作ったこの時計のような見た目の「計算ロボット」は、1桁の盤と10桁の盤が連動し、足し算や引き算をわかりやすく行なうことが出来るというもの。光センサーを活用して、ボタンを押している秒数に応じて数字が入力され、入力された数字に合わせて、針が動きます。モードを切り替えることで足し算と引き算を行うことができ、子供達が視覚的に計算を学ぶのに適したロボットでした。
高橋さんからは、「渋いロボット。コンピュータはもともと計算をするためのロボット。今回のものは、算数を楽しみながら教えてくれるロボット。発想も面白いし、仕組みも面白い」とのコメント。
未就学児のロボットも面白い
プライマリーコースに通う「未就学児」、いわゆる小学生に上がる前の子供達が作ったロボットもとても興味深かったです。
5歳や6歳でアイデアを考えてロボットを作り、それを何百人という人の前でプレゼンするというのだから、ここに出場しているだけで賞賛に値します。
「将来機械エンジニアになりたい」と話す、茨城県・小美玉堅倉教室に通う山本清正くん(5歳)が作ったのが、トラクターロボットです。走りながら後ろを耕すトラクターロボット。アタッチメントも用意されており、それをつけると全く違った走りを見せます。会場からも大きな拍手が送られました。
審査員の一人ヴイストンの大和社長からは、「プレゼンがしっかりしていました。また、機械エンジニアになりたいということで、アタッチメントを作るなどプラスアルファの要素が取り入れられていて、素晴らしいと思いました」とコメント。
兵庫県夙川教室に通う年長の前中隆臣くんが作ったのが「スタンプのポンちゃん」というロボット。「スタンプが好きで、いろんな場所のスタンプを集めています。だから作りました」とロボットを作った背景も説明。ボタンを押すと、アームが動いてスタンプが押される仕組みのロボットでした。高橋さんは「工夫して作ったのがよくわかります。このロボットがいろんな観光地に置いてあって、スタンプを押してくれたら、もっと楽しくなりますね」とコメント。
この他にも、早川彩斗くんのいかだをこぐロボット「いかだくん」、森近琉世くんの救助飛行機「レスキューバード」など、面白いアイデアが発表されました。みんな本当にすごかったです。
そして、今大会には、海外の「ヒューマンアカデミーロボット教室」に通う子供達もエントリー。ヒューマンアカデミーロボット教室は、中国や台湾にも進出しています。
そんな海外から参加し、プライマリーコースにエントリーした上海・静安稚麦街教室に通う朱嘉睿くんの「投石ロボット」が、同コースの最優秀賞に選ばれました。
この投石ロボットは、発射台に入れたBB弾を連続して投げることが出来るロボット。ボタンを押すと飛ばせるというシンプルな仕組みでしたが、連続して飛ばす工夫などが見られました。
高橋智隆さんから、プライマリーコースで発表した子供達に対して、「素晴らしいロボットを発表してくれたこの子たちと同じ年の頃、私はこんなにできませんでした。プライマリーコースを作る時、まさかこんなアイデアコンテストが出来るとは思っていませんでした。子供達はまだいろんなものに巡り合っていないだけで、ロボット教室のような場を与えてあげると大活躍をしてくれるんだと感じました」と総評。本当に素晴らしい発表の連続でした。
他のコースのロボットも全てご紹介したいところではありますが、今回ご紹介するのはここまで。気になった方は近日公開予定のヒューマンアカデミーロボット教室 全国大会の公式動画をご覧ください。
会場での子供達の行動に驚き
プレゼンもさることながら、発表の合間に子供達が見せた行動にも驚かされました。
当日、猛暑対策のため、子供達には主催者から市販の小型扇風機が配られました。それは、ボタンを押すと小さなプロペラが回るという仕組みのものです。驚いたのは、その小型扇風機を、子供達が会場の至る所で分解していたこと。仕組みを勉強し、改造しようとしていたのです。プロペラを飛ばせるように改造していた子も見かけました。ロボット開発者に必要な「ものづくりへの好奇心」を、小学生くらいの子供達がすでに持っていたのです。
子供達のロボットとプレゼン、そして合間に見せた好奇心など、終始「ヒューマンアカデミーロボット教室」に驚かされた1日でした。
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望月 亮輔1988年生まれ、静岡県出身。元ロボスタ編集長。2014年12月、ロボスタの前身であるロボット情報WEBマガジン「ロボットドットインフォ」を立ち上げ、翌2015年4月ロボットドットインフォ株式会社として法人化。その後、ロボットスタートに事業を売却し、同社内にて新たなロボットメディアの立ち上げに加わる。