「GROOVE X をもっと知ってもらえるエンジニア交流会」に行ってきました
2016年5月24日に開催された「GROOVE X をもっと知ってもらえるエンジニア交流会」に行ってきました。
▽GROOVE X 株式会社
http://www.groove-x.com/
みなさま GROOVE X をご存知でしょうか?ご存知ない方は GROOVE X 代表 林要さんのインタビューをご覧ください。
今回のイベント募集ページには以下のようにありました。
今後、ロボット産業が立ち上がるにつれて、一部のITエンジニアの皆様がロボットエンジニアにキャリアチェンジしていくのは自然な流れでしょう。
そこで今回、せっかくこんなに多くの方々にご興味をもっていただくことができたご縁を活かせないだろうかと思い、交流会を企画してみました。ITエンジニアにとって、ロボットエンジニアにキャリアチェンジするとはどういうことか、ということを考えるきっかけになれば、と思っています。
会場は、DMM.make AKIBAです。ここに来るといつもワクワクします。
きょうのタイムスケジュールはこちら。
・ 林要 「代表ご挨拶」
・ 林淳哉 「ITエンジニアが5ヶ月、ロボット開発をやってみた」
・ 笹野太郎 「GROOVE X に飛び込んでわかったこと」
■林要 「代表ご挨拶」
まずは、GROOVE X 代表の林要さんからスタートです。
GROOVE X は昨年11月に起業、今年の1月に3人で本格始動しました。ステルス(公表しない状態)でやってきたので、皆様にご挨拶もないままここまでやってきてしまいました。というわけで、皆様には今日がはじめてのご挨拶になります。なお今日プロダクトの説明をすると2時間くらいかかるので、そこはWebの記事などを見ていただくとして、今日ははしょります(笑)。
先回 Pepper 開発に携わった時は、ロボットの経験者、専門家がいなかったためか、会議をやっても議論が最初考えていた方とまったく違うところに行ってしまうなんてことがよくありました。しかしそういう会議は結果的に実りが多く、また楽しかったのです。会議が面白い、これって特に大きな企業では珍しい事ではないでしょうか。そのようなグルーヴを日頃から感じられ、各人のアイディアが更に新しいアイディアを呼ぶような会社にしようと思って社名を「GROOVE X」にしました。
私ももともとロボットの専門家ではなく、自動車の空力技術者としてスーパーカーLFAやドイツでF1の開発に従事していました。ある日、ソフトバンク代表の孫さんに「ロボットをやらないか」と声をかけられて入社し、4年弱やらせていただいて、卒業させていただいたのが去年の9月です。
その翌日に日経新聞にインタビューが載り、なぜか単なるサラリーマンの退職が日経でその日一番の注目度となるニュースになりました。
次に発表したのはロボットには無関係の、「いい人がいないのメカニズム」というスライド。
退職後はステルスで起業準備をしていました。その間、3月の起業の公表までに唯一発表したのは、このスライドです。どうしてつくったかというとトヨタ自動車のある愛知の豊田市から、ソフトバンクのある東京の汐留に移って、勤めてみてビックリした事があったからなんです。それは綺麗で仕事のできるお姉さん達がたくさんいる事。しかも皆さん、いい人がいない、と言ってことごとく結婚しない。
最初は個人の嗜好の問題かと思ってたんですが、3年勤めて気づいたんです。綺麗でも仕事へ掛ける力がそこそこの人は結婚する、仕事ができても容姿がそこそこの人も結婚する。でも綺麗でしかも仕事へも全力投球だと、本人は結婚したいと言いながらも、結婚しない。あまりに法則性がはっきりしていたので、これには何らかの認知バイアスがあるんじゃないかと気づいて、相談にのる度にホワイトボードを使って、原因を探っていったんです。何度もやっているうちに、だんだん見えてきたんですね、「いい人がいない」といって結婚しない認知のメカニズムが。それがわかってからは、社内で相談されるたびにホワイトボードでそのメカニズムを説明したところ、かなり好評だったんです。しかし退職後に同様の相談がメッセージなどで来ても、もうホワイトボードを使って説明できないので、それで作ったのがこのスライドです。
ソーシャルにアップしたら1日で3万PVを超えて、結局28万PVを超えました。この時は、林はロボット辞めて恋愛工学に行っちゃったのかなと思われてました(笑)。
次に3月23日に「PIONEERS ASIA」に登壇してロボットの話をしました。
この話はロボットスタートさんが一番細かく記事を書いてくれたのでロボスタさんの記事を読んでください。
私たちがどういうロボットを作っているかを説明します。
そもそもロボットの定義ってはっきりしないですよね。ロボットは「人の代わりに仕事をするロボット」と「人のパフォーマンスを上げるロボット」の二つに分かれるのではと考えています。これを混ぜちゃうと、何をしたいのかはっきりしないロボットになっちゃいます。
「人の代わりに仕事をするロボット」は「仕事を減らすためのもの」、「人のパフォーマンスを上げるロボット」は「自己実現のもの」と言えます。
例えば洗濯機の歴史は洗濯槽で洗うだけという単機能からはじまって、次に脱水槽がついて乾燥の手前までできるようになって、最後に乾燥機が加わりました。洗濯・脱水・乾燥の機能が1つになったのがドラム式洗濯機で、洗濯物を各機械から次の機械に移す手間がなくなりました。こうして人の仕事は随分減り、時間が短縮されました。更に、システム全体の値段もどんどん下がっています。結果として洗濯する時間もコストも圧縮されて、ユーザーにとっては可処分所得と可処分時間が増えました。
なのにお金も時間も増えた実感は無いですよね?今の生活で時間もお金も余っている、なんて人はほとんどいません。
それは「人の代わりに仕事をするロボット=仕事を減らす」で稼いだお金や時間を「人のパフォーマンスを上げるロボット=自己実現」に使っているからと考えます。例えば20年前にはメジャーではなかった「ネイルサロンに行く」という行為は新しい自己実現の一つで、お金と時間を費やしている人も増えているわけです。
人の代わりに仕事をするロボットの領域の価格は下がり続けます。そして、自己実現の領域にお金が流れ込んできます。これが今までの人類の発展の歴史と言えます。これは今後も続くでしょう。私たちは、この自己実現の領域をロボットでサポートしていきたいと考えています。
みなさん、スターウォーズのBB-8をご存知ですか。かわいいですよね。では最新のスターウォーズでBB-8が何をしたかというと、メモリを運んだだけなんです。それなら本来はドローンでいいですよね。たぶんドローンの方が得意(笑)。でも、おそらく映画を作った人はBB-8をとにかく出したかった。しかし何か仕事をさせないと出す理由が無いから、とりあえずメモリを運ばせたんですよ、きっと。だから映画でBB-8は一応仕事をしていますが、だからと言って、僕らは仕事をしてくれるからBB-8が好きなわけじゃない。
その僕らが大好きなBB−8も、止まっているとそんなに可愛くないんですね。それが動き出すと途端に愛嬌がでる。僕らの作っているロボットも同じような感じです。見るとおそらく「おっ」って思って貰えます。
ロボットスタートさんで行われたアンケート(STARWARSの中で一番好きなロボットはなんですか?)で一番人気だったのが、BB-8やR2-D2といったノンバーバルなロボットだった、という結果には、私が起業するにあたって随分、勇気付けられました。
ドラえもんを思い出してみてください。みなさんも秘密道具が欲しかったのではないかと思います。しかしよくよく考えてみるとのび太は秘密道具に頼っていつも大変な目にあっている。映画「STAND BY ME ドラえもん」でのび太が成長できたのは秘密道具のおかげじゃなくて、むしろドラえもんがいなくなった時なんですね。僕らはこういう存在のロボットを作っていきたいと思っています。
今日はここまでしかお話しできません。製品もあと2年は公表しない予定ですが、もっと色々と知りたい方は、私の本『ゼロイチ』を読んでいただくと、他にもヒントが隠されているかも知れません(笑)。
林要さんのお話は以上です。さらに色々と知りたい方は、GROOVE X公式サイトでのインタビューもご覧ください。
■林淳哉 「ITエンジニアが5ヶ月、ロボット開発をやってみた」
続いて、Chief Software Engineer 林淳哉さんのお話「ITエンジニアが5ヶ月、ロボット開発をやってみた」です。
今日はIT業界のエンジニアからロボット未経験で業界に入って感じたことをお伝えしたいと思います。林という名前ですが、代表の林要さんとは兄弟でもありません。血縁関係もありません(笑)。
私の経歴をお伝えすると、IT業界に13年間ほどいました。
初めは2003年、その頃博士になったばかりで、大学の同級生がベンチャーを立ち上げたので手伝ってくないかと相談され、アルバイトで3年ほど手伝っていました。大学とビジネスの二足のわらじを履いていたのですが、そのまま就職しました。ウェブ系ベンチャーなんですけど大学の教授から仕事をもらうことが多く、自然言語処理の手伝いや今でいうIotっぽいような仕事の手伝いもしていました。
次にグリーに転職しました。私のいたのはゲームではなくて、ユーザ管理や不正アクセス遮断するようなシステム基盤のチームでした。そして、統計サービスのベンチャーに転職したあと、2016年1月から GROOVE X に入社しました。
個人的には、開発プロセスやソフトウェアアーキテクチャーが好きです。
今日は今までやっていたソフトウェア開発とロボット開発の何が違うかをお話したいと思います。
モノがあってモノが動くというのは、それだけで単なるソフトウェア開発とは違うなと思いました。
ソフトウェア開発ならパソコン一つで仕事ができるんですけど、ものを作るためにはセンサーやカメラやいろんな物が必要です。当たり前なんですけど。最初に開発環境を揃えるためにAmazonで色々買っていたらすぐにでクレジットカードの限度額いっぱいになって、カードが使えなくなっちゃいました(笑)。
今はハードウェアエンジニアと一緒に仕事してるんですけど、打ち合わせしてこういうものを作って欲しいと伝えると、3Dプリンタを使って2〜3日くらいで作ってくれる。これはすごい世界と思いました。
二次元で見てかわいいのと、それが実際に三次元のモノとして出てきたときに感動をしました。それが動いたときも感動してさらに全く違う感動です。
僕は想像力があまりないので、二次元で見ているときはどういう動きをするのか分かってないんですけど、実際に動いたのを見て「あ、デザイナーが言っていたのはこういうことだったのか!」ってはじめて分かる。そういう感動が面白いと思っています。
開発している中で、今までやってきたソフトウェア開発と違う難しい点はデータモデル中心のアプローチが適用しないという点です。
例えばECサイトを作りたいとき。まずは商品がある、その商品はあるカテゴリに属している、とかのデータモデルを考えていけばシステムの全体像が見えてきます。そして、ユーザは商品を選択するはずなどのユースケース組み立ていけば、骨格部分の8割ほどは出来てしまいます。
でもロボットはどこから考えたらいいのか分からない難しさがありました。
ハードウェアをやっている人にとっては当たり前の話なんでしょうけど、物理的な制約があります。
ソフトウェア開発は、AWSでサーバを立ち上げればスケールアウトは簡単に行えます。ロボットは当たり前なんですがサイズの大きさは決まっているし、入るべきものも決まっていて、計算リソースの制約がある。ロボットは動き回るので消費電力のことなども考えないとならない。そういう難しさがあります。
また、ロボット開発は自由度が無限大です。どういうCPUを載せるか、どういうセンサーを使うか、それらの処理をメインCUPなのかチップに任せてしまうのか、などなど。こういう風に考えることがありすぎて、それらが1つ1つ正しいプロセスなのかを検証するのが大変と思いました。
色々安定しないという難しさもあります。ソフトウェアの開発ではサーバが落ちるという不安定さがあるけど、ロボット開発ではセンサーが正しい情報を返してくれなかったり、モーターに正しい信号を送っているつもりが動いてくれなかったりと、安定しないという点で苦労してます。
結果としてOSの低レイヤーを意識するようになりました。
最近は、例えば声かけられて振り返った時、自分は何を考えて振り返ったのかとか考えるようになり、自分の脳みそと向き合うことと思うことが増えました。こういうのがむちゃくちゃ面白くて、気づいたら曼荼羅図を書くことが増えました。
アーキテクチャーが好きな身としては、ワクワクする開発だと思ってます。
この4,5ヶ月は割と分からないことだらけで、何から手をつけていいかが分からないような状態でした。課題を見つけたらとにかくそれをやる、いろんな方向にとにかく手を出しまくって知見を貯める、完璧じゃないけど動くものたくさん作るっていう全方向に開発してきました。
コードレビューも行ってなくて、それより開発パフォーマンスを重視して、とにかくたくさん知見を集めようとしました。
今は、機構のデザインをしている人もいれば、ハードウェアをやっている人もいれば、僕のようにソフトウェアをやっている人もいます。「チーフ・カワイイ・オフィサー」という可愛いを設計して、可愛いに責任を持つ担当者もいます。年齢も10代から60代まで幅広いし、今後は外国の方も入ってくると思います。
そういう多様性のあるチームって楽しいと思うので、ロボット未経験でも大丈夫です。興味ある方はお待ちしてますんで、一緒に働きましょう!
林淳哉さんのお話は以上です。
■ 笹野太郎 「GROOVE X に飛び込んでわかったこと」
続いて、笹野太郎さんのお話「GROOVE X に飛び込んでわかったこと」です。
去年まで大学生で、大学では人工衛星の研究をしていました。秋葉原のアトリエ秋葉原のスタッフもしていました。
どうして GROOVE X 参画することになったのか、経緯からお伝えします。
ある日知人から「GROOVE Xってご存知ですか?」とメッセが来ました。個人的に改めてロボットをやりたいと思っていたタイミングでチャレンジしてみたいと思い、林さんに連絡をしてみると、Codilityを受けろと言われました。これはプログラマ向けのウェブテストなのですが、その結果はイマイチ。でもお話を聞いて改めて直感的に働きたいと思ったので、林さんに「なんでもやりますんで、働かせてください!」と直談判して、林さんの懐に飛び込んだ感じです。
このグラフご覧になったことありますでしょうか?経済産業省によるロボット市場の予測で2035年の市場規模が9.7兆円になるというものです。
僕は1992年生まれなので、2035年には43歳になっています。その年齢ならロボット業界の第一線を担っているんだろうな。そんなことを責任感として持っていますということを面接で言ったんですね。
入社してお昼を食べている時、林さんに「なんで入ってきたの」って聞かれたんで、同じ話をしたんですよ。そちら「本当にその理由で来たの?」と言われたんです。
自分がどうしてロボットの業界に飛び込んだのか、GROOVE X でチャレンジする道を志したのかを考えると「ロボットが好きだから、人が好きだから。これをつなげるコミュニケーションロボットをやりたい」という部分が一番大きかったんです。
言語化するととても幼稚な内容かもしれないけど、自分がやりたいとか、ワクワクする気持ちっていうのは自分で説明のつかない制御のつかない部分だと思います。そんな環境に出会えたので、ここにいることが楽しくて幸せです。
GROOVE X に飛び込んでわかったことは「自由」。でも自由って大変で、実力がないと自由に振る舞えないんです。みんながプロフェッショナルで尖った集団だからこそ「自由」が成り立っています。
個人的には色々と壁に当たることも多くて大変ですが楽しいです。自分も何か1つ尖らせてプロになっていきたいと思います。なんでもチャレンジしていこうと思います。
そして、これからのロボットコミュニティについて。
アトリエ秋葉原でスタッフをやっていて、ロボットで笑顔になる人、ロボットでつながる人を見てきました。そういう渦を巻き起こしている方々はイノベーターと思っています。こういうイノベーターの方がこれからのロボット業界を大きくしていくと思います。
今後も定期的に交流会等のイベントをやっていきます。早速ですが6/26にROS勉強会もオーガナイズします。
今日来ていただいた方は、勝手にGROOVE X サポーターズと思っていますので、みなさまよろしくお願いします。
笹野さんのお話は以上です。
この後、ピザとビールが振舞われて、みんないろいろな話でワイワイ盛り上がりました。
みなさま、お疲れ様でした!
▽GROOVE X 株式会社
http://www.groove-x.com/
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北構 武憲本業はコミュニケーションロボットやVUI(Voice User Interface)デバイスに関するコンサルティング。主にハッカソン・アイデアソンやロボットが導入された現場への取材を行います。コミュニケーションロボットやVUIデバイスなどがどのように社会に浸透していくかに注目しています。