【森山和道のロボットの見方 vol.5】医薬品・化粧品業界でのロボット活用 インターフェックスジャパン2016 開催

2016年6月29日から7月1日の日程で、医薬・化粧品業界の専門技術展「第29回 インターフェックスジャパン(http://www.interphex.jp/)」が東京ビッグサイトで開催されている。業界関係者のための商談展で一般は入場できない、医薬品・化粧品・洗剤などの研究・製造技術に関する展示会だ。クリーンな環境でバイオの実験や医薬品の搬送などを行うことができるロボット産業利用について、各ブースの様子から、ざっとレポートする。



ダイヘン

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ダイヘン「医薬・医療向け6軸垂直多関節型クリーンロボット」

株式会社ダイヘン(http://www.daihen.co.jp/)・クリーンロボット事業部は、医薬・医療向け6軸垂直多関節型クリーンロボットや、円筒座標型のダブルアーム構造の搬送ロボットを使ったプレートの保管庫システムを出展していた。

6軸垂直多関節型クリーンロボットは過酸化水素を使った滅菌洗浄を行うことができ、IP65の防塵・防滴性能を持つ。一つのコントローラーで4台までのロボットアームをコントロールできるという。今年の秋に市場に投入予定。


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ダイヘン ダブルアーム搬送ロボット

再生医療や医薬品製造のほか、食品・飲料分野への適用を想定しているという。ロボットによる自動化によって、コンタミネーション(異物の混入)や、品質のばらつきを防ぐことができる。



デンソーウェーブ

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デンソーウェーブ -150℃自動検体保管システム

株式会社デンソーウェーブは「細胞培養プロセスを、自動化する」と題して、再生医療向けのソリューション・システムを展開。創薬・バイオ・再生医療関連機器製造メーカーのマイクロニクス株式会社とDENSOの垂直多関節ロボットを使った -150℃の液体窒素タンクへの自動検体保管システムや、1台のロボットと、サブフィンガーとハンドカメラのついた多機能ハンドで細胞培養からシリンジ充填までできる自動細胞培養システムを紹介していた。

自動細胞培養システムは、NEDO「ロボット活用型市場化適用技術開発プロジェクト」に採択されたもので現在開発中。シリンジのプランジャーを操作できるサブフィンガーの動きがユニークだ。


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デンソーウェーブ コンパクト自動細胞培養システム

熟練作業者の動きをロボットで再現し、高品質な細胞培養を実現できる。ロボットを活用することで検体の取り違えを減らし、作業時間の短縮による品質確保が可能になる。また、作業員の安全も確保できる。


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デンソーウェーブ ロボットによる熟練作業者の再現

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小型協調ロボット「COBOTTA(コボッタ)」も試験管を振っていた


安川電機

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安川電機「水質検査前処理用ロボットセル」

株式会社安川電機は、双腕ロボットを使った「薬液充填用ロボットセル」と、今回新たに出展された垂直多関節ロボットを使った「水質検査前処理用ロボットセル」を出展。デモを行っていた。いずれも実際の作業とほぼ同じだという。


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安川電機「薬液充填用ロボットセル」

また、受付では「やすまるくん」という受付ロボットが首と腕を動かして愛想を振りまいていた。


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やすまるくん(左)。右はフィギュア


川崎重工業

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川崎重工業 オールステンレスロボットによる凍結乾燥炉のハンドリング

川崎重工業株式会社はカワサキグループの株式会社アーステクニカのブースで、オールステンレスロボットによる凍結乾燥炉のハンドリングのデモと、2015年6月に発売された双腕スカラー型ロボット「duAro(デュアロ)」を出展。凍結乾燥炉とは液体から水分を気化させて乾燥させる機械。デモでは液体の搬送で代用していた。


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川崎重工業 双腕スカラー型ロボット「duAro(デュアロ)」

「duAro」は3Dビジョンセンサーを使った、サイコロキューブの仕分け作業をデモしていた。duAroはレンタルによる「ロボット派遣」も行っているという。




ファナック

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ファナックブース

ファナックはすっかりおなじみになりつつあるパラレルリンクを使った「ゲンコツロボット」によるパッケージの搬送、iRVision(カメラ)とばら積みロボットによる容器の整列、緑の協働ロボットをデモしていた。


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ばら積みロボットによる容器の整列

ばら積みロボットは2台のロボットによる作業で、一台はバッファ台を使って作業速度を調整する。細かい作り込みが面白い。


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ファナック協働ロボット「CR-35iA」

「CR-35iA」はハンドガイドを使って人間と一緒に18kgのダンボール箱を運ぶデモを行っていた。安全柵が不要で、人間がハンドガイドで位置を微調整する。35kgまでの物体を運ぶことができるという。


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ファナック協働ロボット「CR-7iA/L」

より小型のロボット「CR-7iA/L」では、ロボットのどこを触っても停止するというデモを行っていた。

ゲンコツロボットによるパッケージの搬送

ゲンコツロボットが白いのは、汚れに敏感な食品・医薬品業界用だ。



デクシス

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デクシス「外観けんた君」

表面検査装置、外観検査装置を事業とする株式会社デクシスは、ABBの「YuMi」にカメラを加えた、人型の外観検査ロボット「外観けんた君」を参考出展していた。YuMiの基部につけられたカメラを使って人間が行っている目視検査を行い、異物や欠陥を発見すると、手でカメラ近くにワークを引き寄せて確認し、本当に異物があれば横によける。

このほか、キャッピング作業や、箱詰め、組み立て、ネジしめもできるとアピールしていた。来年の製品化を予定している。



紀州技研工業

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紀州技研工業「ロボット印字システム」

インクジェットプリンターの紀州技研工業株式会社は、ファナックのロボットにインクジェットプリンターを搭載し、ベルトコンベアー上を流れる化粧箱や缶に直接印字するというデモを行っていた。1ヘッドだがロボットアームを使うことで、多面・多行印字ができる。

コンベア上を流す物体の形状は事前に覚えさせておく。たとえば立方体の物体が15度程度傾いていても対応できるという。取り付けられたプリンターは紀州技研工業製で、600dpiの産業用インクジェットプリンター。なお、今回のデモでは客に見えやすいように腕先を回り込ませて印字している。



日本電産シンポ

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日本電産シンポ 無人搬送台車「S-CART(エスカート)」

日本電産シンポ株式会社は、無人搬送台車「S-CART(エスカート)」を出展。高さ20cmの低床型ロボット台車で、100kg程度の物体を運べる。運ぶものが棚などで、ある程度それ自体が重さを支える場合は、400kg程度まで対応できるという。

タブレットでの操作のほか、レーザーセンサーを使っているので磁気ガイドテープなしで走行が可能。バッテリーはリチウムイオンで、連続稼働時間は8時間。独自開発のサスペンションを搭載しており走行安定性は高く、またメンテナンス性も高い車体構造となっているという。

ただし、今回は静展示だったので、「機械技術要素展(ものづくりワールド2016)」で出展されていたときのデモを動画でご紹介する。さらに大型のもののほか、プラットフォームとして台車以外の展開も考えているという。

「機械技術要素展(ものづくりワールド2016)」での様子


ユーピーアール

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ユーピーアールによるパワーアシストスーツの出展

物流機器のレンタルおよび販売会社であるユーピーアール株式会社は、アクティブリンク株式会社によるパワースーツ「AWN-03」と、株式会社イノフィスの「マッスルスーツ」をそれぞれ出展。ユーピーアールは、両社のパワードスーツを販売・レンタルしている。

価格は導入形態にもよるが、おおよそでアクテイブリンクのものが販売価格が120万円、レンタルの場合10万円/月、イノフィスのマッスルスーツがその半額の60万円、レンタルで5万円とのこと。

価格がずいぶん違うが、それぞれの評価は顧客の使い方によって異なるとのことだった。



西部電機

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西部電機「電動アシスト機能つき台車」

西部電機株式会社は、物流現場用の電動アシスト機能つき台車を参考出展。手元で速度操作する電動台車と違って、オペレーターの押す力に反応して機能するため、ストレスがなく扱える。


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押すとアシストしてくれる

電動アシスト機能によって、重たいピッキング用台車の発進や停止が、大幅に楽になり、女性や高齢者でも軽い負担で扱えるようになる。時給換算で100円くらいで、運搬・仕分け作業の軽労化に有効だとアピールしていた。



そのほか

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ダイソン「Airblade」

ダイソンはハンドドライヤー「Airblade」を出展していた。他社のハンドドライヤーより清潔であり、乾燥時間も早いという。日本の通常の商流では新規業者はなかなか参入しにくい業界だが、同社は掃除機を通じて培ったブランド力も活用しながら、施主に直接アピールすることで、徐々にシェアを伸ばしているという。


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熊本県では半導体製造をプッシュ

このほか、震災や水害の被害を受けている熊本県ブースでは、半導体製造をアピールしていた。


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株式会社池松機工によるマグネシウム合金製の竹とんぼ。

また、マグネシウム加工もアピールされていて、軸の部分に「くまモン」があしらわれているマグネシウム合金製の竹とんぼは、実際に飛ばすこともできるとのことだった。同社はこのほか、マグネシウム合金を使った血管内用ステントなどを製造している。このステントは人体にそのまま吸収されるため、いま注目されているとのことだった。

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森山 和道

フリーランスのサイエンスライター。1970年生。愛媛県宇和島市出身。1993年に広島大学理学部地質学科卒業。同年、NHKにディレクターとして入局。教育番組、芸能系生放送番組、ポップな科学番組等の制作に従事する。1997年8月末日退職。フリーライターになる。現在、科学技術分野全般を対象に取材執筆を行う。特に脳科学、ロボティクス、インターフェースデザイン分野。研究者インタビューを得意とする。WEB:http://moriyama.com/ Twitter:https://twitter.com/kmoriyama 著書:ロボットパークは大さわぎ! (学研まんが科学ふしぎクエスト)が好評発売中!

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