Softbank World 2016初日、16:30から行われた「AI×ロボットの最新トレンドおよびビジネス活用~実用的なAI・ロボットの世界~」のレポートです。
パネリストとして登壇されたのは、HEROZ株式会社 人工知能エンジニア 将棋プログラムPonanza開発者 山本一成氏、ロボットスタート株式会社 執行役員 ロボスタ編集長 望月 亮輔氏、日本アイ・ビー・エム株式会社 東京ソフトウエア&システム開発研究所 クラウド開発 部長 浦本直彦氏の3名。そしてモデレーターはAOLオンライン・ジャパン株式会社 TechCrunch Japan編集長 西村賢氏。
プログラム概要は以下の通り。
「AI・ロボット領域の最新技術および市場動向。国内・海外事例から学ぶ今すぐ実現できるリアリティーのあるビジネス活用。そして、その進化がもたらす未来予測。」をテーマに、著名な方々をパネリストとしてお招きし、ディスカッションを行います。
人工知能の今
浦本氏による人工知能の歴史の紹介。今、第三次人工知能ブームで、楽観的な健全さで盛り上がっていると考えているそうです。
Watsonがクイズに勝ち、そしてビジネス的に金融から始まって、広がりがでてきているのが今回のブームの特徴といえるとのこと。
ディスカッション開始!
お待ちかね、パネルディスカッションが始まりました。
はじめに西村氏によるロボット・AIを汎用・専用、バーチャル、フィジカルに4象限に分類した図の説明。非常にわかりやすい分類です。
国内のAI市場規模は2030年87兆円にまで成長すると予測するデータの紹介。
望月氏によるロボスタ製コミュニケーションロボットのカオスマップの紹介。3ヶ月ごとにアップデートして公開しています。
多様なロボットが登場し、それを取り巻くロボット業界全体が盛り上がってきている状況にあるとのこと。
Watsonについて
浦本氏によれば、汎用的なAIを志向するというより、IBM Watoson APIでの提供により様々な活用スタイルを提供していく方向にあるとのこと。これによりバリューの高いソリューションを提供することができると考えているそうです。
パートナーの拡大のため、現在既にハッカソン3回実施、各種ハンズオン、そして最近ではガレージと呼ばれる顧客と一緒に考えプロトタイプまで作りこむなどの取り組みを行っているとのこと。
AIは、データが集まらないといけないが、Watsonはビジネス上の課題を解決するものであり、アカデミックでは汎用人工知能を目指している人もいるが、IBMとしてはビジネスそれぞれの分野に向き合った形で対応していく方向だそうです。
専用AI
山本氏は将棋で人間に勝つ専用AIを開発しています。既にチェスは人間のサポートが無いほうが強い状態にあり、近い将来、将棋もそうなる可能性が高いとのこと。
もはやAIが提示した手が、いい打ち手かどうか、人間のプロすら判断できなくなってきているのだそうです。人間の方が固定観念に縛られており、AIのクリエィティビティは既に人間以上の状況にあるとのこと。
今後AIが進化したとしても、人間はコスト面で安いので、そういう仕事はAIに置き換えられることはないと考えているそうです。
人間とロボット・AIの関係性
望月氏「ロボットが人間の仕事を奪うかというテーマに対して、簡単な作業はロボットに置き換えられるが、人間は別の違うことをやるだろう。」
ハウステンボスの変なホテル、変なレストランなどで人間とロボットが一緒に働くというのがパフォーマンスを発揮するのではないかと実例を上げました。
山本氏「人間の方が温かみがあるのは今だけではないか。基本的にAI/ロボットに人間は勝てなくなるだろう。」
西村氏「編集長の仕事も機械化される部分はあるだろう。人間でしかできない仕事が残ると考える。」
浦本氏「人間とロボット・AIは、なんらかの共存が図られるようになるのではないか。」
西村氏「どのぐらいの速度でそうなるのかはわからないが、仕事がなくなるのは楽しみでもある。」
家庭用ロボット、フィジカルなロボット
フィジカルなロボットはなぜ必要なのかという議論について。望月氏、「バーチャルな画像認識+フィジカルなロボットアームの組み合わせは非常にインパクトがあり、盛り上がる。またペッパーやロボホンのような人型の方が、愛着は湧きやすい。アマゾンエコーやルンバに比べて話しかけやすいこともある。」
西村氏「ベッドメイキングしてくれるといいが、家事をやってくれないが、今後どうなるのか?」
望月氏「形式知は向上していくが、身体知はまだまだ不十分な状況。体があってこそ学べる領域、こちらのほうが後に来るものだろう。」
今後のビジネス活用について
西村氏「半歩先、2〜3年、どのようにつきあっていけばいいのか?」
浦本氏「Watsonなどがでてきて、開発者の手の中にある状況。それをうまく使って問題を解決してくことがワクワクするし、重要な時代になっている。」
望月氏「ロボットがたくさん出ている状況で、ワクワクするのはいろいろな業界×ロボットといった形でブレストなどをしていくと新しい面白い事業アイディアが出ると思う。」
山本氏「ディープラーニングがここ数年でどこまで伸びるかが注目。画像を見て判断することについては人間よりも上になる。強化学習についてもさらに進化するだろう。Ponanzaは勝率97%で羽生さんに勝つと思います。」
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中橋 義博1970年生まれ。中央大学法学部法律学科卒。大学時代、月刊ASCII編集部でテクニカルライターとして働く。大学卒業後、国内生命保険会社本社において約6年間、保険支払業務システムの企画を担当。その後、ヤフー株式会社で約3年間、PCの検索サービス、モバイルディレクトリ検索サービスの立ち上げに携わる。同社退社後、オーバーチュア株式会社にてサービス立ち上げ前から1年半、サーチリスティングのエディトリアル、コンテントマッチ業務を担当する。2004年に世界初のモバイルリスティングを開始したサーチテリア株式会社を創業、同社代表取締役社長に就任。2011年にサーチテリア株式会社をGMOアドパートナーズ株式会社へ売却。GMOサーチテリア株式会社代表取締役社長、GMOモバイル株式会社取締役を歴任。2014年ロボットスタート株式会社を設立し、現在同社代表取締役社長。著書にダイヤモンド社「モバイルSEM―ケータイ・ビジネスの最先端マーケティング手法」がある。