コミュニケーションロボットの用途とその可能性
そもそもコミュニケーションロボットを何のために買うのか?それはもちろん使うためだ。
どのように?
ということで、コミュニケーションロボットは現在どのように使われているのか、そしてそれは将来どうなるのかを考えてみたい。
ビジネスで使う
まずコンピューターや携帯電話の普及前夜と同じような状況で、現時点では、ビジネスシーンでの利用がコミュニケーションロボットの中心的な使い方になっている。まだ一般ユーザーがロボットを欲しいと思っても、手に届きにくい価格帯のものが多いことも背景にあるだろう。
受付やイベントで使う
PepperやNaoなどを筆頭に、店舗での接客やイベントの司会などで多く使われている。サイズが大きいコミュニケーションロボットならではの使われ方だ。小さいロボットの場合テーブルに置くなどして使われる。
店舗内で使う
小型のコミュニケーションロボットの活用例としては、Sotaを使ったNTTの実証実験や、飲食店のテーブルに設置するTapiaなどがあげられる。大型ロボットに比べて価格は比較的安いため、店舗に1台ではなく、テーブルに1台店舗内に複数台設置して使うこともやりやすい。今後複数台を使う前提での活用方法はさらに広がるだろう。
また店舗での利用において、ニーズがあるのは複数言語に対応する接客アプリだ。オリンピックに向けて海外からの来訪者の増加に対応するのはコミュニケーションロボットの商用利用のひとつの目玉機能でもある。外国語の対応についてはメーカー・機種によってさまざまだが、今後この部分が強化されていくトレンドにあるのは間違いないところだ。
介護施設で使う
コミュニケーションロボットは介護施設において、Palro/Palmiなどの導入事例、テレノイドの実証実験事例などがあげられる。
高齢者でも持ち抱えられるサイズを活かした使われ方と言える。ITリテラシーが低いユーザーに対してもフレンドリーな対応が可能なロボットが施設導入ではポイントになる。今後も高齢化社会に向けて様々なコミュニケーションが活用されていくと予想される。
営業で使う
持ち運べるタイプのロボットであれば営業の現場でロボットを持ち出して、顧客への営業支援をロボットに行わせることは可能だ。
実際にロボットスタートではコミュニケーションロボットを使っての会社説明やサービス説明で何度も利用してきた。当然目新しいことも手伝って顧客には好評だと思う。ただし、これを失礼と思う顧客や、ロボット業界の人間が顧客の場合はおすすめできない。空気を読んだ上で、実施すべきソリューションだ。
この領域は持ち運びが楽でバッテリーが持つロボットが適切で、現状ではRoBoHoNが営業パーソンが日々持ち歩けるツールとしてのポテンシャルを持っていると考える。
ビジネス利用でのポイント
ビジネス利用において、コミュニケーションロボットを選ぶ際に重要なのは、開発環境(SDK=Software Development Kit)が用意されているか否かだ。SDKのあるコミュニケーションロボットがビジネス利用では圧倒的に強い。なぜなら導入企業のニーズに合わせたソリューションは、そのニーズにあった専用アプリを別途開発することが必要になるからだ。
もしSDKが用意されないロボットの場合、メーカーが用意したアプリケーションしか使えない。もちろんそのままで利用ニーズを満たすのであれば問題はないが、ニーズに合わなければ使いにくい、もしくは使えないということになる。
家庭で使う
商用利用ではなく非商用利用、つまりコミュニケーションロボットを家庭で使うことも大きな用途のひとつだ。
パーソナルロボットとして使う
ロボットの普及の一つの到達点として、一人1台以上のロボット所有というイメージがある。そのコンセプトをいち早く具現化したのがRoBoHoNだ。スマートフォンの様に気軽に持ち運んでも使えるため、プライベートなロボットとして利用しやすい。
一般的にパーソナルなロボットの使い方としては、電話帳の管理やスケジュール管理など、パーソナルアシスタントとしてのロボットとして活用法が想定される。もちろん、今後ロボットならではのゲームなども登場すると期待される注目分野だ。
ホームロボットとして使う
家に設置して、家族の複数人が使うスタイルもよくあるイメージだ。漫画「ドラえもん」をイメージするとわかりやすい。
卓上型ロボットのTapia、Unibo、Jiboなどがその代表例だ。家族の顔を識別して、適切なコミュニケーションがとれるのであれば、家族の予定の共有やメッセージングサービスとしての活用が考えられる。また期待されるジャンルとして家庭内の複数のIoTデバイスをコントロールするセンターハブのような役割を担うことも期待されている。IoT普及とともにロボットが果たす役割は大きくなることが予想される。子供に対して、英会話学習に最適化されたMusioなども発売間近だ。教育領域での活用もより拡大する可能性は高い。まだ高齢者に対しての活用もある。Tapiaの場合、家族がスマホを通して高齢者家族を見守ることができる。移動できるBuddyなどは、リモートで家の様子を動きながらモニタリングできるセキュリティマシンとしても使えるだろう。
家庭での利用のポイント
個人のニーズは幅広いため、ロボットメーカーの公式アプリだけではそのニーズを満たすのは難しい。アプリストアが用意され、潤沢なアプリケーションの中から必要なアプリをダウンロードできるタイプのロボットが望ましい。そしてSDKを備えたロボットであることが、潤沢なアプリを生む前提として必要だ。
ビジネス利用においても、家庭での利用においても、SDKの重要性が高いことは繰り返し指摘しておきたい。ワープロ専用機とコンピューター、ガラケーとスマホ、SDKなしのロボットとSDKありのロボット。表面上は似ていてもその利用の多様性・発展性は月とスッポンぐらいに違いがあるのだ。
アプリ開発者が使う
古い話だが、初期のパーソナルコンピューターはBASICと呼ばれるプログラム開発環境のみが用意されていた。
今では全く考えられない状況だが、ユーザーはまずプログラミングをしてアプリを作り、それを実行して使うというものだった。
コミュニケーションロボットの現状はハードルは下がっているものの、初期のコンピューターの時代に似た状況ともいえる。
例えばデベロッパー版のPepperやSotaは、プレインストールアプリはほとんどなく、SDKだけが用意される。幸いなことにSDKはビジュアルプログラミング環境であることも多く、プログラムの難易度は低めになっている。ホビーとして、またアプリ開発受託の仕事としても取り組みやすい分野であると言える。実際にNaoなどは子供向けプログラム学習といった教育分野での活用事例がある。子供でも学べるほどとっつきやすいのだ。
自分でロボットアプリを作って自分で楽しむというのは、実は現状での利用方法のメインストリームじゃないかとも思えるのだ。
将来はどのように使われていくのか?
コンピューターもスマホも、登場した時代のキラーアプリと、現在使っているキラーアプリとは全く違っている。
コンピューターの例では、初期はゲームや会計アプリがキラーアプリだったが、今はある意味「WEBブラウザー」がキラーアプリだろう。スマホも初期の人気アプリと今の人気アプリでは全くラインナップが違っているのは言うまでもない。登場した時には、将来何が主要なアプリケーションになるのかはわからないのだ。ただどちらも共通して言えるのは、プログラムを作れる環境があったからメーカーの予想を遥かに超えた発展を遂げたということだ。
コミュニケーションロボットの使われ方、キラーアプリについても同様、現時点では想像もできないようなアプリが作られて、それがキラーアプリとなっていても全く不思議ではないと思う。
そう考えるとコミュニケーションロボットの未来が本当に楽しみだ。
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中橋 義博1970年生まれ。中央大学法学部法律学科卒。大学時代、月刊ASCII編集部でテクニカルライターとして働く。大学卒業後、国内生命保険会社本社において約6年間、保険支払業務システムの企画を担当。その後、ヤフー株式会社で約3年間、PCの検索サービス、モバイルディレクトリ検索サービスの立ち上げに携わる。同社退社後、オーバーチュア株式会社にてサービス立ち上げ前から1年半、サーチリスティングのエディトリアル、コンテントマッチ業務を担当する。2004年に世界初のモバイルリスティングを開始したサーチテリア株式会社を創業、同社代表取締役社長に就任。2011年にサーチテリア株式会社をGMOアドパートナーズ株式会社へ売却。GMOサーチテリア株式会社代表取締役社長、GMOモバイル株式会社取締役を歴任。2014年ロボットスタート株式会社を設立し、現在同社代表取締役社長。著書にダイヤモンド社「モバイルSEM―ケータイ・ビジネスの最先端マーケティング手法」がある。