富士通のAIとロボティクスは人と繋がってサービスを生み出す Science Robotics Meeting2018から

富士通「ロボピン」

米国科学振興協会/AAASが発行する「Science」誌が、2018年3月12日から14日の3日間の日程で、東京・台場のプラザ平成で「Science Robotics Meeting in Japan 2018」を開催した。AI、IoTならびにCPS (Cyber Physical System)、HRI(Human Robotics Interactive)の3技術カテゴリーからサービスロボットや製造用ロボットに関する様々な研究発表が行われた。

二日目には富士通株式会社 執行役員で、デジタルサービス部門AIサービス事業本部担当の原 裕貴氏が「デジタルトラスフォーメーションの実現に向けて 〜富士通のAI、IoT、ロボティクスへの取組み〜」と題して講演した。レポートする。


富士通株式会社 執行役員で、デジタルサービス部門AIサービス事業本部担当 原 裕貴 氏


人とつながるロボットAIプラットフォーム Zinrai、ロボピン

原氏はまず「Iotやサービスを繋げて価値を生み出す。世の中に対して制御するためにはIoTやロボットが必要だ」と述べた。富士通は長年、AIやロボット関連の研究開発を続けてきている。


富士通のロボット研究の歴史

最近発表しているAIプラットフォームが「Zinrai(http://www.fujitsu.com/jp/solutions/business-technology/ai/ai-zinrai/)」だ。

FUJITSU AI Zinrai : Zinraiプラットフォームサービス

原氏は富士通のロボットAIプラットフォームのコンセプトは「人とつながる」ところであり、AIと一体になったサービスを実現すると述べ、卓上サイズの小型ロボット「ロボピン」を紹介した。

世界のビジネスリーダーからのAIへの期待は高い。富士通はAI研究にも古くから取り組んできた。


富士通のAI研究の歴史

富士通のAIに関する知見や技術を体系化した「Zinrai」のコンセプトが発表されたのは2015年11月(http://pr.fujitsu.com/jp/news/2015/11/2.html)。「Human Centric AI Zinrai」とし、人と協調する、成長し続けることをコンセプトとしている。顧客からの反響でも一番大きな部分はUXで、2番目がナレッジ活用、3番目がアノマリー(異常)の監視だという。


AI適用について顧客の反響で一番大きな部分は「新しいUX」

Zinrai は30種のAPIを提供している。基本的なAPIと目的別のAPIとがあり、今後は特に後者を充実させていくとのこと。


Zinraiの30種のAPI

Zinraiは国立情報学研究所(NII)の「ロボットは東大に入れるか(東ロボくん)」にも参加していた。数学や物理の問題を解くために、富士通独自の数式処理を用いた推論技術、自然言語処理技術を提供した。また、東京海上日動と対話技術を使ったシステムを提供している。機械学習技術を使って、音声データのなかから満足感を探るといった技術の提供も行なっている。

FUJITSU AI Zinrai : 活用シーン ビジネスインテリジェンス編

ウェアラブル型ハンズフリー音声翻訳端末も医療現場向けに開発している(http://pr.fujitsu.com/jp/news/2017/09/19.html)。専門用語や、医療関連独特の言い回しのためのコーパスを学習しているという。課題はまだあるが東京オリンピックに向けて実用化を目指している。

そのほか、働き方に関する事例やニュース記事の自動要約(http://pr.fujitsu.com/jp/news/2018/01/15.html)、レーダー画像からの路面下空洞の自動検知(http://pr.fujitsu.com/jp/news/2017/05/15-2.html)、橋梁の内部損傷の推定(http://pr.fujitsu.com/jp/news/2017/08/28.html)など、各種AI技術活用の事例を紹介した。



ディープラーニング、デジタルアニーラ

ディープラーニング向けプロッセッサ「DLU」

ディープラーニングはリソースが必要だ。富士通は理研、産総研にそれぞれ計算機を納品している。またエッジサイドでも高速動作できるようにチップ「DLU」も開発している。

FUJITSU AI Zinraiプラットフォームサービスを支えるテクノロジー

またデジタル回路を用いたイジング模型専用アーキテクチャの「デジタルアニーラ(http://www.fujitsu.com/jp/digitalannealer/)」にも取り組んでいる。組合わせ最適化問題を高速に解くことができる「デジタルアニーラ」については「本物の量子コンピュータではないが、十分に性能が出せると考えている」と述べた。

投資ポートフォリオ×デジタルアニーラ


説明可能なAI、想定外を想定するAIを目指す

AIと人の将来はどうなる?

最後に、次世代AIへの取り組みとして、AIが普及するとどうなるかといった話題についても触れた。「いずれにしても人間の仕事を徐々にAIが行うようになることは間違いない」と述べて、倫理面の課題についても言及した。特に医療分野では、人間が最終的に判断するにしても、そこまでの理由が理解できるようなアウトプットを出せる「説明可能なAI」が必要だと述べた。



根拠パスを構成できる「説明可能なAI」

また理化学研究所 革新知能統合研究センター(理研AIP)とは、不確実な変化に対してもよりよい判断ができる「想定外を想定するAI」の研究を行っているという。



理研AIPとの取り組み

また、東京オリンピックに向けて、国際体操連盟と提携し、採点支援システムを開発中だと紹介した。2018年カタールで行われる選手権大会においてテスト使用を始めると述べ、講演を締めくくった。

Science Robotics Meeting 2018の展示ブースにてデモを行った3体のロボピン



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森山 和道

フリーランスのサイエンスライター。1970年生。愛媛県宇和島市出身。1993年に広島大学理学部地質学科卒業。同年、NHKにディレクターとして入局。教育番組、芸能系生放送番組、ポップな科学番組等の制作に従事する。1997年8月末日退職。フリーライターになる。現在、科学技術分野全般を対象に取材執筆を行う。特に脳科学、ロボティクス、インターフェースデザイン分野。研究者インタビューを得意とする。WEB:http://moriyama.com/ Twitter:https://twitter.com/kmoriyama 著書:ロボットパークは大さわぎ! (学研まんが科学ふしぎクエスト)が好評発売中!

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