「Alexa居酒屋の裏側とは?」「ドコモのセバスチャンってなに?」ロボスタ勉強会で音声UIを学ぶ

毎回募集開始すぐに満席になる「ロボスタ勉強会」。これは、AlexaやGoogleアシスタントなど、現在活況な音声アシスタントの最新情報や事例を紹介するための、ロボスタ主催の勉強会だ。渋谷のドコモR&Dサテライトスペースにて開催されており、参加費は無料な上、最新事例を学べるということで、毎回人気を博している。今回は5月に行われた勉強会の模様を振り返る。



今回のロボスタ勉強会は、まずロボットスタートでエバンジェリストを務めている西田寛輔から音声アシスタントの基本情報と最新情報を紹介。日本国内に限らず、世界中の情報のアップデートを紹介した。



音声アシスタントの最新情報

音声アシスタントの最新情報を伝えた、ロボットスタート株式会社 スマートスピーカーエバンジェリスト 西田寛輔


スマートスピーカーの概要を説明したのち、最新情報を紹介。最近では、音声アシスタントがスマートスピーカーに搭載されるだけでなく、ヘッドホン型なども登場している。



またビジネスサイドの方だけでなく、技術者の参加者も多い勉強会のため、技術よりの情報も豊富。Alexaスキルを作るための音のライブラリがアマゾンから提供されているなど、実際に開発する上でためになる情報も伝えられた。およそ30分間にわたり、まずは知識を詰め込んだ。



ドコモの「project:SEBASTIEN」ってなんだ?


続いて登壇したのは、NTTドコモの「project:SEBASTIEN」を率いる秋永和計氏。秋永氏は同社が進めている「project:SEBASTIEN」の概要を説明し、今後の展開について触れた。

「project:SEBASTIEN(セバスチャン)」が作るAIエージェント基盤は、AIエージェントを作るためのプラットフォームだ。ボットを作る要領で、メインとなる会話部分を構築することができるだけでなく、追加機能としての「エージェント」を簡単に作るためのツールも用意されている。


これらメインの会話部分はメインエージェントと呼ばれ、追加機能はエキスパートエージェントと呼ばれている。「メインエージェント」が、より専門的なサービスを求められた際には「エキスパートエージェント」を呼び出すという仕様だ。

NTTドコモは、このAIエージェント基盤を一部無償で提供しており、世間の関心は高い。勉強会参加者も、このセバスチャンの情報を求めて参加したという方も多かった。



スマートスピーカーのような音声会話を使ったデバイスが注目を集めていく中で、NTTドコモが長年培ってきた対話技術をオープン化していく必要があると感じていた、と秋永さん。全てのものに対話サービスを提供したいという思いから、AIエージェント基盤のオープン化に踏み切った。



搭載されている自然言語処理技術「多目的対話エンジン」により、音声での自然な会話を行うことができる。ここに、6年前から提供開始されたしゃべってコンシェルで蓄積されたデータとノウハウが用いられているという。



先日のハッカソンでもこの会話機能をメインに据えたアイデアが多数開発された。ドコモのAIエージェント基盤は「あらゆるモノに対話型AIサービスを提供したい」という意図で開発されており、今後家電や身の回りのロボットなど、あらゆるものの裏側でこの基盤が活躍することになるだろう。



勉強会では、このセバスチャンを活用したイーフローのコミュニケーションロボット「くま〜ぬ」のデモも行われた。「くま〜ぬ」は長崎・ハウステンボスの変なホテルでも活用されている。



Alexa居酒屋の開発の裏側

ヘッドウォータースの椋代宏平氏から、メディアでも大きな話題となったAlexa居酒屋について、その裏側や反響を紹介。


Alexa居酒屋について紹介した、株式会社ヘッドウォータース 椋代宏平氏

まずは会社紹介。ヘッドウォータースは、Pepperのアプリ開発などでも実績が豊富だ。


ヘッドウォータースは今年4月、スマートスピーカーで飲み物をオーダーできる居酒屋、通称「Alexa居酒屋」を発表した。これは「天空の月 渋谷店」と一緒に進めたプロジェクトで、テーブルに置いてある「アマゾンエコードット」に話しかけることで、飲み物をオーダーできるというもの。

「アレクサ、飲み物メニューを開いて」をウェイクワードにして、アレクサ専用飲み物メニューから、カテゴリーと番号、個数を伝えることで、注文が厨房に伝わる仕組み。

発表後、多くのメディアに取り上げられ、自社コーポレートページには普段の10倍のアクセスがあったという。



もともとコミュニケーションロボット「Sota」の居酒屋をくろきんと共に進めていた同社。同じような相談が入った際に、二番煎じだとつまらないという理由から、「スマートスピーカー」を活用した居酒屋にしようと提案をしたという。

何に困っているかと店長に尋ねたところ「注文を取ってほしい」という要望があったため、飲み物をオーダーできるシステムになった。食べ物を含まなかった理由は、食べ物は「視覚で選びたいだろう」という想定があったからだという。

工数は1週間ほどで、「実店舗で飲み食いをしながら開発し、後日社長に領収書を渡してお金を受け取った」と椋代さん。かなり反響が大きかったこともあり「社長も苦笑いしながらお金を払ってくれた」と話し、会場の笑いを誘った。



機能は全部で4つ。30品目の飲み物メニューからオーダーできる基本機能と、アレクサがおすすめの料理を提案してくれる「レコメンド」、店員さんを呼ぶことができる機能、そしてアレクサに話しかけるだけでお会計を持ってきてくれる機能がある。

店員さんを呼ぶことができる機能は、厨房に通知が行くだけでなく、実際にアレクサが声をあげて「店員さぁーん」とも呼んでくれる。これはよく居酒屋である、ボタンを鳴らしたけども通っているかわからないという状況に対応するために、実際に声が出ることが大切だと考えてのことだと話した。



通知のインターフェースにはチャットワークを使っている。Alexaを経由してオーダーが入ると、Lamda、AWSに情報が渡り、ヘッドウォータースが開発するロボティクスプラットフォーム「SynApps」を経由してチャットワークに通知が届く。テーブル番号と注文されたメニューが表示されるため、それを見て店員さんが飲み物を持ってきてくれる。



オーダーが失敗した場合には、ヘッドウォータースのチャットワークに情報が飛ぶようになっているため、「改善に繋げることができる」のだという。

とにかく椋代さんが強調したのは「スピード感」。POS連携といった方法も考えられるが、それだと圧倒的に開発工数が増えてしまい、開発に時間がかかってしまう。また、アレクサに番号を伝えるという頼み方も、本来であれば「レモンサワー」など名前で頼みたいところ。しかし、そのためには単語の認識精度を上げる必要がある。もちろん学習させていくことはできるものの、それも開発工数を伸ばす要因になってしまう。それよりもとにかく早くお客さんに使ってもらうことで改善をしていくことを意識しているのだと話した。



勉強会の最後には懇親会。お酒片手に、ロボットや音声UIについての意見交換が行われた。

セバスチャンやAlexaといったAI音声アシスタントが身の回りで活躍を始めている。今後さらに盛り上がる分野になっていくことだろう。

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ロボスタ編集部

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