「Pepper App Challange/ Innovation Challange 決勝進出作品発表展示会」に行ってきました。その1(前編)

12月17日(木)、アトリエ秋葉原で開催された「Pepper App Challange/ Innovation Challange 決勝進出作品発表展示会」に行ってきました。

イベントページでの紹介はこちらです。

11/28 に開催されたPepper ロボアプリのコンテスト Pepper App Challenge 2015 winter /Pepper innovation Challangeでは、多くの作品にご応募いただき、計20作品の決勝進出作品が発表されました。

このイベントではそれらの優れた作品の開発事例をもっと聞きたいという参加者のご要望にお応えするため、コンテストの決勝進出作品を制作されたデベロッパーの皆様を講師として作品説明を行うものです。


今日の会場レイアウトは発表スタイル。イベント告知直後、すぐ満席となった注目度の高いイベントなので、会場いっぱいに椅子が並んでました。

最初にアトリエ秋葉原スタッフのアビダルマ梅田さんから、今回のイベントの概要について説明です。

今回は以下4アプリの発表となります。

 ・Pepperとまなぼう!!/Team OSTech
 ・Pepperがホームステイにやってきた【仮想英語環境構築アプリ】/株式会社ジーアングル
 ・ペッパーソナル・トレーナー/BOB
 ・PepPre(ペップレ)/エクスウェア株式会社 ロボティクスLAB


それぞれ前半はコンテストで披露した/する予定だったプレゼンをしてもらい、後半に今回のイベント限定でのプレゼンを行います。その後、質疑応答受け付ける形で進行していきました。



■Pepperとまなぼう!!/Team OSTech

株式会社アウトソーシングテクノロジーによる、Pepper Innovation Challenge 2015の決勝戦進出アプリ。プレゼンを行うのは、同社の竹内隆喜さんです。


最初に株式会社アウトソーシングテクノロジーの自己紹介です。


Pepperを使ってプログラミングの考え方を学べるアプリです。


このアプリを開発した背景です。現在、文部科学省がプログラミング教育を推進しています。そして、コミュニケーションロボットが普及しつつあります。


そのため、20年先を見据えたプログラミング教育とロボット導入が求められています。


必要な要件は「小学生の集中力に対応」「脱落者の出にくいカリキュラム」「興味を惹きやすいデバイス」「誰にでも使える操作性」の4つ。これらの要件を満たす最適なデバイスが、Pepperです。


現在、SCRATCHやVISCUITなどのプログラミング教育のツールはいろいろありますが、Pepperは、実物が動いたり話したりするので、アウトプットが誰にでもわかりやすいという良さがあります。


「アクティブラーニング」という、子供たちが自ら進んで、お互い協力しながら学ぶ学習方法があります。このロボアプリでは、Pepperと子供がお互いに協力しながら学ぶことができます。


アプリの画面構成です。Pepperのタブレットを使ってビジュアルプログラミングを行います。


基本操作エリア・入力エリア・出力エリアの3つから構成されます。

「基本操作エリア」では、実行・消去・戻るなどのアプリ基本操作を行います。「入力エリア」では、Pepperの動作や会話を入力します。「出力エリア」では、入力した動作が一連の流れとして出てきます。

レベル構成です。かんたん・ノーマル・上級の3コースがあります。


「かんたん」では、3種類のボックスを組み合わせることでプログラムの初歩を学習します。「ノーマル」では、かんたんに加えモーション・キャプチャーなどPepperの動きが加わります。上級では、ノーマルに加え条件分岐や連続などの実践的なアルゴリズムを学べます。

今後に向けて、例えば、ショッピングセンターに設置して、買い物に行く家族の子供たちの楽しみとして。


例えば、病院に設置して、入院している子供たちに学びの機会を。


例えば、世界に設置して、世界の子供たちに学びの場を。


学びの場を様々な場所へ提供することで、20年後に誰もがロボットを使える世の中を創造します。


子供たちの教育にわくわくを。


プレゼンは以上です。



■Pepperがホームステイにやってきた【仮想英語環境構築アプリ】/株式会社ジーアングル


株式会社ジーアングルによる、Pepper App Challenge 2015 Winter「ベストインタラクション賞」受賞アプリ。プレゼンを行うのは、同社の森宏晃さんです。


PAC決勝戦でのプレゼンは、以下のロボスタ記事をご覧ください。

 Pepper App Challenge 2015 Winter 決勝最終プレゼンテーション
 https://staging.robotstart.info/2015/12/02/pepper-app-challenge-2015-winter-presentation.html



また、ジーアングルさんによる以下のプレスリリースでも当日の様子が披露されています。

 開発部、「pepper app challenge」で快挙達成!の巻
 http://www.g-angle.co.jp/images/service/robot/pepper_pac_press.pdf



PACでのプレゼン動画はこちらです。



ここから、今回のイベント限定でのプレゼン「PAC応募アプリの制作経緯について」です。


ジーアングルではコンテストに向けて社内からアプリのアイデアを募りました。その数はなんと約100個!スライドを見てみると、思い浮かびそうなアイデアがほぼ出揃ってます。


このアイデアを「Pepperだからこそできること」であるかを基準に精査しました。具体的には以下となります。

 ・PC、スマホ、タブレットでもできることではないか?
 ・Pepperであることが活かされているか?
 ・Pepperの知名度やキャラクターに依存していないか?


さらには「Pepperと他デバイスの違い」も意識して精査しました。

 ・常に起動状態にある
 ・基本的にある場所に固定されている
 ・大きい(目立つ)
 ・豊富なセンサー類


その結果、約100個のアイデアが50個に絞られました。


さらに絞り込みを行うために「動作の精度は問題ないか?」という視点から精査を行いました。

 ・各センサーを使う場合、その精度は問題ないか?
 ・エラーが起こった時、アプリに致命的な影響を与えないか?
 ・実際の利用を想定し、代替機への交換がスムーズにできるような仕組みを作ることができるか?


今回つくったのは英会話のアプリだったので、言語別Pepperの聞き取り精度を調べてみました。

日本語の場合は、単語の認識は可能だが、少し長い文章となると認識精度は落ちるそうです。英語の場合、単語の認識率はほぼ100%、長めの文章であっても認識は十分可能だったそうです。


これらによりアイデアが50個から30個に絞られました。


最後の絞り込みを行うために「役に立つのか?」という視点から精査を行いました。

 ・実益を生むアプリであるか?
 ・今すぐ使いたいと思わせるアプリであるか?
 ・これまでになかった価値観や役割を創造できるか?


ここで「Pepperで英語学習を行うメリット」を考えてみました。

メリット
 ・人間に比べて費用が安い
 ・人間を介さず、自動でのレッスンが可能
 ・身近に英語環境を作ることができる
 ・ロボットなので話すことに羞恥心がない
 ・レッスンの継続を促すことが可能(強制性)
 ・レッスン履歴の集計が可能

デメリット
 ・Pepperが意志を持って、自由な会話ができるわけではない(事前に会話内容を設定する必要がある)
 ・ある程度ユーザの正確な発音が求められる


結果、最初約100個あったアイデアが3個となりました。



このような過程を経て「Pepperがホームステイにやってきた【仮想英語環境構築アプリ】」というアイデアが生まれてきた、その舞台裏でした。


プレゼンは以上です。

続いて質疑応答です。

Q) 日本語はイントネーションのチューニングがいろいろと必要ですが、英語ではイントネーションの調整は必要ですか?
A) 特に必要ありません。大丈夫です。

Q) 英語の発音に自信がないのですが、Pepperはどれくらい聞き取りしてくれるかの精度を教えてください。
A) カタガナ英語でもある程度まで聞き取ってくれますが、Wからはじまって日本語化したような “white(ホワイト)” のような単語はちゃんとした発音じゃないと聞き取ってくれませんね。

Q) 発音の精度を調整することはできますか?
A) はい、可能です。現状45%にしてます。普通に喋っても50%は認識するので適切な数値と思います。

Q) Pepperのキャラクターはどれくらい英語の先生に反映されているのですか?
A) CMで見るPepperくんは小学生の男の子くらいのイメージがあると思いますが、いくらでもキャラはつけられます。今回はちょっと冗談の混じるような会話も入れるように心がけました。フィリピンではPepperを見て聞くと、みんな「女の子」って言いますね。
(アトリエ秋葉原スタッフ:日本語と英語でイントネーションが違うので、印象も変わるかもしれません)

Q) アプリ作成のためにどれくらいの工数がかかりましたか?
A) 開発期間1ヶ月くらいですが、商品としてはまだ出せないとは思っています。現在商品化に向けてブラッシュアップを継続して行っています。ちなみに一番注力したのは、反応速度を2秒以内にした点です。

Q) 反応速度を1秒にするためにはどういうことをすればいいでしょうか?
A) Speech Reco.は使っておらず、全てDialogでの会話にしています。他、細かい工夫をしたようなのですがフィリピンのスタッフが行ったことなので詳細は分かりません。すみません。

Q) 一問一答にしても人間はいろいろな回答をすると思うんですが、どうやって人間の回答文を想定して作ったんですか?そして、会話のやり取りをするためにどれくらいの例文を用意しましたか?
A) 発展途上という前置きはあるんですが、現在使ってくるのは1問に対して20〜30の回答を用意しています。長文には1問に対して2〜3の回答を用意しています。こういう一問一答は世界中に揃えている会社がたくさんあるので、それらのデータを使うと無限に広げられます。

Q) 家族で英語のレベルがそれぞれなのですが。
A) 家に置くという仮定をしていて現在調整中なのですが、家族ごとに顔認識をしてレベルの対応をしたいとは考えております。

質疑応答は以上です。



長くなりましたので「その2」に続きます。

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北構 武憲

本業はコミュニケーションロボットやVUI(Voice User Interface)デバイスに関するコンサルティング。主にハッカソン・アイデアソンやロボットが導入された現場への取材を行います。コミュニケーションロボットやVUIデバイスなどがどのように社会に浸透していくかに注目しています。

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