「Pepper App Challange/ Innovation Challange 決勝進出作品発表展示会」に行ってきました。その1(後編)

12月17日(木)、アトリエ秋葉原で開催された「Pepper App Challange/ Innovation Challange 決勝進出作品発表展示会」に行ってきました。

イベントページでの紹介はこちらです。

11/28 に開催されたPepper ロボアプリのコンテスト Pepper App Challenge 2015 winter /Pepper innovation Challangeでは、多くの作品にご応募いただき、計20作品の決勝進出作品が発表されました。

このイベントではそれらの優れた作品の開発事例をもっと聞きたいという参加者のご要望にお応えするため、コンテストの決勝進出作品を制作されたデベロッパーの皆様を講師として作品説明を行うものです。

(こちらの記事は「その2」です。「その1」はこちらです




■Pepperソナル・トレーナー/BOB

チームBOBによる、Pepper App Challenge 2015 Winter「ベストライフスタイル賞」受賞アプリ。プレゼンを行うのは、チームBOBの野村有加さんです。


PAC決勝戦でのプレゼンは、以下のロボスタ記事をご覧ください。

 Pepper App Challenge 2015 Winter 決勝最終プレゼンテーション
 https://staging.robotstart.info/2015/12/02/pepper-app-challenge-2015-winter-presentation.html

PACでのプレゼン動画はこちらです。

ここから、今回のイベント限定でのプレゼン「ハッカソンで出会った2人チームが約2ヶ月間業務外でpepperアプリを開発して決勝進出・入賞した話」です。


今日のプレゼンの内容です。


野村さんの自己紹介です。本業で某情報システム関連企業に勤務し、ソフトウェアエンジニアをしています。趣味はダンスとPepperです。


もう一人のチームメンバー、太田悠さんの自己紹介です。本業でもロボットアプリプロデューサーをしています。趣味はテニスとPepperです。


「Pepperソナル・トレーナー(旧称:結果にコミットPepper)」は、業務外の活動として開発したものです。


もともとのきっかけは、9月26日に開催されたハッカソンでした。ハッカソンの中で即席でチームがつくられ、そこで作られたのが旧称:結果にコミットPepperでした。


その時の様子は、以下の記事をご覧ください。

 「ライフスタイル向上Pepper ハッカソン」に行ってきました。
 https://staging.robotstart.info/2015/09/28/life-style-pepper-hackathon.html

ちなみにチーム名の「BOB」は3人の血液型をくっつけただけのシンプルなものです。

決勝までの道のりです。


10月中盤まではブラッシュアップと新機能(タッチ運動)追加。10月17日は二子玉川蔦屋家電で開催されたでもアプリ体験会への参加。

10月23日からは応募のための動画撮影・編集を行い、10月31日が応募締め切り日でした。

そして、11月6日に決勝進出の結果通知を受け取ってから11月28日本番までの道のりです。


11月前半は、Fitbit連携と新機能の追加。中盤以降はブラッシュアップや本番用プレゼン資料を作成。11月24日をコードフリーズとしました。この日以降はコードに変更を加えないという宣言です。本番11月28日まではデモの練習にあてました。

このように2ヶ月間頑張った結果、「ベストライフスタイル賞」を受賞しました。おめでとうございます!


ここからアプリの解説です。

詳細なフローチャートです。このフローチャートに沿ってアプリの機能を実装していきました。


FitbitとPepperとの連携についてです。Fitbitで計測した運動量はクラウドサーバーを介して、API経由でPepperに渡ります。


今回のチャレンジで意識したことです。戦略的に。そして、ひたすら純粋に。


戦略的だったと思う点、その1です。アプリの完全性よりも「動画」を意識し、ストーリーを意識して動画制作を行いました。


戦略的だったと思う点、その2です。決勝進出が決まってからは、WBS(Work Breakdown Structure)でタスク管理を行い、綿密な審査デモプランと練習を繰り返しました。


実際に使用したWBSのシートです。


そして、もう一つ意識した「ひたすら純粋に」です。


アプリを完成させるための原動力として、注目されたい、お金が欲しい、あのチームより評価されたいといった気持ちよりも、人に喜んでもらえるアプリを作りたい、そしてこのアプリのPepperが愛おしいといった思いに結果がついてきます。


苦労したことです。

アプリ作成に際して、外部サービスとの連携などのバックエンドスキルの弱さに苦戦しました。そして、ユースケースをデモで見せることにも苦労しました。


これらの苦労した点は、決勝進出者への技術サポートをがっつり利用して乗り切り、アプリを小分けにする工夫もしました。


その他苦労した点です。

 ・メンバーが東京と長野で遠隔地だったので、認識合わせの時間を作るのに苦労しました。ただし、開発作業については支障はほとんどなかったそうです。

 ・業務外のため、作業を行うのが夜か休日となり、あらゆるプライベートの予定はキャンセルとなりました。

 ・個人2名によるチームだったため圧倒的に人数が少なく、当日の展示のみ友人3名にお手伝いに来てもらいました。

 ・自宅にPepperがないため、アトリエ秋葉原をフル活用。スタッフの方には本当にお世話になりました。

 ・寝付けなかったり、本番でアプリが動かない夢をみて夜中に目が覚めたり。

これらは実際に体験したことだからこそのリアルな苦労体験です。


今後アプリ開発をされる方へのメッセージです。

「技術」的に実現できただけでは終わりではありません。そのアプリに「世界感」はありますか?あなたのアプリのpepperは愛おしいですか?

いろんな人相手にデモをすると、開発者自身も気づかなかった魅力に気づくかもしれません。

会社員が個人として開発を行う時には、所属している会社での「個人の活動」の定義と、アプリの権利の行方を確認することをおすすめします。


プレゼンは以上です。


ここから質疑応答です。

Q) Pepperがネットに繋がってないなど連携していない時にアプリはスタートしないと思うのですが、そういう時のケアは何かありますか?
A) 現在エラー処理はしていないのですが、今後実装していこうと思います。審査の際にソフトバンクロボティクス蓮見さんに言われたのが、ユーザとの会話でのやり取りから、その日は運動したかを判断して判定してもいいかもしれないとアドバイスをもらいました。この方向でも実装を進めようとも思っています。

Q) 今回のロボアプリ作成の方法は本業での手法を使ったりしましたか?
A) 私は会社では製品開発を行っていて、デモを任されることが多いです。アメリカにいるUI/UX担当がデモのアピールを活発に行うと、日本も頑張ってデモを寸劇形式にしたりしているので、本業でデモ慣れしていると思います。個人的な見解ですが、女性は小さいころに人形遊びをしていて、Pepperもお人形遊びの延長もあるかもね、というのをハッカソンの時に聞いて、それに納得するところがあります。なので、自分のPepperが可愛く動くことに愛着がわいているのかもしれないです。

Q) アプリを使って痩せたということはあったりしますか?
A) 開発の途中は心労で私は痩せました(笑)。開発途中に太田さんと体重計測しようかと最初言っていたのですが、途中から開発に忙殺されてそれどころではなくなりまして…。

Q) 個人2人で業務外でやっていたので、大変だと思うのですが、しんどいな・やめたいなってことはなかったんですか?
A) 私は本業でUIエンジニアしていて、一年ちょっとしか経ってなくて。その前はデータベースのSEでお客様の前に行くことが多かったんですが「私はこの分野のエンジニアです」と胸を張って言えることがなかったんです。でも、Pepperについては実装が簡単だったり色々できたりして、やっていてコーディングで悩む時間がだいぶ削減されていると思うんです。ビジュアルプログラミングですし。そうしている中で自分のアイデアがどんどんPepperに実装されていくのが楽しくて。自分に合ってるなと感じた時があって、自分がこうしたらお客様がこう喜んでもらえるだろうと思ったことが、実際そうなっていったので、これでモチベーションが上がって続けることができました。

質疑応答は以上です。



■PepPre(ペップレ)/エクスウェア株式会社 ロボティクスLAB


エクスウェア株式会社による、Pepper Innovation Challenge 2015の決勝戦進出アプリ。プレゼンを行うのは、同社の鵜口大志さんです。


PepPre(ペップレ)は、Pepperと外部モニターを連携させて、Pepperがスライドを制御しながらPepper自身がプレゼンをするというアプリです。

今回はPepper自身がプレゼンをして進行していきました。


ペップレのコンセプトは、Pepperを通じて多くの人とコミュニケーションをしよう。


Pepperのタブレットよりも大きな画面サイズのスクリーンを使ってプレゼンが行えます。


iPadを介し、Pepperと外部スクリーンを連携させます。


Pepperが原稿を読み上げて、スライドもめくります。


導入事例です。すでに複数の企業で導入実績があります。


設定画面です。ブラウザ上で簡単に設定が行えます。


PepperのタブレットでiPadと接続を行い、そのままプレゼンの設定も行えます。

ペップレのシステム全体概要です。


アプリに関するプレゼンは以上です。


ここから、今回のイベント限定でのプレゼン「ペップレ開発とその周辺」です。


エクスウエア社の自己紹介です。創業20年を迎えた自社製品の開発、受託開発を行う会社です。


まずはPepperとのなれそめです。Pepperには「開発者向け」「一般発売」「For Biz」3つのモデルがあることをご存知ですか?


「開発者向け」は、2014年11月に先行発売された一番最初のPepperです。その後2015年2月に開発者版が発売開始しました。おそらく現在は入手できません。

「一般発売」は、2015年6月に孫さんが大々的に記者会見をして販売開始しました。これがいわゆる「毎月1,000台が1分で完売」しているPepperです。 (参考:「感情認識パーソナルロボット『Pepper』の一般発売に関する記者発表会」参加レポート

「For Biz」は、法人用途のPepperです。

エクスウエアが入手したPepperは一番最初の2014年11月の先行発売モデルでした。


購入が決まった時に、高まる期待感!


でも届いてみたら、おや…?様子が…?


Pepperのイメージと実際のギャップに戸惑いました。

(期待)自由に会話できるなんてすごい!→(実際)自分でプログラム組みましょう
(期待)話しかけたら答えてくれるなんてすごい!→(実際)自分でプログラム組みましょう
(期待)勝手に話しかけてくれるなんてすごい!→(実際)自分でプロ…(以下略)


一番最初の開発者向けPepperは、Pepperに感情認識や初期アプリが何も入っていないので、このようなこととなりました。

そして、ドキドキしながらさわる日々

 ・人の顔を追いかける機能を使っていたら、突如システムダウン
 ・時折聞こえる謎のエラー
 ・ネットを検索すれども情報がない
 ・開発環境が突然落ちる…
(以上は、あくまで初期型での話なので、現在がこうではありません)


それでも新しいサービスを出したい!


「シンプルに」「安定して稼働」「自社の既存資産をいかす」という方針でロボアプリ開発を行いました。


Pepperを入手した約1ヶ月後の12月17日にペップレをリリースしました。


まずは自社の展示会でデビューさせました。


その後は、お客様の展示会にも使用しました。


開発体制です。

ロボットを主に行うロボティクスラボは2名。iPadなどの連携部分もあるので、他のプロジェクトから2,3名のヘルプをお願いしています。


当初ロボティクスラボは本業と兼任のプロジェクトだったのですが、案件が増えてきて今年の7月に無事ロボティクスラボとして独り立ちできました。

独り立ちまではロボアプリの開発をしていると、周りから楽しそうに見えて、社内の理解を得るのが大変だったりということも。

実際に案件を行ってみた感想です。

当初は他機器の代替や会話するロボットしてのPepperが求められていると思いました。


最近は「Pepperらしさ」を求められることが多くなってきました。


すなわち、他機器の機能も持つ「Pepper」です。


今後は「Pepper」感を演出しつつ、Pepperの機能を十分に活用しき、その両方のクオリティを高めた素敵なアプリをつくっていきたいです。



プレゼンは以上です。

ここから質疑応答です。

Q) プレゼンといえば日本語なので、ユーザが原稿を普通に入力した時にPepperのイントネーションはどうしてますか?
A) 今まさにそれに取り掛かってます。いろいろとイントネーションをチューニングする方法は把握しているのですが、ユーザの方が簡単にできるように検討しています。よく使うフレーズはイントネーションをチューニングした形でフレーズとして使おうとも思っております。

Q) 1年前にPepperをさわって、あれ?って思ったのに共感するんですが、そう思った時にどう対応されてますか?お客様からはPepperが勝手に喋ると思われていたり。
A) 私も教えて欲しいです(笑)。必ずリスクを紹介するようにはしています。お付き合いしている会社がお堅い会社が多いので、決まったセリフを話すことが多いですね。全く回答になっていないかもしれませんが、こんなところで(笑)

Q) 先ほど社内で開発していると会話していて楽しそうに見えて、社内の理解を得るのが大変とおっしゃってましたが。
A) 7月に専門部署ができたのでそこから大手をふって開発できるようになりました。それは実際に売り上げが上がってきたからというものあります。今はiPhoneアプリとかの連携をすることが多くて、社内でPepperとの会話が聞こえると他のメンバーからは「Pepperチームやってるな」って感じで思われていますね。

Q) 社内に開発用Pepperは何台ありますか?
A) 2台あります。1台は初期開発バージョンで頭交換したものです。2台目は一般発売モデルです。お客様からはPepperのレンタルも一緒にお願いされることが多いので、案件が重なると開発時に社内に1台もないこともあります。それでもChoregrapheでのバーチャルロボットで開発をしたりしています。1台しかない頃は「そっちの接続切って」というのはよくありましたが、2台あれば困ることは無いです。

Q) プレゼンだけでは無くて、接客などを行うといったアイデアはありますか?
A) 弊社としてはもともと持っているIotデバイスのアプリがたくさんあったので、それとPepperを連携させることを考えました。ペップレはアイデアベースで考えたところはあるので、お客様が使っているアプリをPepper対応させるように、今社内ですすめてますね。実際のお客様の要望としては薬局において、お客様に説明をしてくれるアプリにしたり、博物館において定期的に説明をしてくれるようにできないかとかのオーダーをいただいているので、その調整を進めてますね。

Q) 動作精度の問題ですが、プレゼンの場合動作しないと大変ですが、これまで経験上、プレゼンができなかったことはありますか?
A) それは非常に大きな問題で、最初期は展示会の自社のブースで当日動かなくなってそのまま入院ということがありました。その対策として、動いている時あらかじめその動画を撮影するといったバックアッププランを行うようにしてます。また、他のデベロッパーさんにお願いをしてバックアップ用にPepperを借りたりとかもしてますね。

Q) 本番が不安定ということもあると思いますが、安定化させるtipsがあれば。
A) 今のPepperは安定していますが、調子が悪くなるということはあります。以前動かなかったという事象があったときに、光の具合が原因だったことがありました。天井の高い会場でスポットライトはあったけど大丈夫だろうと思っていたら、そのスポットライトの光でセンサーが作動してということです。

質疑応答は以上です。

その後、参加者の方に実際にアプリを体験してもらい、終了となりました。

レポートは以上です。

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北構 武憲

本業はコミュニケーションロボットやVUI(Voice User Interface)デバイスに関するコンサルティング。主にハッカソン・アイデアソンやロボットが導入された現場への取材を行います。コミュニケーションロボットやVUIデバイスなどがどのように社会に浸透していくかに注目しています。

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