「EMIEW3(エミュースリー)」実機レビュー! 倒れても、壊れず自力で立ち上がるロボット
先日、日立製作所が全高約90センチのEMIEW3(エミュー・スリー)を発表したことを、ロボスタでもご紹介しましたが、この度実物を見る機会を得たので「EMIEW3」の実機レビューを行っていきます。先ずはスペックからおさらいです。
身長 | 90cm |
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重さ | 15kg |
最大移動速度 | 6km/h |
段差乗り上げ | 15mm |
サイズは、強いて言えばソフトバンクの「Pepper」が近しいですが、「EMIEW3」の方が「Pepper」よりも小さくて軽いです。そして、車輪で移動をスムーズに行うことができます。
日立製作所は「EMIEW」を2005年の愛知万博で発表し、2008年に後継の「EMIEW2」を発表しました。そしてEMIEWの3代目がこの「EMIEW3」というわけです。デザインも「EMIEW2」を踏襲しています。
ロボットIT基盤と連携
「EMIEW3」は「EMIEW2」から採用されている「リモートブレイン」と呼ばれるクラウド上でのやり取りを基本としています。「リモートブレイン」で音声・画像・言語などの処理を行うと共に、施設にあるネットワークカメラなどの情報を活用して、今自分のいる環境で何が起こっているかを理解をすることが出来るようになっているのです。
例えば、施設内のカメラなどと連携して、「EMIEW3」が立ち止まっている人を認識すると自ら近づいて声をかけたりすることが可能となります。言語も日本語以外の多言語対応を実現しています。
また、「ロボット間の連携」ができることも大きな特長の一つと言えます。日立製作所が提供する「ロボットIT基盤」に接続されているロボット同士であれば、情報共有をスムーズに行うことができます。「ロボットIT基盤」とは、複数のロボットが協働することが前提で開発されているシステムなのです。
説明の際に動画を見せて頂きましたが、「EMIEW3」と「NAO」という、メーカーもスペックも違うロボット同士が、情報共有をスムーズに行っている様子には驚きました。
「EMIEW3」のハード
と、随分システム的な話ばかり続いたので、次に「EMIEW3」のハードを見ていきましょう。
「EMIEW3」がプレゼンテーションをしている様子です。
「EMIEW3」の声ですが、「小学校低学年の男の子」の音源を合成して採用しています。実は大人の声でスムーズな合成をしてしまうと違和感があったので、この音声合成を使い、アクセント等を敢えて幼稚にしているということでした。
開発者の方(170センチ程度)と比べると高さのイメージが分かるのではないでしょうか?
「EMIEW3」は、倒れた時にぶつかりやすい箇所やぶつかって欲しくない箇所(膝や肩、背中、手の甲、胸等)は、柔らかい樹脂素材が使用されており、衝撃を吸収できるようになっています。
また、胸のハートは電圧を表しており、バッテリーが少なくなってくると、徐々に鼓動が早くなっていきます。バッテリーは1回の充電で約3時間稼働可能で、充電時間が1時間半程度のため、バッテリーが2セットあれば通常の店舗などでは問題ないのではないかとのことでした。
背中に天使の羽根のようなものがありますが、こちらも上述したように柔らかい樹脂素材となっています。倒れた時は衝撃を吸収することができ、「EMIEW3」を移動する際はこの部分を持って運ぶことができます。重さも15キロなので、女性でも移動が可能です。
首の前側にある黒い突起物はセンサーです。「EMIEW3」はこれで周りの状況を確認しています。
例え倒れても…
写真では分かりませんが、少し位押しても倒れません。これは人間同様に踏ん張ってバランスを取っているからです。実際に、編集部が「EMIEW3」を軽く押しても倒れることはなく、押している時には「EMIEW3」自身が踏ん張っている感覚を手に感じることが出来ました。
とは言うものの、店舗や施設などに導入されれば、イレギュラーな状況が発生して、倒れてしまうこともあるでしょう。そんな時「EMIEW3」は自力で立ち上がる事が出来るのです。
正面から倒れても、
手の車輪を上手く使って状態を起こし、
膝を付いて、
無事、立ち上がりました!
それでは、後ろにひっくり返った場合はどうでしょうか?
ひっくり返っても、
また手の車輪を上手く使って、
立ち上がりました!
この時初めて手の部分が車輪ということに気が付きました。デザイン的に何の違和感もありません。この「倒れたら起き上がる」という動作は、クラウド上ではなく「EMIEW3」自身にプログラミングされている機能なので、例えネットワークと切断されても問題ありません。
早く現場で見たい
2018年度の販売開始を目指している「EMIEW3」。但し、「EMIEW3」単体での販売ということだけでなく、”「ロボットIT基盤」に対応する1デバイス” という方向性でも議論は進んでいるようです。
動きを重視すると、どうしても大きくなってしまうケースが多いですが、このサイズでキビキビ動くのならば、使いたい施設も沢山あるのではないでしょうか?
早く現場で「EMIEW3」が活躍するのを見たいものです。