IBM Cloud Community 勉強会 – クラウドとIoTに行ってきました その1

8月30日、日本 SoftLayerユーザー会、日本Bluemixユーザー会によるIBM Cloud Community 勉強会がソフトバンク本社で開催されました。


勉強会の説明はこちら。

今回のテーマは、「IoT的な!」。 今回の勉強会では、IBMクラウドやIoT的な話をユーザーのみなさんより、IBMクラウドとIoTの活用方法について話をいただく予定です。 なお、スペシャルセッションでは、エンジニアのプログラミング知識を共有するブログサービス「Qiita」の話やロボティクスの話が予定されています。

IBMクラウドはもちろん、今「旬」のテクノロジーに興味がある方、是非ご参加ください。

会場のソフトバンク本社です。普段は食堂のスペースだそうです。


勉強会の進行役は、ソフトバンクコマース&サービス株式会社 松尾美保さんです。


ソフトバンクコマース&サービス株式会社 松尾美保さん




Pepper と様々なクリエーターとの触れ合いを見て感じた家庭向けロボットの現状と今後 (株式会社スマートロボティクス 河田卓志さん)

株式会社スマートロボティクス 河田卓志さんによる、Pepper と様々なクリエーターとの触れ合いを見て感じた家庭向けロボットの現状と今後です。



株式会社スマートロボティクス 河田卓志さん





河田さん自己紹介

関西生まれ関西育ちですが、口下手で目立たない子供でした。夢はロボットエンジニアで、1年間親におねだりした結果 SHARP MZ-1200 を手に入れ、小学生からプログラミングをはじめます。これが小さな可能性の芽が芽生え始めたキッカケとなりました。


大学に進み機械工学を専攻するも、卒業後はソフトウェアの受託開発を行う会社に就職し、ロボットからは遠ざかりました。

人生の転機は2011年に訪れます。ある展示会でNAOと出会ったのです。完成されたハードウェアに、APIを使ったプログラミング。ロボットを作るよりもロボットを動かすことに興味があったので、NAOならソフトウェア技術者だった自分でもロボットを動かすことができると一人興奮しました。

2012年12月、興奮が抑えきれずNAOデベロッパープログラムに参加し、NAOを個人輸入してロボットを手に入れました。

このころデベロッパープログラムに参加するにはインターネットで技術者向けの試験を受け、合格しなければなりません。河田さんは無事英語での試験に合格し、NAOを個人で購入する資格を得ました。河田さん曰く「ミドルレンジのパソコン2台分ぐらい」という値段だったので迷いながらも、結局NAOを買っちゃいました。 


次の転機は2014年6月5日に訪れます。ソフトバンク孫さんが初めてPepperを発表した日です。

Pepperのことを調べると、NAOの技術をベースに作られていたことが判明しました。

2015年2月にPepper製造を行うAldebaran Roboticsに転職。その後ソフトバンクロボティクス所属となり、Pepperのロボアプリデベロッパーを支援する活動に従事。


2015年は、Pepperデベロッパーの聖地こと「アトリエ秋葉原」の技術スタッフを担当。8月からはハッカソンイベントの技術サポートスタッフとして全国を飛び回り、12月にMashup Awards事務局からDeveloper Support大賞一位として選ばれました。






>口下手である皆様にお伝えしたい4つのこと

一見順調そうに見えますが、もともと引っ込み思案で口下手な河田さんは、サポートスタッフという仕事に四苦八苦の連続でした。この経験から得た4つの伝えたいことを、口下手である皆さまへお伝えします。

(1) 無理はしなくてもいい
口下手な人が上手にしゃべろうと無理をしている姿は本人ばかりでなく、周りから見ても気の毒です。上手にしゃべることではなく、一所懸命伝えることを頑張りましょう。

(2)自分にできることは一所懸命する
万事受けするというのは、口下手な人にとってむしろ負担が大きいです。自分ができることを一所懸命することで、あなたの価値がわかる人がきっと現れます。

(3)要領よく生きることを諦める
要領よく生きようと思っても、多分物事は期待通りには進みません。誤解からでも、もし信頼を失ってしまうと、そのあとが大変です。

(4)大志を抱く
大きな夢は行動を方向づけてくれます。大志があれば、間違った選択をしても学びもあります。

口下手ではないみなさんに。もしあなたのコミュニティに口下手で要領を得ない人がいたならば、1つだけ私なりに思うことを伝えます。


彼/彼女に一旦任せてみてください。そして、結果で評価をしてみてください。きっと大志を持ってそこにいます。彼にはコミュニティにとってなくてはならない存在に違いありません。




現在の河田さん

2016年5月、ソフトバンクロボティクス(SBR)を円満退社しました。6月に設立されたスタートアップの株式会社スマートロボティクスに転職。エンジニアとしてロボット事業の立ち上げに注力しています。頭を動かすより、手を動かすという気概で毎日頑張っています。




本題:Pepperと様々なクリエイターとのふれあいを見て感じた、家庭向けロボットの現状と今後

まず、ロボットとはどういうものでしょうか。ここでは動物の動作や形状を模していることを一つの機能とした機械を指すこととします。その機能の目的や必要性はそれぞれのロボットによって異なります。

現在のロボットは2つの方向性があります。1つは「道具としてのロボット」でこれはパワーアシストロボットや自動運転ロボットを指します。もう1つは「コンテンツのメディアとしてのロボット」で、ダンスロボットや観光案内のようなロボットを指します。双方の融合は今後ますます進むと想定されます。





ソフトバンクのPepperについて

Pepperとは道具として、コンテンツのメディアプレイヤーとして、双方に対応する柔軟性を兼ね備えたプログラミング可能なロボットプラットフォームと言えます。

NAOqiという独自のOSが、ロボットをコントロールするための統合的なAPIを提供します。NAOqi APIにアクセスするプログラムはPepper本体内からも、外部からネットワーク経由でも呼び出しが可能です。

Pepperは専用の開発ルーツChoregrapheがあり、これは特にコンテンツのメディアプレイヤーとしての利用において、試行錯誤が非常に容易です。


ハッカソンでの1.5日間という短い期間でもこれだけの様々な作品が生み出されました。


Pepperには「コンテンツプレイヤーとしてのPepper」と「道具としてのPepper」の二つの役割があります。例えば、接客を行うPepperは道具としての役割と言えます。





ロボットを取り巻く時代の流れを(私見で)整理してみた

2014〜2015年はロボット熱が加速した2年間でした。将来への期待感からアーリーアダプターや新規事業を考えている企業が参入。

今年2016年から2017年にかけては、ロボット本当の良さが社会に試されていると言えるかもしれません。

一般の人々へ分かりやすく届けられているのか。ロボットが確実に動くのか。単機能でもちゃんと期待通りの仕事をしてくれるのか。そして、理屈抜きでいいものを提供できるのか。

2020年までの個人的な希望は、人間の機能を補う様々なロボットや人間に感動を与えるロボットが登場して欲しいです。





現在の代表的なロボットのプラットフォームの比較

NAOqi
旧アルデバランによるロボットOS。扱いやすいAPIと開発環境を提供します。道具としてもコンテンツプレイヤーとしても使いやすいです。認知機能は、顔認識・音声認識・触覚センサーなどがあります。

ROS
世界中の研究期間で使われているオープンソースのロボットOS。ナビゲーションや運動制御などで多くの研究成果が公開され、利用可能です。道具としては特に使いやすいですが、コンテンツプレイヤーとしての利用は×です。認知機能は可能だが、まだ十分に整備されていないと言えます。

OpenRTM
国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)が開発・配布している国産のロボットOSです。ロボット工学に関する専門的な知識が必須です。

Android
ロボット向けのOSではありませんが、音声認識、音声合成、画像認識などのロボットに必要な多くの資産を持つOSです。また、OTG(On-The-Go)などの機能を通じて外部機器制御も容易であり、今後ロボットの認識機能をつかさどるOSとして広まっていく可能性があります。


多機能ロボットで実証実験した結果を、特定用特化型に落とし込んでコストダウンするような流れは今後起こるでしょうか?





ロボット関連技術の直近の進化の可能性

ロボット関連技術の直近の進化の可能性を、河田さんによる理解で読み解いていきます。

会話はまだまだ未成熟で、特に日本語の扱いにはまだ技術的ハードルがあると言えます。会話の目的とそれにあったUXを根本から考えることで、ロボットによる会話のブレイクスルーが見えてくるかもしれません。

音声認識は、マイクから数十センチから数メートル離れた場所にいる話者の音声認識はまだまだ未成熟です。ハードウェアの改良などで補える部分がもあるので、近い将来に飛躍的進化があるかもしれません。そもそもロボットとの会話方法そのものを見直すということも必要かもしれません。

人工知能は、顔認識、画像認識などの分野において一定の進化は見られるが、自律的判断などへの応用はまだ難しいと言えます。しつけられるなどのゆるいアプローチからの検証もありかもしれません。


制御は、近年のバッテリー周辺技術の進化、制御モーター関連技術の進化、CPUの小型化・省電力・性能の進化などを総合して、ロボットの運動性能を飛躍的に高められる可能性があります。

UXは、Pepperなどのコミュニケーションロボットの登場により、ロボットを通じたUXが取り扱いべき課題として認識されつつあります。これまでほとんど認識されていなかった分野だけに、専門的にこの分野を扱うことによって飛躍的に改善できる可能性があります。

コンテンツは、より高度な制御技術、より高度なUXを通じて、より完成度の高いコンテンツをロボットを通じて提供できる可能性があります。





家庭向けロボットについて

家庭向けロボットについての河田さん私見です。

現状まだまだ必要性が見出されていないとしています。今後広く受け入れられる可能性のあるロボットは、ロボットUXの研究などから得られた知見をベースにした単機能ロボットかもしれません。受け入れられるためには、機能は少ないが洗練されていて、その機能の中では確実に動くロボットです。

「家庭向けのロボット」という分野には、まだまだ失敗と試行錯誤が必要かもしれません。例えば、AI、会話、Iot連携、遠隔操作、ペット、アシスト、コミュニティー、移動、二足歩行、ドローンなどです。





株式会社スマートロボティクスについて

河田さんの所属する株式会社スマートロボティクスの紹介です。

ロボットの販売やロボット向けソフトウェアの開発事業の他に、ロボットハードウェアの開発事業や教育事業を行っています。


最近のロボットコミュニティ活動は、8月27日、28日に開催された「Pepper at BEAMS JAPAN HACK 2016」に初めて参加者として参加しました。


SBRのOB2人を含む5人のチームで作ったロボアプリは「コミュ障のPepper」。一般的なPepperのキャラクターとは真逆なこちらは会場で大好評でした。



この他にも、9月3日、4日に大垣で開催されたロボットハッカソンにロボットの提供と技術サポートスタッフとして参加。9月7日に大阪で開催されたNiftyの『Iotの「T」が見れるでShow!」にNAOの出展とライトニングトーク登壇で参加しました。


今後、ハッカソンで試したテクニックの紹介を個人ブログで更新の予定です。そして、スマートロボティクスでのNAO勉強会を予定しています。



発表は以上です。

その2に続きます。

ABOUT THE AUTHOR / 

北構 武憲

本業はコミュニケーションロボットやVUI(Voice User Interface)デバイスに関するコンサルティング。主にハッカソン・アイデアソンやロボットが導入された現場への取材を行います。コミュニケーションロボットやVUIデバイスなどがどのように社会に浸透していくかに注目しています。

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