Pepper 2016年ハッカソン総おさらい!junction asia / BEAMS HACKATHON 作品発表展示会に行ってきました その1

9月30日、アトリエ秋葉原で「Pepper 2016年ハッカソン総おさらい!junction asia / BEAMS HACKATHON 作品発表展示会」が開催されました。

以下、イベント概要です。

2016年に行われたPepperハッカソンで製作されたロボアプリの製作過程、裏話を共有します。

このイベントでは開発事例をもっと聞きたいという参加者のご要望にお応えするため、優れたアプリを制作されたデベロッパーの皆様を講師として作品説明を行うものです。

2016年に行われた大きなPepperのハッカソンとして「junction asia」「Mizuho.hack」「BEAMS JAPAN HACKATHON」がありました。
今回はこれらのハッカソンに出場されたチームの方々にお話しいただきます。

各作品共に約20分のプレゼンと質疑応答の時間をとっており、技術、アイデア以外にも開発体制やUI/UXのこだわりなど、参考になるお話しをしていただけると思います。

先週のPepperハッカソン総おさらい発表会に続く第二弾イベントです。

会場はPepper開発者の聖地ことアトリエ秋葉原


本日の進行役はアトリエ秋葉原の守護神こと、アビダルマ前田さんです。


2016年に開催された大型Pepperハッカソンの「junction asia」の紹介です。5月に開催された二泊三日のハッカソンで、参加人数200人。海外からの参加者も多数でした。



もう一つの大型Pepperハッカソンである「BEAMS JAPAN HACKATHON」は二日間のハッカソンで、8チームが参加。優勝特典はBEAMS JAPANで実際に展示されるというものでした。







AId by チームFlying Dish


チームFlying Dishの山田さんによる発表です。


こちらの作品は「IBM賞」を受賞しました。同じチームメンバーでjunction asia以外にもNASA SPACE APPS CHALLENGEやTechCrunchTOKYO 2015で入賞歴があります。


作品名「AId」は、AIとDonationを掛け合わせた造語です。


PepperとIBM BLUEMIXを組み合わせた募金システムです。


最近様々な場所でで募金を目にするようになりました。募集の用途も色々です。そのためか自分が募金したいと思えないテーマの場合、募金しないというアンマッチが起こっているかと思われます。


ということは、興味のある内容の募金を適切な人に呼びかけることができれば、より多くの人が募金してくるかもしれません。

そこでAIdは Automatic recommending and collecting donation sysytemを提唱します。


まず、Pepperが人通りの多い場所にいる場面を想像してください。Pepperが近くの人を感知したとき、その人の性別・年齢・場所から興味を推定します。その結果から、関心の高そうな募金を呼びかけるというものです。



無事募金がされた際にその時の特徴を学習し、今後の募金をより上手に推薦するというものです。


AIdの工夫の一つに、寄付をした際に動画での応援メッセージを送れる機能があります。その動画はWeb ブラウザやPepperの画面から見ることができます。



募金箱の仕組みについてです。

Pepperはどうやって募金箱にお金が入ったかを確認するのでしょうか?首からぶら下がっている募金箱の蓋を開ける(タッチ)すると、ケーブルを介してPepperのタブレットにタッチがされるという仕組みになっています。この募金箱の仕組みもハッカソン内で自作したそうです。


募金をしてくれない場合のPepperの挙動が面白いです。人間のことをひたすら見つめ続け、しまいには募金箱を叩き出して催促をします。


システム構成です。


開発環境です。


動画アップロードの環境です。注目はPepperのカメラから取得した動画を、そのままPepperで動画エンコードしている点です。これにより、複数台のPepperを運用をしても大丈夫です。


Webアプリです。


IBM BLuemixを使った際の開発環境についてです。


所感です。PepperをLinuxマシンとして動かせる点に魅力を感じ、GPIO(General Purpose Input/Output)が欲しいという要望がありました。


発表は以上です。

続いて、質疑応答です。


(Q) 実際はどういうシーンで使うことを考えてますか?
(A) これから身の回りにロボットが出てくると思います。ショッピングモードでのロボット導入も進んでいくと思います。このシステムはPepper本体以外は安く作れるんですよ。今後ロボットが増えてきたときにコストが安い方が広まっていくと思っていて、そこも考えて作りました。
(Q) ハッカソンにいろいろ出ているのは?
(A) 大学時代からものづくりが好きでして、会社の仕事の他にも色々なことをやりたいと思ってハッカソンにでています。あとは腕試しとトレーニングというのもあります。継続的に出ているのはそういうこともあります。

質疑応答は以上です。




日本最古のPepper by チーム シンのびすけ


チーム シンのびすけの春田さんによる発表です。

春田さんは法人向けクラウドサービスを運営する会社のWebエンジニアで、最近はPepperの専任者としてロボアプリエンジニア業務を行っています。



去年開催されたPepperのアプリコンテストである、Pepper Innovation Challenge 2015ではベストテクノロジー賞を受賞したロボアプリの実力者でもあります。

受賞作品の発表展示会の様子は以下過去レポートをご覧ください。

今回は4名のチームで作品を作りました。


最初にどういう方針で作品を作るかを検討しました。アイデアソンから得たBEAMSが望んでいたことは、「話題になってくれる」「店員との連携は不要」という2点です。


ここからSNSでバズる作品を作って盛り上がれば集客ができて、売上UPするのではと考えました。結論として「好きに尖ったアプリを作ればいいのでは」に至りました。


作った作品のコンセプトは「日本最古のPepper」。インパクトを重視し、神秘性のあるとにかく古めかしくすることを追求しました。ひと目で日本最古と分かるような工夫も色々と行いました。


見た目の工夫です。Pepper自体にツタや苔のような装飾を行うのはもちろんのこと、Pepperには以下のような実装を行いました。


 ・ 一定のリズムで同じ動きをループさせ、古いPepperである訴求を行う
 ・ 片目だけを光らせてPepperが故障している?といった工夫を行う
 ・ ゆっくりと低い声で喋らせて、性能の低いハード?という工夫を行う
 ・ タブレットに表示される画像にひび割れたものにして、タブレットが割れているような工夫を行う


Pepperにも様々なアクションをさせました。手の甲や頭のセンサーを触ると昔話をしはじめたり、タッチイベントに合わせて画像を変化させました。またプロジェクターを使ってPepperにプロジェクションマッピングをさせたりもしました。


これらの工夫だけではなく、更に工夫を凝らしています。

Pepperが片目を光らせているだけではもの足りないと思い、もう片目の光すらも点滅させました。

手の甲を触ると昔話をするのですが、手の甲を触らせる説明をスタッフにさせたくないので、Pepperが動くときに手首を回す動作を入れ、苔が矢印マークになるという工夫もいれました。これにより、矢印に興味を持った人が手の甲を触ってみるというものです。


様々な工夫を凝らしたのですが、結果入賞はできなかったものの、審査員からは「個人的には好き」という評価をいただきました。





日本最古のPepper 開発裏話

ここから開発裏話です。

BEAMSハッカソンでは、Pepperハッカソン史上初の事態が起こりました。元ソフトバンクロボティクス金山さんと河田さんによる参戦です。元中の人たちは最初から優勝を目指さないと名言しました。


彼らが作ったのは「コミュ障Pepper」で、その時の様子は金山さんによる「最近のロボットはつまらない。」をご覧ください。

それを見たチームシンのびすけのメンバーは対抗馬となりたい、ぶっ飛んだアプリを作りたいと思い、初期構想ではPepperの頭が爆発して花火になるというアプリを考えたそうです。


花火って、これどうやって実装するんでしょうか…。というのは置いといて。

アイデアソンの時点で、やりたいこととやりたくないことを明確にしました。

やりたくないのは、Pepperがレコメンド・各種紹介・接客・受付を行うアプリや、タブレットだけで完結する、いわゆる「タブレットアプリ」でした。

一方やりたかったことは、一歩踏み込んだPepperへのキャラ付けです。そこでもPepperの機能を使ったキャラ付けは新しくないと思い、多少無理矢理な方法なキャラ付けでもいいのではないかと思いました。


実装の際に注意した点です。インパクトを重視する構想だったので、多機能である必要はないと判断しました。

タブレットが故障しているという設定にし、会話もPepperから一方通行にしても自然であるとしました。

店頭に置くという想定から、タブレットをタッチさせる機能は突然動かなくなる可能性が高いので今回は実装を見送りました。また機能を詰め込みすぎるとデモで事故る可能性も高まるので、基本Choregrapheで実装できる範囲での実装としました。


審査員からの非公式の評価としては、入賞はできなかったものの評価は高かったです。今回のハッカソンでの賞は「大賞」1つだけだったので、もし部門賞があれば入っていたと思われます。

またPepper開発をし尽している、いわゆる「Pepperを10周くらいした人」にとっては、新鮮と思ってくれるであろう作品でした。


最後に春田さんの個人的な感想です。

今後のハッカソンでは是非「邪道賞」を作って欲しいです。そして、尖ったアイデアであったり、ぶっとんだ発想であることは実は些細な問題です。また、ハッカソンではキャラクターガイドラインや決まりなどは、可能な限り気にしなくていいと思います。


発表は以上です。

続いて質疑応答です。


(Q) プロジェクションマッピングはどうやってやったんですか。
(A) webAPIと連携させて、Pepperのタッチイベントに応じて表示される画像を変更させていきました。
(Q) ビームスの一階に置くためには、どうすればよかったと思いますか。
(A) 審査員の方には「一階に置くのであればあまりPepperに目を引きつけて欲しくない」と言われたので、それが原因だと思います。
(Q) いわゆる「Pepperを10周くらいした人」とはどういう意味でしょうか。
(A) 感情や性別を取得できるのは最初新鮮なのですが、それらを使ってやれることはハッカソンで出尽くしたと思っています。今回はそうじゃないところを考えてこうなりました。

質疑応答は以上です。

その2に続きます。

ABOUT THE AUTHOR / 

北構 武憲

本業はコミュニケーションロボットやVUI(Voice User Interface)デバイスに関するコンサルティング。主にハッカソン・アイデアソンやロボットが導入された現場への取材を行います。コミュニケーションロボットやVUIデバイスなどがどのように社会に浸透していくかに注目しています。

PR

連載・コラム