9月23日、アトリエ秋葉原で「Pepper 2016年ハッカソン総おさらい!junction asia/ Mizuho hack.作品発表展示会」が開催されました。
以下、イベント概要です。
2016年に行われたPepperハッカソンで製作されたロボアプリの製作過程、裏話を共有します。
このイベントでは開発事例をもっと聞きたいという参加者のご要望にお応えするため、優れたアプリを制作されたデベロッパーの皆様を講師として作品説明を行うものです。
2016年に行われた50名以上が参加する大きなPepperのハッカソンとして「junction asia」「Mizuho.hack」がありました。
今回はこれらのハッカソンに出場されたチームの方々にお話しいただきます。
各作品共に約20分のプレゼンと質疑応答の時間をとっており、技術、アイデア以外にも開発体制やUI/UXのこだわりなど、参考になるお話しをしていただけると思います。
会場はPepper開発者の聖地ことアトリエ秋葉原。会場は満員です。キャンセル待ちが多く出たプレミアチケットなイベントとなりました。
本日の進行役はアトリエ秋葉原の守護神こと、アビダルマ前田さんです。
2016年に開催された大型Pepperハッカソンの「junction asia」の紹介です。5月に開催された二泊三日のハッカソンで、参加人数200人。海外からの参加者も多数でした。
もう一つの大型Pepperハッカソンである「Mizuho.Hack」は、Pepperと一緒に全く新しい『銀行』というサービスを創るをテーマで開催され、18チームが参加しました。
ロボスタでのレポートもご参考にどうぞ。
【Mizuho.hackレポート】Pepperと一緒に、全く新しい『銀行』というサービスを創る
【Mizuho.hackレポート(2)】成果発表、そして表彰式。最優秀賞とみずほ賞の行方は?
1. Smapper by チームSmapper
2. 高橋さんによるハッカソン個人参加のススメ
3. Pepper Partners by チームYuka + Tomomi
4. 野村さん個人による複数台連携の取り組み
Smapper by チームSmapper
チームSmapperの高橋さんによる作品「Smapper」の紹介です。
高橋さんの自己紹介です。Pepperハッカソン受賞、Pepperの認定ロボアプリパートナーなど、ロボット開発の実績があり、Fintech領域も行っています。
メンバーとチーム結成のきっかけです。
ハッカソン開催の約3週間前の4月14日に熊本地震が起こりました。そこで熊本の人たちに対しての作品が何か作れるといいねと話していて、当日同じ気持ちを持った人たちでチームSmapperを結成しました。
チーム名「Smapper」の由来は「PepperでSmile(笑顔)になって欲しい」からです。
作品を作るにあたり、「マズローの欲求5段階説」を考えました。人間の欲求は5段階の改装構造になっており、原始的な欲求が満たされて次の階層の欲求を欲するというものです。
地震の被害に遭われた熊本の方には、安全欲求を満たす必要があり、そして次の階層である愛の欲求を満たす必要があると思われます。
Pepperは感情を認識するセンサーが搭載されているロボットです。「笑顔」は表情で伝わるコミュニケーションであり、被災地の方にとって笑顔を取り戻すことは、心のケアを整える第一歩と言えます。
これらをロボットとITの力で実現させようと思いました。
システムの全体像です。
被災地にいるPepperからは、現地の方の感情データを読み取ります。同時にSONYのMESHも設置し現地の温度湿度等のデータも計測します。それらのデータはバックエンドのシステムで蓄積し解析を行って、ボランティアやNPOなどのサポーターグループに感情レベルデータを送信します。
技術情報の補足その1「Node-RED」についてです。
ハードウェアデバイスやAPIをオンラインサービスに接続するためのツールで、Nodeの接続と簡単なコーディングでWebAPIを作ることができます。ラズパイやLinux環境でも構築が可能です。
技術情報の補足その2「MESH」についてです。
SONYの製品でブロック型のIotデバイスをセンサーとして利用可能です。今回はiPadを経由してバックエンドに通知を行うために使いました。
この作品は、残念ながら入賞することができませんでした。一言で言うと「デモへの準備不足」です。
プレゼンの準備が整わず、審査の時にPepperが動かなかったりと、経験の浅い人が陥りがちなありがちな失敗にハマってしまいました。
ハッカソン参加で得た成果と今後です。
作品のテーマである「ロボットを使った心のケア」は、今後もライフワークとして続けることとしました。また、技術的に得られたものの他に、ハッカソンを通じた横のつながりを得ることもできました。
高橋さんによるハッカソン個人参加のススメ
最後は高橋さんによる「ハッカソン個人参加のススメ」です。
個人参加することで、初顔合わせの人とチームを組んで何ができるか分からないドキドキ感を感じたり、自分では考えないようなアイデアに触れることのできる、本来のハッカソンの面白さを感じることができると言えます。
高橋さんがハッカソン参加で求めているものの円グラフを見ると、Pepperアプリ開発の技術向上、新技術の習得とともに、人脈作りもあります。これらはハッカソンに参加する醍醐味と言えるでしょう。
発表は以上です。
続いて、質疑応答です。
(A) Pepperの出し側・受け側はhttpのパラメータを使って受け渡したり、JSON使って受け渡して、そこは自作しました。Node-RED自体はJSONに元から対応しています。
(A) 基本的にはPepperの身体自体は動かさずに腕を動かすことでダンスを表現しました。また、頭は極力動かさないようにも注意しました。これによりぶれてしまうことはありましたが、大きな問題はありませんでした。
(A) MESHを設置した部屋の上限下限の閾値を設定しておいて、その閾値を上下どちらかに超えた場合は、不快と判断してPepperのタブレットに不快マークを出したりしました。
(A) 私がハッカソン参加前にぼんやり考えていたのは、東京から地震に遭った熊本の人たちを募金で応援するというものでした。募金がされたかされないかの判定や、募金をpaypal経由で行うといったことを考えていたので、この点は削ぎ落とした部分です。
質疑応答は以上です。
Pepper Partners by チームYuka + Tomomi
チームYuka + Tomomiによる作品「Pepper Partners」の紹介です。
Yukaさんこと野村さんの自己紹介です。本業はUIエンジニアで、Pepper関連でもいくつか賞を受賞しています。
どういうアプリか気になる方は、以下記事もご覧ください。
チーム紹介です。野村さんと組んだのは、ロボットパートナーの太田智美さんです。
日常生活にPepperがいる風景を見かけるようになってきました。
それぞれの家庭にいるPepperと持ち主が一緒に会話を行い、それぞれのPepperは持ち主のことを話題にするという作品です。
持ち主が席を外した時には、Pepper同士でご主人様のことを話し合ったりもしちゃいます。
システム構成です。
FitbitとPepperとの連携システム構成です。
野村さんによる「まとめ」です。
Pepper達と人間達による「新しいコミュニケーションの形」にチャレンジしてみたのですが、人によっては「まだ先過ぎる未来」と感じたかもしれません。そして、複数台のロボットによるコミュニケーションは技術的な課題は多いものの、きっとやってくる未来と感じたそうです。
野村さん個人による複数台連携の取り組み
ここからはハッカソン発表から離れて、野村さん個人による複数台連携の取り組みについてです。
将来、あらゆるロボットがそこらに存在することが普通な時代がやってくるでしょう。その時、ロボット同士がコミュニケーションをとりあう Robot to Robot の時代もやってくるかもしれません。しかし、ロボット同士が同じネットワークに繋がっているとも限らないし、異種ロボット同士の共通な通信規格があるとも限りません。
ここで野村さんは、ロボット同士「音声」を共通規格としてコミュニケーションがとれるのではないかという点に着目しました。
この仮定を実現してみるために、Watsonの「Speech to Text」をつかってみました。音声信号の構成と文法や言語の構造を用いて、発話データをテキストデータに変換できるというものです。これを使うと、音声認識結果をそのままテキストにするので、登録していない単語でも認識して処理が可能になります。
システム構成図です。
Watsonを介して、音声認識結果をテキスト化したものをPepper同士でやりとりします。会場では動画をでの実際のやりとりを見ることができました。
このシステムを使って、Pepper同士でのフリースタイルバトルにもチャレンジしてみました。
詳しい解説は以下のQiitaをご覧ください。
発表は以上です。
続いて質疑応答です。
(A) 現在、登録して30日間は無料で使えると思いますが、サイトで確認してください。
(A) トリガーワードをそれぞれのPepperで変えるという工夫をしています。Pepper1は「Pepper」をトリガーワードにして、Pepper2には別のトリガーワードを設定するというようにしました。
質疑応答は以上です。その2に続きます。
ロボスタ北構からひとこと
Pepperの技術説明はもちろんのこと、高橋さんによる「ハッカソン個人参加のススメ」も野村さんの「複数台連携の取り組み」も両方面白かったです。特にロボットを複数台連携させるのは、将来的にホットな領域になると僕も思ってます。
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北構 武憲本業はコミュニケーションロボットやVUI(Voice User Interface)デバイスに関するコンサルティング。主にハッカソン・アイデアソンやロボットが導入された現場への取材を行います。コミュニケーションロボットやVUIデバイスなどがどのように社会に浸透していくかに注目しています。