Foundation for Responsible Roboticsがセックスロボットに関する調査レポートを発表した。
様々な国、社会で何世紀にも渡って性的な玩具が使われてきており、そして近年セックスロボットが開発されるようになってきた。しかしセックスロボットは今までの玩具と異なる影響を人間に与える可能性があるという。
具体的にどのような問題があるのか、今後5〜10年で私達が直面するであろうセックスロボットに関する7つの考察がこのレポートでまとめられている。
このレポートは、セックスロボットメーカー2社へのインタビュー、ロボット学者、倫理学者、社会学者、弁護士、エンジニア、セックスワーカー、セックスジャーナリストなど幅広い意見を踏まえ、また過去に発表された研究結果も参考にしてまとめられたという。
レポートは40ページを超えるボリュームがあるものになっているが、今回は7つの考察の要点を簡単に紹介したい。
1. 人々はロボットとセックスするだろうか?
過去の調査によれば、人々がロボットとセックスするかどうかに関する質問の回答結果はかなりばらつきのあるものだった。ロボットとセックスすると答えたのは、最低9%、最高66%とアンケートによってかなりの幅があった。
いずれにせよ、この質問による結論は、セックスロボットの市場が存在することを示唆していると考えられる。
また、性差については男性のニーズはより大きいが、女性のニーズも少なからず存在していることがわかったという。
2. 私達とセックスロボットはどのような関係になるのか?
続いて人間はセックスロボットに愛情や優しさを感じることができるのだろうかという考察。セックスロボットメーカーは、もちろん人間との関係と同じような関係を構築できることを目標として開発を進めているが、現在の技術では当然のことながら人間と同じようなコミュニケーションをとるレベルにはない。
しかし、人間はその想像力をもって、ロボットとの精神的な関係を構築できる部分もあると結論づけている。人間の持つ想像力、そして不信感を抑える能力を過小評価するべきではなく、実際に何の反応もできないラブドールとの愛情のある関係を持つ男性はすでに存在しており、これらのドールは明らかに男性を幸せにしているという。
3. セックスロボットの風俗は受け入れられるのか?
セックスロボット売春宿の受容性についての直接的な証拠はまだないものの、ある調査では容認できると強く示唆されているという。セックスロボットの初期からこれを使った風俗店はスタートしており、またすぐに受け入れられ店舗は増加しているという。
また、セックスロボットが性的人身売買を減らすという証拠は見つからなかったが、反対の証拠はいくつか見つかったという。
4. セックスロボットは性についての社会的認識を変えるか?
セックスロボットの性別が世の中のステレオタイプに与える影響は複雑だが、一般的にセックスロボットはポルノビデオに登場するような女性をモチーフにして商品化されている。
まるで女性そのものの外見を持つセックスロボットが商品となることで、社会的知覚にどのような影響をもたらすかはまだ定かではないが、男性が女性をモノとして見てしまう悪影響は既に懸念される。
5. ロボットとの性的関係は社会的孤立をより大きくするか?
セックスロボットにより、利用者が社会的に孤立する可能性があることが指摘されている。理由として、セックスロボットに時間を費やせばその分人間との関係する時間が減ること、人間との性的関係よりロボットとの性的関係の方が簡単であることなど、人間との関係が圧倒的に減ることが予想されるという。
一方、セックスロボットが広がることで、社会的に受け入れられていく可能性もゼロではないという。既にセックスロボットを外に連れ出したり、友人に見せたりする事例もあり、これが当たり前になれば社会的孤立を大きくするだけとは言えないかもしれない。
6. ロボットは性的な癒やしと治療に役立つか?
性機能に問題を持つ人や、性行為に対して不安を持つ人のための練習などの用途でセックスロボットは役に立つ可能性が認められるという。
ただし、あらゆる人向けの万能薬ではなく、特に高齢者や障害者向けのセックスロボットの活用については、利用者の尊厳、倫理上の議論がまだ不十分な領域で、本格的な導入の前にさらなる議論が必要だという。
7. セックスロボットは性犯罪を減らすのに役立つか?
セックスロボットが性犯罪を減らすかという議論については、意見が不一致となっているという。セックスロボットを使うことで実際の性犯罪を抑制するという意見もある一方、不法な性行為を助長しかねないという意見もあり、議論は平行線のままだ。
これはどちらも正論で、実際のところ人によっては抑制に効果があるだろうし、人によっては助長することになるだろう。
僕はこう思った:
原文を全て読みましたが、セックスロボットに関する議論でよくあるテーマがまとまっており、勉強になりました。
新しい技術の普及に欠かせない要素のひとつでもあるこの領域、引き続きウオッチしていきたいと思います。
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中橋 義博1970年生まれ。中央大学法学部法律学科卒。大学時代、月刊ASCII編集部でテクニカルライターとして働く。大学卒業後、国内生命保険会社本社において約6年間、保険支払業務システムの企画を担当。その後、ヤフー株式会社で約3年間、PCの検索サービス、モバイルディレクトリ検索サービスの立ち上げに携わる。同社退社後、オーバーチュア株式会社にてサービス立ち上げ前から1年半、サーチリスティングのエディトリアル、コンテントマッチ業務を担当する。2004年に世界初のモバイルリスティングを開始したサーチテリア株式会社を創業、同社代表取締役社長に就任。2011年にサーチテリア株式会社をGMOアドパートナーズ株式会社へ売却。GMOサーチテリア株式会社代表取締役社長、GMOモバイル株式会社取締役を歴任。2014年ロボットスタート株式会社を設立し、現在同社代表取締役社長。著書にダイヤモンド社「モバイルSEM―ケータイ・ビジネスの最先端マーケティング手法」がある。