Pepper 2016年ハッカソン総おさらい!Mizuho.hack / BEAMS HACKATHON 作品発表展示会に行ってきました その3

2016年11月9日、アトリエ秋葉原で開催された「Pepper 2016年ハッカソン総おさらい!Mizuho.hack / BEAMS HACKATHON 作品発表展示会」に行ってきました。

イベント概要はこちら。

2016年に行われたPepperハッカソンで製作されたロボアプリの製作過程、裏話、展示の結果を共有します。


このイベントでは開発事例をもっと聞きたいという参加者のご要望にお応えするため、優れたアプリを制作されたデベロッパーの皆様を講師として作品説明を行うものです。


2016年に行われた大きなPepperのハッカソンとして「Mizuho.hack」「BEAMS JAPAN HACKATHON」がありました。


今回はこれらのハッカソンに出場されたチームの方々にお話しいただきます。

今回でPepperハッカソン総おさらい発表会は三回目となります。



会場はPepper開発者の聖地ことアトリエ秋葉原。

本日の進行役はアトリエ秋葉原の守護神こと、アビダルマ前田さんです。




アビダルマ前田彰太さん

タイムテーブルです。今回は3チームから発表があります。




今年開催されたPepperハッカソンの「Mizuho.Hack」は、Pepperと一緒に全く新しい『銀行』というサービスを創るをテーマで開催され、18チームが参加しました。







ロボスタでのレポートもご参考にどうぞ。


同じく今年開催されたPepperハッカソンの「BEAMS JAPAN HACKATHON」には8チームが参加。優勝特典はBEAMS JAPANで実際に展示されるというものでした。











今、若者のロボット離れがヤバい by チームきゅんくん大好き

チームきゅんくん大好きから「今、若者のロボット離れがヤバい」の紹介です。


発表を行うダイキ・カナヤマさんの自己紹介です。

先日会社を退職されたのですが人と合う機会が多くあり、自己紹介が必要になるので現在のお仕事は「旅人」としています。


旅人のダイキ・カナヤマさん

クソオシャレなアパレルショップ「BEAMS」の危機を救うために立ち上がった伝説の英雄。「元・中の人」として初めて参加したハッカソンのレポートをベースに、つまらないロボットを生み出し続ける人間どもに対す憤りのみをエネルギー源として書き散らかした乱文「最近のロボットはつまらない。」がシェア1,000を超える大ヒット。

2016年、「シン・ゴジラ」「君の名は。」と並ぶ歴史的名作との評価を獲得。

特にBEAMS側から何の連絡もないまま現在に至る。


まずはこちらの関連記事をご覧ください。

今日はこの記事「最近のロボットはつまらない。」の補足的なお話をしたいと思います。

まずこちらの質問「ペッパーとは□□である。」をご覧ください。


皆さんどう答えますか?これの答えは1つではなくて色々あるんですけど「ロボットである」は当たり前すぎるので無しにします。例えば「プラットフォームである」とかあると思います。

僕が今日お伝えしたいのは答えの一つとして「メディアである」をお伝えしたいです。


更に言うと「誰もが簡単にデザイン可能な人型メディアである」です。これを気づいている人が意外と少ないと思うので、今日お伝えしようと思ってやってきました。


ここ重要です。


「メディア」というと、テレビ・新聞・雑誌・デジタルサイネージ・ウェブサイト・メディアアートなどいっぱいあると思いますが、何かのコミュニケーションを行うために情報を背負わされていて、人がアクセスして、ものによっては一方通行、ものによってはインタラクティブなものをメディアと呼んでいます。


なので、メディアは人間とのコミュニケーションツールです。つまり、コミュニケーションロボットもメディアの一種ではないかと思うわけです。


メディアは面白くないと無視されます。


メディアはその筋の専門家たちが試行錯誤して、面白いものだけが生き残るという淘汰があるから面白いものだけが生き残っています。つまらないものは消えていきます。


ところが誰でも簡単にプログラミングできる人型メディアのPepperは試行錯誤が甘くて、今はまだ淘汰的なことが起こっていないと言えます。


Pepperを活用する際に、テレビ局の放送作家や広告会社のクリエイターや出版社の編集者と同じくらい頭を悩ませて、どうしたら人に面白がってもらえるかを本当に考えているのかな?と疑問に思っています。


ロボットだしいるだけで寄ってくるだろうとか、胸のタブレットにロゴを出して「いらっしゃいませ」と言わせておけばいいだろうとか、商品の説明を言わせれば聞いてくれるだろうとか、そういう安易な考えをして、他のメディアの人が夜な夜な考えているようなことを一切無視していませんでしたか。


「人間ナメるな!」ということです。ここも重要です。



当たり前ですがあらゆる選択肢の中から、目の前のPepperと触れ合うというという選択してもらえるようにならないと行けないし、これは容易いことではないとも言えます。


例えば、店頭にPepperがいるコンビニがあるとします。Pepperがいるコンビニといないコンビニがあって、ここに既に差があるからいるPepperには触れ合ってもらえるだろうと置いてる人は思っているかもしれません。

でもそうではなくて、ありとあらゆる選択肢からPepperは戦わされています。例えば、コンビニにあるコーヒーだったり、イートインスペースだったり、新商品のグミだったり。

人間がとりうる様々な選択肢と戦わされていて、そのなかでPepperと触れ合う時間を選んでもらうようにしないとなりませんし、すごい難しいことです。


今は「ロボット」がバズワードになってしまっていて、ロボット置いておけばいいだろうっていう安易な考えをされていることが残念で、これが「つまらないロボット」が量産されている背景なんじゃないかと考えます。

特に技術屋視点やテクノロジー視点で作られたサービスはロボットに限らず、このエゴに陥りがちかもしれません。「すごい技術を使っているんだから使ってもらえるに違いない」とついつい考えてしまいます。


人間がしたいこと・やりたいことをきちんとしないと、人間は動いてくれません。世の中には面白いものやサービスがあふれてしまっているので、こうなってしまっています。

なので、他のあらゆる選択肢から、ロボットを触れ合ってもらうための工夫をしないとなりません。

スティーブ・ジョブズは「ユーザーの体験からスタートして、技術に遡らなければならない。逆ではいけない」と言いました。

技術が凄いから買ってもらえるんじゃなくて、人間が体験して面白いことを実現するためにはどういう技術があるんだろうという発想をしていかないとならない。IDEOが言う「Human Centered Design」もこの考え方です。


過去のPepper以前のヒューマノイドロボットが普及しなかった理由の1つはこの辺が原因と言えるかもしれません。


しかしPepperも実はそうでした。


最初僕らもロボットのことがよく分かっていなかったので、とりあえずお店において接客させればいいやと思ってました。それだけで人々は喜んでもらえるだろうと思ってました。でも、こういう考えで作ってみるとつまらないロボットになってしまったんですね。

これは人々の体験をデザインできていなくて、人々が本当に面白いということを考えられていない技術視点でした。

何が転機だったかというと


吉本興業さん、放送作家の中野俊成さん、バイバイワールドさん、電通さん、1→10designさんのプロジェクトへの参加です。


この人達はみんなメディアのプロフェッショナルです。こういう方々が必死に「面白いロボットって何だろう?」について考えてくれたので、思わずふれあいたくなるロボットになってきた。


Pepper成功の大きな要因の1つは「メディアのプロ(≒クリエイティブ表現のプロ)がロボット開発に参加したことです。これが世のロボットをやりたい会社さんが気づいていない点です。



人が興味を惹かれるクリエイティブ表現には発想のメソッドが存在します。


例えば、アイデアをこのように解釈してみるなどです。


今回の作品「コミュ障ペッパー」では「Pepperを逆転させてコミュ障にしてみる」というアイデアの解釈をしてみました。元のPepperのキャラクターを知る人にすると、逆なんだという具合に非常にわかりやすい。


同じBEAMSハッカソンに出ていた「日本太古のペッパー」も個人的には面白いと思っていて、このような切り口で考えられたと思います。


人とふれあいたくなるロボットを作りたいのであれば、メディアの技術、クリエイティブ表現の技術を学ぶことを強くお勧めします。このバックグラウンドがある人は面白いロボットを作ってると思います。


Pepperを導入してもらう時、ロボットが習得したデータをクラウドに蓄積できたり、効果測定が行えるなどというトークを聞いたことがあるかもしれません。


でも、これら全部は触れ合ってもらえることが前提です。そのためには、先程のメソットを使って触れ合ってもらえるような楽しく面白いロボットを作る必要があります。


最初の質問に戻ります。

Pepperはデジタルな世界とフィジカルな世界を繋げ、誰でも簡単に、最もヒューマンフレンドリーなユーザー体験である人型コミュニケーションを実現できる、素晴らしいプラットフォームです。


人がふれあいたくなる面白いロボットが、街にあふれますように。




その4に続きます。

ABOUT THE AUTHOR / 

北構 武憲

本業はコミュニケーションロボットやVUI(Voice User Interface)デバイスに関するコンサルティング。主にハッカソン・アイデアソンやロボットが導入された現場への取材を行います。コミュニケーションロボットやVUIデバイスなどがどのように社会に浸透していくかに注目しています。

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